胸のサイズが、なるたけ均一にしておくわけ
「どうして、両のおっぱいのサイズって偏りがないんだろう?ねぇ、三矢」
「おう。瀬戸、仕事中にそんな話振るなよ」
向かい席のPCを使用されている女性クリエイター陣達から、睨むような威圧を感じる。
三矢は早いところ、瀬戸の与太話を切り上げたかった。と思わせておいて、
「何が言いたい?」
「つまり、1人の女性で貧乳と巨乳を持つおっぱいってないのかなーって!世界中を見ればそーいう女性がいるかもしれないようで、いないかも」
女性陣の1人が机を蹴飛ばしたような音を出し、もう1人はいつも聴いている音楽の音量を上げた。最後の1人は黙りながら、聞き耳を立てている。
瀬戸はそんなことなどお構いなしに、三矢に自分の意見を伝えるのだ。
「左はAカップの小ぶりな胸、右はFカップの豊満な胸。たった一人の女性で、貧乳と巨乳の感触を味わえるというのは凄いことだと思わない?」
凄く下心な話しなのに、目をキラキラさせて語る瀬戸。それとは対照的な、死んだ生物を見るような目で三矢は、
「はぁ~……アホ過ぎるだろ」
その一言。
「アホってなんだよ!僕は真剣にね!言い争いとなっている、巨乳と貧乳による戦争を停戦させるため、こんな話しをしているんだよ!お互いの武器を胸に宿すという案だ!」
「なんだよ、巨乳と貧乳の戦争って……」
「形が崩れるなんて、良い受けになっていないけど!僕はね、それでも胸を揉みたい!その心なんです!」
「おう、童貞こじらせてるな」
「それ言うなよ。傷付くなぁ!」
上手い事三矢が瀬戸をあしらって、この話しは一件落着と思ったが、三矢から瀬戸に尋ねる。
このくだらない話を一撃で終わらせる、一般常識を語る口で。
「だいたい、AカップとFカップを持つ胸よりもよ。両方共、Fカップの胸を揉みたいだろ。男はそうだろ?」
「揉みたいよ!馬鹿野郎ーーー!!」
「貧乳と巨乳の両方の胸を味わいたいより、俺はストレートに巨乳が好きだと言う!」
「僕もそう言いたいです!」
三矢と瀬戸の背後から、使われていない液晶画面を持った、貧乳の女性が襲い掛かった……。
◇ ◇
「瀬戸と友ちゃんには参るぜ……」
背後からの一撃を喰らったことを理由に、小休止をさせてもらう三矢。
そんな彼にかなりおっかなビックリな感じで、様子を見に来た安西弥生がいた。
「あの、……三矢さん。これ、ジュースです」
「いいのか?」
「はい」
「さっきは悪いな、騒がせて」
「いえいえ!」
ジュースを頂いてから、安西は本音を訊いてみた。
「三矢さんって、Fカップの子が好きなんですか?」
「いや、別に。ただ瀬戸に合わせただけだぞ……というか、俺はそーいう目を安西達に向けた憶えは一度もないぞ。あいつのノリに付き合ってやっただけ」
「ご、ごめんなさい!瀬戸くんと松代さんがおかしいだけですよね!」
自分のスタイルに自信はないが、友ちゃんなんかより胸の発育はいい。
というか、やっぱりか。男性というのも見た目を意識するのか。
「……その、男性の方って、胸見るんですか?」
「………そりゃあ、見るよ。でも、顔だって見るぞ。だけどよ、やっぱり”本人の事”を人間は見るんだ。何年も付き合って、そいつの事をもっと知り、正当な評価をする。俺はそー生きてるぜ」
「そ、そうですか」
なんというか、少し甘酸っぱいオーラを出した安西であったが。それを掻き消すような邪悪過ぎる、このゲーム会社で最強の邪を持つ女性が、安西の後ろをとっていた。
「カッコ良い事を言っちゃってー、三矢くーん!」
「酉さん」
「安西。三矢くんだって野獣の男よ」
「そ、そうですか!?」
「さっきの話しをよーく思い出しなさい」
「あんた、聞いてたのかよ……くそ」
先ほど、瀬戸との会話で三矢が言った事。
【だいたい、AカップとFカップを持つ胸よりもよ。両方共、Fカップの胸を揉みたいだろ】
「そこは間をとって、Cカップとか、Dカップの胸って言うべきところなのに。三矢くん、Fカップの胸を注文してるのよ。なによ、三矢。おっぱいはおっぱいでも、巨乳の事しか考えていないじゃない、イヤらしい男」
「どー答えても、あんたは俺がイヤらしいって言うだろうが!!」
酉の言葉に、”確かに”って……。自分のサイズより大きい胸が好きと言っていた。
やはりか……。少し残念そうに退いてしまった。
「でもね。三矢くんの次の言葉、私は好きよ。だいたい、貧乳と巨乳どっちも好きって答える、優柔不断な男に告白されるより、お前のおっぱいが好きだーー!!って叫んでもらいたいわ」
「酉さん!恥じらいを覚えろ!そんなこと、人前で言うな!社長だろ!」
「そう叫ぶ男がいたら、警察に通報してあげる。セクハラってね」
「あんたも逆セクハラで訴えるからな」