20.忘れていたこと
そして、翌日彩音たちはスカイ伯の領地に向けて出立していった。俺たちと別れることになったわけだが、最後まで笑顔を絶やしていなかった彼女の顔が目に焼きついて離れない。
本当にこれでよかったのか。そういった後悔めいた思いが胸をよぎらないとは言えない。自分が止めればよかったのではと思わないではない。それでも、俺は個人個人の選択を尊重したい。だからもう後悔はしない。
「で、これからどうしよっか」
彩音たちを乗せた竜車が去って行くのが見えなくなった頃に遥香がそう言った。
「俺たちもこの世界で必要な基礎の能力と知識を身につけてから、実践するみたいな感じでやっていくのがいいんじゃないか」
そう言うと、皇が俺の言葉を補足した。
「とりあえず先に知識から得ておいた方がいいんじゃないかな。ま、この王国の人だって、僕らが異世界人だということを知っているから、あくまでも交換条件付きかも知れないけどね。武器もまだ完成してないわけだし」
すると、神崎が顔を青くしていた。
「ゴッゾさんが後日選んだ武器を送ってくれるって言ってただろ?でもさ、彩音さんたちもう出発したから、その分どうするんだろうな……」
「「………」」
気まずい沈黙が訪れる。俺たち三人はやってしまった、どうしようという沈黙。他のメンバーはなんの話してるんだという沈黙。
俺と皇は顔を見合わせた。
「よし。とりあえず三人で会議しようか」
そう言い、三人で部屋の隅に集まった。
「で、どうするんだ……」
「返すか届けるかしかないだろ……」
「返すならゴッゾさんに悪いですし、届けてもらうにしても、ロランさんに悪いですよね」
「「「……うーん」」」
わざわざみんなを待たせて三人で集まった意味もなく、結局のところ何の解決策も生まれなかった。
「みんなからも意見を聞くのがいいかもな」
少し経っても、余りに何も思いつかなかったので、事情を説明して、みんなの知恵を借りることにしたのだったが……
「そんなの簡単だよ!私たちが知識だとか能力をしっかりと身につけて、彩音ちゃんがいる所まで行けるようになったら私たち自身で届けに行けばいいんだよ!」
何でそんなことも分からないんだと言わんばかりに遥香は力強く言ってきた。
それを聞いていた蒼司も、
「流石にそれくらいの常識は持ってると思ってました……」
ええっ……、俺がおかしいだけなんですか……。
自分が少し常識から外れていることを自覚させられてしまったのだった。
遅くなりすいません。
更新が途切れることがあるかも知れないですが、途中で止めることはないです




