12.謁見①
俺たちが談笑していると、王城の使用人とおぼしき髭を生やした老執事がドアを静かに開けて、部屋の中に入ってきた。
「では、皆さま準備が整いましたので、どうぞこちらへ。」
開けたドアの前でそう言い、一礼した。
俺たちは言われた通りに、出発しようと思い、立ち上がった。
老執事の髭には白いものが混じっていて、いかにも長年、王城で働いていそうである。
だが、そんな長年、王城で働いてきたことで身についたであろう独特の風格を持っているのとは裏腹に、その声は柔らかく、その顔にはどこか穏やかな笑みを湛えていた。
「こちらでございます。廊下の絵でもゆるりとご覧になりながら、ついてきてくだされば結構です。」
そう言い、長い廊下を俺たちを先導して歩いていく。
実際にはそれほど時間は経っていないのだろうが、一つの絵を見ているだけでもそこそこの時間が経ったように感じた。
この廊下に飾られている絵は技術的にはそれほど優れていないように思えるが、色使いや描かれているものそのものに気品を感じ、どうしても、目が惹きつけられてしまうのだ。
だが、その静寂が苦しかったのか、神崎は老執事に向けて、質問する。
「で、俺たちは今、王様の所に向かってるんだよな。ぶっちゃけ王様ってどんな人なんだ?」
すると、老執事は返答に困るといった様子で頰を掻く。
「私のようなものに王を評せ、とおっしゃられましても。ただ、私から一つだけ言うとするのなら、王は人の意見を良くお聞きになられます。あなた方の意見もしっかりと聞いていただけることでしょう。」
「へぇー、王様にしちゃできた人じゃないか。」
そんな神崎の返答に老執事は曖昧に応じる。
「はい、そうですよ。ですが、あの内乱の前まではそんな方ではなかったのですが・・・
今はそんな暗い話をしてもいけませんね。もう少しで謁見の間です。あまりにも礼を失した行いをなされると、貴族たちがうるさいので、気をつけてくだされ。」
そんな話をしている内に、たしかに大きい扉が目の前に現れていた。
「この先に王様が?」
「ええ、お待ちになられていますよ。
では、いきましょうか。」
そう言い、老執事は大扉を開ける。
すると、金の王冠を被った、四十代くらいの男が、絢爛豪華な椅子に座っていた。
「ようこそ、我が王国へ。異世界からの来訪者たちよ!余はハンス・フォン・ラルメアである。」
次回は31日十一時に投稿します。
変則的ですが。




