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『月やあらぬ、』
ーー夢を見た。
それは桜の花灯りの下、誰かが誰かを惜しむ夢。僕はそれをただ眺めるだけの満月で、何もできなかった。満月だから、傍観者だから関係のないことで、人間には良くある別れ話だ。そう頭では分かっているのに何故か目が離せなくて、そして心が痛んだ。
その2人を見たいのに、満開の桜が邪魔をして手元を見ることしかできなかった。桜が邪魔をするように、僕の心がすっきりすることはない。……2人の顔が見れなかったからではない。
ただ、彼は何故お互いを惜しまなければならなかったのか。二度と会うことができないほどの理由と、これからの彼らにほんの少しだけ、興味が湧いたのだ。
僕は人間が少しだけ苦手だ。彼らは僕が持ってないものを持っているから。僕はその面に苦手意識と、羨望を抱く。
きっと僕にはそんな人生歩むことはないだろうから、
ほんの少しだけ、羨ましいと思ったのだ。
桜の下の君が聞いたら、笑うだろうか?