15.謁見④
そんな想いを内に湛えた俺のもとにこっそりとロランが近づいてきて、こう耳打ちした。
『ちょっと、顔に力が入りすぎだよ〜。カイトくん?
なぜ、貴族たちがその力を私欲ではなく、民に振るおうとしないのか、って思ってるんじゃないのかい?
残念ながらこれが今の現状なんだよ。いくら僕が、一度この国を正したと言われていても貴族の性根は変わっていないということなんだ。これでもましになった方なんだけどね。
僕の目的は最終的に現状の貴族を排除することにある。
最初にあった時、君に言った聞いてほしいことはこのことだったんだ。
どうだろうか。
今の君の目的と僕の目的は一致しているはずだよ。
どうだい。僕に協力してはくれないかな。
もちろん。それ相応の対価もご用意させてもらうよ。』
なんだ、こいつは。タイミングがよすぎやしないか。
でも、そんな全てを自分の思い通りに進めるなど出来るはずがない。
もし仮に出来たとしても、それは自分の予想、想像の中での話のはずなのだ。
だから俺はそんな悪魔のような存在かもしれない、この男と契約することになったんだ。
この国をどうにかするまではお互いに何があっても最大限の助力をし続けるという条件で。
俺が小さくうなづくと、ロランは喜色を満面に浮かべながら、
「『これは契約だ。もし違反するようなことがあれば、その身は業火に焼かれることになるだろう。我が信ずる神に誓って。』
今言ったことは、破れば、本当に起こる出来事だからね。
僕の君のそんな姿を見たくないし、君だってそうだろう。」
そう言い残して、ロランは自分が元いた位置へと戻っていった。
そんなやりとりの終わりは貴族の思考時間の終わりだったのだろうか。
多くの貴族が王の方に向き直っていた。
ここまでくると、本当にロランの関与、何か特別な力を持っているのか、例えば、俺たちと同じような力を、と疑うのも無理はないが、さっきの言葉にはやけに真剣味がこもっていたので、きっと真実なのだろう。
だから、俺は警戒だけはしておこうと心に決めたのだった。
「では、皆の心は決まったかな。先の私の案に賛成のものは手を挙げてくれるか。」
そう言うと、先程とはうってかわって、ほぼ全ての貴族が手を勢いよく挙げた。
挙げていない貴族は単に興味がないのか、反対なのか、どうなんだろうか。
今の俺にはそんなこと、知る由もないんだけどな。
「では、賛成ということで、来訪者を託すのは今年功績のあったものとしよう。ということは、ロラン侯、アークライト公、ノーランガルド侯、ヴァース伯、この四人に託そう。
それぞれ十人ずつ面倒を見てやってくれ。頼んだぞ。では、これにてお開きだ。これからもよろしく頼むぞ。皆。また、夜半の歓迎会で会おうか。」
そう言い終わると、すぐに王城の召使いがやってきて、
「お客様におかれましては、夜の晩餐会にもご参集いただきたいとのことですので、別室でお待ちいただくか、街を見て回られるかのどちらかをお選びしてほしいのですが。」
俺たちはまた何かに参加させられるらしい。
少しは俺たちに落ち着く時間をくれ!!
次回は1月7日です!




