超短編小説「空飛ぶ風船屋さん」No52
陰鬱な雲が覆いかぶさった秋の日の午後。
起きたばかりの私が寝ぼけ眼でそんな空を眺めていると、雲が破れた西の空からなにやらフワフワと空を飛んでくるものが見えた。
私は始めはそれが飛行機かなにかだと思ったけど、段々近づくにつれてそれが小さな屋台だとわかった。
私は急いで外着に着替えて、それを追うことにした。
なにかが始まる予感がするのだ。
私が駅前広場に着いたとき、その屋台と出会った。
屋台の主人は白ひげの優しい目をしたおじいさん。
屋台にはカラフルな沢山の風船が付いていた。
赤や黄緑、オレンジにピンク。
そんな風船が30個くらいついている。
その屋台はどうやら風船を売っているようだ。
なるほど。風船でここまで飛んできたのだろう。
私は納得して空いろの風船を買った。
私は駅の喫茶店でミルクコーヒーを買って、そこから屋台を観察することにした。
風船はどんどん無くなっていき、空はどんどん傾く。
私は本当は屋台がもう一度飛んでいく所を見たかったけど、もう暗くなってしまったし、夜は友達と映画の約束がある。
私はおとなしく家に帰った。
映画が終わり、帰り道。
すっかり夜も更けて、雲が強い風に吹かれて紙切れみたいに途切れ途切れに流れていく。
満月もよく見えて、強気なトカゲの目玉みたいだ。
と、その時。
満月を黒いシルエットが横切っていった。
それはさながら昔のSF映画のワンシーンのようで、私は息を呑む。
そのシルエットは確かに屋台の形をしていた。
そして、屋台の上には沢山の風車が…。
不思議な不思議な空飛ぶ屋台。
彼の屋台は秋になると風船でこの町を訪れて、それを売ったお金で風車を買いこみ、秋風と共にこの町を去る。
私も家のベッドに風船を付けておこう。
不思議な町へたどり着けるかもしれない。
お恥ずかしながら、物語を作る仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、少しずつ進んでいきたいとと思います。
アドバイス、お気軽なコメント待ってます。
毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で33日目の投稿です。