苦い成人式
成人式には苦い思い出。
「甘いだけじゃつまらない」
彼が紡いだ別れの言葉。
真正面しか見ないから。
隠れた味を見ないから。
涙に暮れる私へ、あの人はそっとカップをくれた。
白の中に、淀まぬ黒が映えていた。
心へ差し込む、芳醇な香り。
「ただ喉へ流すんじゃなくて、舌の上で転がすように」
その声は優しくなだめるように。
「苦味の向こうにも味があるんだよ」
その言葉は心へ染み入るように。
「表向きだけじゃ解らない味もあるのさ」
その掌は、何よりも暖かに。
――初めてブラックを美味しいと思えた。
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著作者:中村尚裕
掲載サイト『小説家になろう』https://ncode.syosetu.com/n4336em/
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