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第十五話 はじめてのくえすと

「起立、気をつけ。ありがとうございました」


 今日も授業は午前中で終わる。

 先生たちの準備がまだ整っていならしく、今週は授業は午前中だけ。

 それも自己紹介と、この授業ではどういう内容をやるかって説明をするだけみたいだ。


 国語や英語などはあくまで基本的なことしかやらないらしい。

 まぁ冒険者になるのにそこまで詳しく知る必要もないってことなのだろう。


 もっとも、最上位の冒険者にもなれば、社交界に出る必要もあるのでそうもいってられないみたいだけど。



「ハヤト、今日はどうするの?」

「んー、そうだなぁ。学内クエストでも受けてみるか?」


 初日は決闘、二日目は北島と遊んでてまだ一度もクエストを受けていないんだよな。

 いい加減お金も稼がなきゃいけないし、学内冒険者ランクを上げる必要もある。


「いいわね。それじゃ斡旋所に行こ」

「おぅ。早く行かないと混みそうだしな。お昼はクエスト受けてから食べようか」


 新入生は全員Fからスタートする。

 そうなるとFランククエストが枯渇するかもしれない。

 先にクエスト受けてから、ゆっくり昼飯にするとしよう。


「あ、そうだ。ハ、ハヤト、今日はお弁当作ってきたんだけど……」

「え? マジ? 嬉しいな」


 ジュリも学食は口に合わなかったらしい。

 おにぎりを作って持ってきており、おかずは山菜の佃煮を用意しているそうだ。

 楽しみだな。


「んじゃ今日は晴れてるし、今日はクエストついでに外で食べようか」

「うん!」


 クエスト、俺たちの冒険者人生の始まりだ。

 期待に胸を躍らせ、二人して微笑みあう。


「は、はやくいこっ!」

「あ、そうだな」


 あんまりのんびりしていると本当にクエストが無くなってしまいかねない。

 それに、今回は外で行うクエストって縛りもある。


 俺たちは急いで斡旋所に向かった――のだが……。


「ねぇ……」

「なんだよ……」


 希望通り、俺たちは外で日に当たりながら出来るクエストを受領していた。

 しかしジュリは不満たらたらだ。


「私たち冒険者よね?」

「そうだな、そして今はクエスト中だ。黙って手を動かせ」


 早く終わらせないと失敗扱いにされてしまう。

 最低E評価、出来ればD評価は取らないと。


「これ、フル装備でやる必要あるの?」

「それも、訓練だからなっ! っと」


 俺は力を込めて大きめの雑草を引き抜いた。


 Fランクの定番クエスト。

 草抜き。

 広大な学園敷地内の雑草を引き抜き、一定量納めればクリアとなるこのクエストはとても人気がなかった。


 だってどう考えても冒険者のイメージとはかけ離れてるし、その上報酬はD評価クリアで五千円と最低レベル。

 E評価だったら三千五百円にしかならない。

 しかも絶妙に難易度が高いのだ。


「大八車二台に満杯にとか無理があるでしょ!?」

「良いから黙って手を動かせって!」


 失敗でF評価となってしまったら次のランクまでの道のりが遠くなってしまう。

 まぁ既に一台目は半分埋まってるし、それはなさそうだけど出来ればD評価は取りたい。


「これD評価を二十回って無理があると思うのよ、私」

「そりゃ五人パーティー向けのクエストだからな」


 人気の無い要因の一つはこれだった。

 冒険者が五人あつまって何が悲しくて草むしりをしなければならないのか。

 根っこまでしっかり抜かないとマイナス評価をつけられるし……。


 まぁだからこそ、出遅れた俺たちでも受けることができたんだけど。

 常時依頼が出ており、何パーティーでも受諾可能。

 その裏にはこういう事情があった。


「ハヤトが転けてなかったら、もっと良いクエストあったかもしれないのに……」

「それいうか? そもそも俺が転けたのはお前が壁にぶつかりそうになったの引っ張ったからだからな?」

「あれくらい私でも避けれたわよ!」

「自分のデコを見て物を言え! その前に壁に激突して泣き叫んでたのは誰だよ!?」


 お互い罵り合いながらも手は止めない。

 日暮れまでに終わらせないとタダ働きになってしまうしな……。


 おにぎりは残念ながら夕飯行きになりそうだ。


 その日、なんとか大八車二台に雑草が積みあがったのは日が暮れる寸前だった。


 草抜きクエスト、D評価でクリア成功。



「で、私思うのよ」

「ん?」


 土曜日のお昼、今日もいい天気だと空を見上げた俺にジュリが話しかけてくる。

 

「なんで休みの日にまで草抜きしなきゃいけないの!?」

「なんでって言われてもなぁ……」


 雑草の生い茂るポイントを見つけることが出来たのでなんだかんだ言っても、失敗のリスクが少なくて楽なクエストではあるんだよな。

 朝からやれば大八車六台分、B評価が狙えるんだ。

 まぁ所詮Fランククエストだから報酬はそれでも二人で七千五百円だけどさ。

 でもクエストポイントが六ポイントも貰えるのは大きいと思うんだ。

 なんせ一人三ポイントだからな。


「私、魔法使いなのに……、王女なのに……」


 そりゃ俺だって白魚のように細い指が泥と草の汁で汚れるのは申し訳ないと思わないでもないよ?


 でもさ、お前普段から山菜採りとかいってるよね?

 しかもジャージ姿で。


 入学二日目、本を抱えて帰ってきた時に見た姿は流石に忘れられないぞ。


 王女様がジャージに割烹着着て三角巾とか、親御さんが見たら泣くんじゃないだろうか。

 山菜の煮物は美味しかったから文句はないけども。


「うう……、こんなはずじゃなかったのに……」

「まぁそういうな、ランク上がればもっと良いクエストがあるって」


 その前に俺は折れた剣の購入が必要になってくるけど。

 はぁ、最低一振り二十万円くらいするんだよなぁ。


「だといいけど……」


 そういいつつジュリは次の雑草に手をかける。


「そういえば、その格好なんなの?」


 今更だけど俺はジュリの格好に疑問を覚えて問いかける。

 なんせ彼女は制服の上にローブを纏い、頭には三角の帽子を被っている。


 昨日と一昨日は涼しかったからそれでかと思ってたけど、今日は快晴ということもありジュリの額には玉の汗が浮かんでいた。


「はぁ? 見てわからないの? 魔法使いの装備に決まってるじゃない。ハヤトだって制服の上に鎧着てるでしょ」


 いや、それは分かるけどさ。

 俺が鎧着てるのは俺が前衛の戦士だからで、インファイターのお前がローブとか着るのおかしくないかって話なんだけど。


「お前、インファイターだったよな?」

「違うけど?」


 ……。


「ステータスもう一回教えてもらえるか?」

「なによ、ボケたの? まだ若いのに早くない?」


 うるさいよ、早く教えろ。


「ひっひゃらないへひょ! ああもうっ! 顔に泥ついたじゃない!」

「ほれ、ハンカチ」

「あ、ありがと……」


 再度聞いたジュリのステータスは先日聞いたものと同じで頑丈さと生命力がC、力と敏捷、スタミナがD、そして魔法使いとして最も重要なステータス、器用さと精神力がFだった。


「ふふ、凄いでしょ?」


 ジュリはそう言って胸を張る。

 うん、凄いと思うよ?

 シャルロットには劣るものの、それでもさすがは王族とでもいうべきハイレベルなステータス。


「それに固有スキルだけじゃなくて初期スキルだって発現してるんだから!」

「そう、だったな……」


 彼女に発現した初期スキル、それは身体強化というオーソドックスながらも使い勝手のいいスキルだった。

 ステータス、スキル共に羨ましい内容だ。

 前衛の俺からすればだが。


「いや、そのステータスとスキルで魔法使いはないだろ!?」

「うっ、そ、そうかもしれないけど別にダメってわけじゃないでしょ!?」


 冒険者は各自、好きな役職を選べる。

 斥候職が短剣職に転職したり、両手剣職が盾職に転職したりとは割とよくある話だ。


 だけど格闘家が魔法使いに転職とか無理があるだろ!

 しかも初期のステータスが高いほうがその後もそのステータスが伸びやすいんだぞ!?


「いやよ! 私は、絶対に魔法使いになるんだから!」

「そうは言ってもな……。まぁとりあえず今はいいや。そろそろ昼にしようぜ。祝福返却(ステータス・リターン)


 後でじっくり話しして翻意させないとな。

 選択科目で魔法使い系選ばれたら困る。


「私、絶対に魔法使い諦めないからね!」

「はいはい、とりあえずステータス返却しとけ。危ないぞ」

「草抜きに祝福を使うのもなにか間違ってる気がするけど……、祝福返却(ステータス・リターン)


 気持ちはわからないでもないけどな。

 これはれっきとしたクエスト、神様も認めてるものなんだからいいだろ?


 むしろ本来こういうクエストを受けていってステータスに慣れろって意味合いがあると思うんだ。

 ステータスの影響下だと力とか増してるからいろいろと危ないんだよね。


「っと、あそこにちょうど腰掛けられそうな岩があるな」


 いい感じの場所にちょこんとある白い塊を見つけて俺は走り出す。


「あ! ずるい! 私に座らせてよ!」


 慌ててジュリが追いかけてきたが俺は脚を緩めない、世の中弱肉強食だからな。

 特に俺たちのような冒険者家業では。


「こういうのは早いもの勝ちだ!」


 目端の聞かなかった自分を恨むがいい。

 ちらりと後ろを見て俺は勝利を確信し、そのまま大地を蹴り続ける。


「レディーファーストって言葉知らないの!?」

「うっさい! 俺たちは冒険者だ! そんなもの関係ないね!」


 まぁ普通にベンチに座ればいいんだけども。

 せっかくだからこのままダッシュだ。

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