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入学前日 その2

 


 魔法、時に魔術、呪術と呼ばれるそれは神秘的な要素が強い力だ。


 実際、何もない空間からものを生み出すことはマジック、手品としか言われないのが元いた世界の常だ。


 しかし、この異世界では日常的に使われている。


 すでに二度、目にしている。


「まず、魔法の種類教える。」


 夢にまで見た魔法についてエマが説明し始めた。


「日常使用する生活魔法、戦闘で使用する戦術魔法の2種類が大きく分けてある」


「はい」


「生活魔法は魔法が使える人からすると、とても便利。道具箱(アイテムボックス)記憶管理(メモリーロック)も生活魔法の一種。汚れ落としとか裁縫とかできる魔法もある」


「日常でも使える魔法ってことですね」


「そう、あくまで日常でも使える危なくない魔法。使い方によっては戦術魔法とも呼べるけど」


 そうだろうと思った。

 道具箱(アイテムボックス)は武器を隠して運べるし、記憶管理(メモリーロック)だって密偵先の秘匿文章を一度見てしまえば完璧に記憶できてしまうわけだ。


 ものは使いよう、そんな言葉がぴったりだ。


「でも世間的には戦術魔法というのは相手を攻撃したり、守りを固めたりする魔法のことを言う」


 戦いの中で使える魔法という括りなのだろう。


「この戦術魔法は魔力を変化させて使う。」


 基礎変化の火、水、土、風、雷。


 陰陽の光と闇。特殊変化の空間、時空、強化


「この変化をアカデミーで覚える。大抵3つ適性があるからそれを中心にクラス分け、各個人の能力を伸ばしていく」


「3つ以上の適性があったりはしないんですか?」


「全部に適性がある人いる。けどあまり成長しない。」


 適性にはS〜Eランクまであるらしい。


 適性ランクが高いほど高い威力の魔法、複雑な魔法が使えるようになるようなのだ。


 万能型、ようはどれにでも適性がある場合、適性ランクはCより上になることがない。

 前例がないからっていうのが理由だそうだ。


 一応

 Eランクは変化不可

 Dランクは変化可能、ただし攻撃不可レベルの変化

 Cランクは戦闘可能レベルの変化、初級魔法のみ使用可能

 といった具合。


 手数や作戦次第では強くなりそうなものだが、CとBランク以上には大きな差があるようで防御が打ち破れないらしい。


 一般的な最も得意な適性のランクは最低でもBランクなので万能型は器用貧乏にしかならないわけだ。


「戦闘では使えないけど普段の生活で何でも屋とかやってる人が多い。万能だから戦わなければ使い道たくさん」


 そうだ、アカデミーは冒険者になれるだけで別の職に就くことを禁止してるわけではないからな。あくまで学校という一面が強い。


「適性ランクは高い方がいい。でもそれだけじゃダメ、大切なのは魔力の操作」


 適性ランクは0からどれだけ生み出すかというもの。

 1しか生み出せないやつもいれば500生み出せる人がいる。


 魔力操作はその出力した魔力をどの程度細かく扱えるかということのようだ。


「仮に100生み出せても細かく扱えないとすぐに魔力切れを起こす。5の威力で倒せる敵がいても50出してしまうのはすごく無駄」


 おじさんが言ってたことに近いな。


 生活魔法も戦術魔法も適切な魔力量で発動させることはランク以上に重要視されているのかもしれない。


「ランクも重要。でも操作がダメだと冒険者になることも絶望的。足手まとい」


「やっぱそうなんですね。操作、慣れたら上達するんですか?」


「練習次第。毎日細かく操作練習すれば上達する。感覚だから自分で見つけるしかない。同じ適性の人に教えてもらって上手くいくこともある、けど…感覚が合わないとそれに引っ張られて余計下手になる」


「努力次第ってことっすね」


「そういうこと。使えて当たり前だからこそやらないといけないの」


「当たり前…か。魔法使えない人はいないってこと?」


「いる、全く使えない人、逆にレア」


「あれ、じゃあそういう人たちはどうするんですか?アカデミーなんていても仕方ないんじゃ」


「その場合、メイド執事育成がある」


「メイド執事、奴隷とかそういうのにされるわけではないんですね」


「奴隷はいるけど魔法が使えないからじゃない。あれは奴隷商が身売りするほどの借金を抱えた人や路地裏のスラム街にいる子供たちを保護してるだけ。言い方は良くないけどちゃんと奴隷の身分がある」


「奴隷っていう職業みたいなものなんですね」


「そう、なりたくてなる人もいるから。それよりもメイド執事のことはいいの?」


「あっ、それも教えてください!」


「魔法が使えない人はそのメイド、執事として育成されて貴族に雇われることが多い。しかも割と引く手数多でいつも人材不足と言われてる」


「普通、魔法が使えるメイド、執事のほうがいいんじゃないんですか?」


「一見使えるほうが優秀。でも身の回りの世話を魔法でするのは手抜き。生活魔法も100%の効力があるわけじゃない。掃除も綺麗にしたつもりでも魔法を使っていたら多少汚れは残ってるもの」


 魔法は手抜き扱いなのか。


「そう、だから魔法が使えない人なら手を抜かないでやってくれる。優秀な人材なの。」


「この国はできない人もちゃんと救済…いや、むしろやれることがしっかりとあるんですね」


「私もすごいと思う。帝国にいたときもマール王国の悪いこと一切聞かなかった」


 それだけ皆が幸せになるために、と試行錯誤してきたんだろう。


 社会的地位の弱い人間ほど生きるのが辛くなる日本とは根本的に考えが違うんだろうな。


「いい国ですね。本当に」


「うん、テスラも私も幸せ者。それより魔法、質問ない?」


  そうだった。魔法のことを聞いていたんだった。


「どうせならもっと詳しく知りたいですけど、アカデミーでやりますよね?」


「やる、実技はアカデミーで特にやる」


「んじゃこの辺りでいいです、あまり詳しく聞いちゃうと多分授業がつまらなくなりそうなんで」


「うん、わかった。魔法はこれで終わり。でも最後にひとつだけ教えておかないといけない。魔法以外の能力のこと」


「魔法以外ですか?」


「そう、魔法は自分で魔力を変化させる。そうじゃない能力、固有(ユニーク)と呼ばれる力」


 多分スキル的なものだろう。


「この固有(ユニーク)も2種類に分かれる。先天的に持って生まれるものを才能(ギフト)。成長で使えるようになるものを技能(スキル)。この2種類に分かれてる」


「魔法とそんなに違うことが?」


 名前だけ変わってる感がある。


「だいぶ違う。まずギフトは魔力の消費はしない力がほとんど。身体が生まれ持って強い子とか普通じゃない子がいるとしたら確実にギフト持ち」


 この感じだと運動神経がいいとか、頭がいいのもこの世界ではギフトを持っているからなのかもしれない。


「それに比べてスキルは使うこともある。種族で代々受け継がれる秘術、さっき教えた魔力変化に当てはまらない変化を使うのがスキル」


 ユニークスキルだな。真似のできない魔法を使えると考えておこう。


「ギフトとスキルは皆持ってるものなの?」


「ギフトは何かしら1つくらいは持ってる。大抵は日常的に意味のない力だったりする」


「エマさんも持ってる?」


「私?持ってる。危機察知。半径500mの私に対する敵意がわかる。多分これは種族的なとこが強い。兎は追われる立場だったから」


 ギフトも種族の一面が強く影響するみたいだ。


「便利な力じゃないですか!羨ましいですよ!」


「テスラも何かしら持ってるはず」


「どこかで調べられるんですか?」


「普通は売ってる測定紙に魔力を込めると表示される。あとギルドでステータス表示をしてくれるのでもわかる。テスラはアカデミーに行くからそこでわかる。」


「アカデミーで調べてくれるんですね!」


「そう、入学式が終わったらすぐに魔法の適性検査。そのあとステータスの確認。それで次の日クラスが発表」


 なるほど、初日から検査が待っているのか。

 楽しみだな、今からワクワクだ。


「どうなるか、私もギドも楽しみにしてる」


「期待に応えられればいいんですけどね」


 自分の体ではないからな、どんな力を持ってるとか全くわからない、その時は苦笑いを浮かべるしかなかった。



物語が進み始めます。

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