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入学式 その4

 



「結構、入学生いるんだなー」




 闘技場と言われる建物に外観は似ていたが、中は障害物のないだだっ広い、砂と芝に分かれた広場が広がっている。


 2mほどの壁で広場を囲っており、出入り口は1つしかない。


 壁の上には客席が設けられており、それぞれ数メートル感覚で出入りできるアーチが作られている。

 そんな客席から分断され作られている場所には天幕が張られており、偉い人が来た時用の個室だというのが見てわかった。


 あいにく客席に人はいないが広場には現在300人ほどが二手に分かれて列に作っていた。


 入学式後、2組に分かれたはずの生徒たちは同じ場所へ一斉に集められていた。

 別々の場所で行うと思っていたが同じ場所で検査はされるという話らしい。

 左右それぞれ魔法適正とステータス確認と分けられており、ここで2組に分けられた際指定された場所に行くようにということだった。


 そして僕たちは入り口入って右側に設営されたステータス確認の列に並んでいる。

 各自終わり次第左手側の魔法適正を受けろとのことだ。


 ある種のイベントのようで皆、我先にと列はあっという間に長蛇になった。

 教師は列の整理や揉め事の仲裁と最初の方は忙しそうにしていたがしばらくすると落ち着き暇そうに立っている。


 僕たちも真っ先に行くべきだったが式の後、周りから腫れ物のように避けられていたので迷惑をかけないようにと最後尾でこの広場にきてしまったせいで出遅れてしまった。

 結果、この長い列の最後の方に並ぶことになりずいぶんと待つ羽目になり暇を持て余すことになった。


「ようやく半分くらい来たんじゃない?」

 コハルは待ち遠しそうに前の状況を確認している。

「そうだね、僕たちの後ろもかなり人増えてきたからね」

 魔法適正の検査が終わった人たちがこちらに並び始め長蛇の列は途絶えることなく続いていた。


 並び始めて20分ほどだろうか、前の方では時折驚きや羨望に満ちた声が上がる。

 最初はワクワクとした気持ちでその声が楽しみに変わっていたが、数回も聞けば叫んでないで早く移動しろと興味のかけらも無くなっていた。


「ステータス確認で待つってことは魔法適正の方でも同じくらい待つってことよね」

「そうね、ここに並んでる人がそのまま向こうに行くだけのようだし、よっぽど早く進まない限りは同じくらい待つと考えた方がいいわね」


 まだ半分だ。あと20分は待つと想定しても終わった後、同じように並ばないといけない事実にコハルもスイハも疲れ気味な顔をした。


 そんな僕たちの前に並ぶ生徒が振り返りチラチラと後ろを確認し始めた。

 何か後ろに用事があるのかと思ったが、理由はすぐにわかった、赤髪の女性が胸を揺らしながらこちらに近づいてきていたのだ。


 よくよく見て見れば振り返るのは男子ばかりでいかに子供に刺激的な胸をしているかよくわかる。


「あっ、いた。さっきぶりね!」


 そんな刺激的な女性ーーアイズが僕らに話しかけてきた。

 

「アイズさん、さっきはありがとうございました」

「こら、先生と呼ぶんだぞ」


 コツンと小突くが全く痛くはない。


「ごめんなさい。アイズ先生」

「よくできました。ところで、並んでるところ悪いんだけどちょっと一緒にきてくれない?」


 あと少しで検査なのだからいくら教師からでもここに来ての呼び出しは少しためらいがある。


「僕一人ですか?」

「いや、そこの2人の女の子も一緒で来て欲しいの」

「私たちも?」

「うん、校長が連れて来いってうるさくてね」


 スイハとコハルもあと少しで検査なのに呼び出されてがっかりしている。断れない上に校長の呼び出しで不安も感じているだろう。しかし校長のことだ特に理由はないに違いない。しいてつける理由があるなら直感、といったところだろう。


「わかりました、でも検査はどうすれば?」

「そのことで呼んで来いって言われたんだよ」

「何か問題が?」

「わからない、けど楽しそうではあったよ」


 気の毒そうに僕らに笑いかける。

 これはきっと気まぐれに付き合わされて可哀想といった感じだろうか。


「断れないですもんね。コハルもスイハも大丈夫?」

「ええ、校長先生からなら仕方ないわよ」

「そうですね、テスラ君の言う通り断れないですよ」


 渋々納得というよりは半強制だから仕方なくといった感じだ。


「決まりね、じゃあ行きましょう」


 そう言ってアイズ先生が歩き出す。

 その姿を隠れて見ているつもりだろうが視線が胸に集まっているが後ろにいてもわかった。

 これからは気をつけよう、そう決めてアイズ先生の後に続いて歩き進めた。



 ーーーーーーー



 広場を出て建物内をぐるっと半周、入り口とは反対側に下へ降りる階段があった、その先は広場よりも少し小さめの地下空間が広がっていた。


 その真ん中で校長、レヴィ、ロウ先生の3人が石柱を囲って話していた。

 こちらを向いていた校長は真っ先に気づいたようで手を振っている。


「おっそ〜い、アイズちゃん!」

「あの大人数から探すの大変だったんですから!」

「ロウ君も何か言ってあげて!」

「悪かったな、アイズ。校長のわがままに付き合わせて」

「う、ううん。いいのよ、これも仕事だし」


 この2人の関係は子供から見てもできていると感じさせるほどほんわかムードが漂う。


「なによ!なによ!キサラちゃん放置でいちゃついちゃって!」

それを見た校長は案の定怒って地団駄を踏んでいる。


「校長落ち着いて。テスラ君にさっき怯えられてたの忘れたんですか?今は2人女生徒もいるので怖い校長だと思われるとキャラ崩れますよ!」


 言葉を選びながらレヴィは校長を諭すが最後のはどうなんだろうか、キャラとか言って逆撫でしないだろうか。


「アイズちゃん、覚えてなさい。ロウ君は私のものなんだから!」


 捨て台詞を吐いたあとに深呼吸をして別人のような笑顔でこちらに話しかけて来た。


「テスラ君ごめんね〜。急にお呼びたてしちゃって」

「構いませんけど、僕たちまだ検査してないですよ?」

「いいのいいの〜。ここでしてもらうために呼んだんだから〜」


 そういって石の柱をペシペシ叩いた、その威力が強い気がしたが気のせいだろう。


「これで検査するんだけど数が少なくてね〜、そのせいであんなに並んでるのよ〜」

「僕らだけいいんですか?こんな場所にまできて個別でなんて」

「いいに決まってるだろ。あの王太子なんて代表だからと上で割り込んでやってたぞ。テスラも代表なんだからこれぐらい許されるさ」


 ロウ先生はとことん王太子が好きじゃないらしい。

 しかし代表ならそんなことしてもよかったのか、そんな考えすら浮かんでいなかった。


「そういうわけだからテスラ君たちには早速やってもらおう〜!」


 その言葉と同じくしてレヴィが内ポケットから3枚のカードを出した。


「このプレートを使って検査をする。そこの石の柱にかざすとまずステータスが表示され、そのあと裏面をかざすと魔法適正が表示される。この2つは設定すれば他人には許可しないと見ることができないようになっているから安心してくれ。ステータスと魔法適正が表示されて初めてこのプレートは君たちの学生証となるからくれぐれも無くさないように」


 そういってそれぞれに1枚ずつ渡していく。


 鉱石のような金属系、不思議と重くなくそれで頑丈なカードサイズのプレート。


「はい、じゃあ〜早速そのプレートを石にかざしてみて〜」


 言われるがまま僕たちは石柱にカードをかざすと突然手元が眩く光り出した。

 正確には石柱が光りそれに呼応するようにカードも同じ光りを放ち始めた。

 体から何か抜ける感覚の後、徐々に光は落ち着き元の石柱に戻った。


「これでステータスはいいかな〜、プレートに書かれてるか確認よ〜!」


 やけにテンションの高い校長は無視してプレートに書かれた文字を確認した。


 日向テスラ


魔力量 S


固有(ユニーク)

才能(ギフト) ・言語統一

   ・人気者

   ・剣術 B

   ・契約者

技能(スキル) ・集中

   ・強心臓


 なにやらたくさんあるが詳しいことは何も書かれてはいないのでいまいちわからない。

 確かエマさんの話では1人1つは持っているという話だった、それを踏まえると僕はずいぶん才能(ギフト)が多いかもしれないということがわかるくらいだろう。


 スイハとコハルはどうだろうか。

 2人ともちゃんと書かれているようで自分のステータスとにらめっこをしている、なぜかコハルは難しそうな顔をしているが。


「2人はどうだった?見てもいい?」

「ええ、予想よりすごくよかったですよ!テスラ君のも見せてください!」

「私は…なんだか複雑。はい」


 2人のステータスをそれぞれ確認させてもらった。



水面スイハ


魔力量 A


固有(ユニーク)

才能(ギフト) ・完全記憶

   ・知力 B

技能(スキル) ・癒しの祈り



日和コハル


魔力量 B


固有(ユニーク)

才能(ギフト)揉め事(トラブルメーカー) (遺伝)

   ・命中 A

技能(スキル) ・精霊契約



 才能(ギフト)を複数持ち、技能(スキル)も持っているのは充分優秀なはずだ、コハルの揉め事(トラブルメーカー)だけはマイナス能力っぽいがそれでも一応能力は能力だ。


「テスラ君のステータスすごい!」

「ほんとなによ!これ!優秀すぎじゃない!」


 この2人のを見た後だと僕のステータスは少し盛られていることがよくわかる。


「これは〜すごいわね〜才能(ギフト)が4つもあるなんて〜」

「代表らしいステータスでいいじゃねぇか!」

「ほんと!これはすごいわよ!」

「なかなかいませんからね、4つ持ちは。さすがです」


 それぞれが僕のプレートをみて褒めたり驚いたりしている。

 ただ異世界から来たから特別チートレベルでステータスが強化されているというわけではなさそうだ、なかなかいない程度には存在しているのだろうから驚く程度で済んでいるみたいだし。


「あれ、見たことないのありません?」


 突如アイズが僕らのステータスを見ながらやや興奮気味に問いかけている。


「ほら、この契約者ってやつと癒しの祈りってやつ!特殊固有(ユニーク)じゃないですか?」

「そうね〜たしかに聞いたことはないわね〜」

「癒しの祈りは聞いたことありますよ?古代の書物に載ってたはずです。契約者は…残念ながらわからないですね」

「レヴィがねぇなら俺もねぇな」

「ちょ、ちょっと!なんでフウ君までそんな冷静なのよ!」


 アイズからすればこの珍しい能力はよっぽどのことみたいだが、他の3人は関心はあるがそこまで騒ぐほどではないと冷めた感じだ。


「あー、アイズは知らないのか。通年何人かが珍しい能力とか聞いたこともない能力持ってることあるんだよ。その度に俺とレヴィが調べさせられるから正直またかって感じなんだよな」

「そうですね、私は研究できて面白いですけどね」


 だからなんてことないと言いたげにアイズの興奮を無視をしている。


「そういうことよ〜。さぁ〜、次は魔法適正見てみましょう〜!そっちがクラス分けの基準ですからね〜」


 校長の一言でそれ以上アイズは追求するタイミングを逃したようで大人しく一歩下がっていた。


 魔法適正は裏面をかざせばよかったんだな。

 コハル、スイハとアイコンタクトをとり同時に再び石柱にプレートをかざした。


 先ほどとは濃い光といえばいいか、眩しさが増し目を開けられないほどの光が瞬いた後、光はプレートの中に吸い込まれていった。


 プレートにはステータス同様、各属性の適正ランクが書かれていた。


魔法適正  火 F

      水 F

      土 F

      風 F

      雷 F

      光 F

      闇 F

      時空 F

      空間 F

      強化 SSS


 目を疑った、エマさんから習った魔法適正はE〜Sまででそれより下なのかもわからないF、上であろうSSSというのは一切話として出て来ていなかった。


これはまずい。

異常な適正ランクに同様しているとコハルが話しかけて来た。


「なによあんた、固まっちゃって!そんなにひどかったのかしら?あたしはかなりいい感じだったわよ!」

 よっぽど自信があるのか、見せびらかすように僕へプレートを見せつけてきた。



魔法適正  火 E

      水 B

      土 D

      風 S

      雷 E

      光 D

      闇 E

      時空 E

      空間 A

      強化 D



「どう!Sありよ!」

 万能型ではなく得意と不得意が分かれていて期待できそうな適正ランクだ、Sがあるだけで優秀だと一目でわかるが。

 そんなことを考えているとスイハも僕のところへやってきた。

「テスラ君!私のも見てください!」

 珍しく興奮気味でプレートを僕に手渡す。



魔法適正  火 E

      水 S

      土 E

      風 C

      雷 A

      光 S

      闇 E

      時空 S

      空間 E

      強化 E



 天才、その一言しか出てこないほど素晴らしい適正ランクじゃないだろうか。

 コハルも充分優秀なのだがステータスと適正を比べてしまうとスイハが学年代表でも問題ないくらいずば抜けている。もちろん僕なんかよりだ。


「げっ、テスラなにこれあんたのプレート壊れてるわよ!」

「そうですよ!こんな適正ランク存在しませんよ!」


 そんな2人が僕の適正値の異常さに声をあげた。

 手に持っていたはずのプレートはいつのまにかコハルとスイハに取られていたのだ。

 2人が抗議するがそんなこと言われても自分でもよくわからないのだからどうしようもない。


「いや、でも故障ならあの人たちが何かしら言ってくることないか?」


 そういって校長たちを見る。

「どうかしたの〜?」

「いや、これみてください」


 自分のプレートをコハルから貰い校長へ手渡した。

「適正のところなんですけどランクがおかしいみたいで」

「どれどれ〜…………これはちょっとまずいかも」

 おふざけモードだった校長が少し真剣になった。

 それにつられてロウ先生、アイズ、レヴィも僕の適正を見ていたが同じく表情は冴えない。


「ランクF。これは困ったわ。レヴィ、テスラ君は呪いの類、刑罰の痕跡はあるかしら?」

「いえ、あったならば最初に会った時点で気づいていますし、今詳しく調べますがたぶんその可能性はないかと」

 そう言ってレヴィが僕の頭に手を置いた。

 なにやら暖かいものが体に流れてきているがそれだけで体に異変はない。


「やはりないですね、呪いも刑罰も一切かけられた痕跡はないです」

「じゃあ先天的のF………アイズちゃんはSSSなんて適正見たことあるかしら」

「えっ、いやーSなら過去にも20人くらいいましたけどさらにその上っていうのは聞いたこともないです」

「ロウ君はどう思う?」

「こればかりはわかんねぇな。ただ俺はこの適正に見覚えがあるぞ」


 ピクッと校長が反応したのがわかった。

「なに、どこでみたの」

 ロウ先生が話し出すのを場の全員が固唾を飲んで待つ。


「俺らの世代のさらに前、約1000年前にこの世界の半分を破壊した魔王ウルスの適正がテスラの適正と同じだ」

「はぁ?フウ君それは絵本のお話でしょ?」

 アイズが呆れ顔でロウ先生の言葉を馬鹿にする。


「まぁお前がそう思うのも仕方ない、あれはおとぎ話として広まっているからな。でも実際いたらしいぞ、校長なら知ってるんじゃないか?」

「えぇ、実在してたことは知ってるわ。それでも…その詳しい力は不明だし、実在だってごく一部しか知らないことよ、なんでロウ君が…何か裏の仕事でもしたのかしら」


 よっぽどのことらしく校長はロウ先生に対してあからさまに警告としての威圧感を出した。


「いや、俺がそんなことするわけないだろ。昔…まだキサラやレヴィに会う前にある場所でその魔王ウルスの時代の遺跡を見つけたんだよ、そこで…」

「待って!そんなの聞いたことないわよ!」

「そりゃ言ったことないし、今の今まで忘れていたからな」

「それってどういう…」

「とりあえず話を聞いてくれ」


 ロウ先生は割り込んでくる校長を制して話を続けた。


「その遺跡の中は魔物がいてな、空腹だった俺は食用ではないがとにかく腹の足しになればいいと思って狩って食べてたんだ。そんなことしてどんどん奥の方に進んでいくと書庫のような場所を見つけたんだ。そこにあった本はほとんどが朽ちてたんだが一冊だけ全くの新品のような本があったんだ。気になって開いたらまさかの魔法がかかっててよ、本が襲ってきた」

「バカじゃないの、周り朽ちててひとつだけ新品なんて明らかに怪しいでしょ」

アイズが呆れて茶々を入れる。


「そりゃそうだ、まぁ今ならわかるが当時の俺は無鉄砲だったからな。その本がかなり強敵でな、倒そうにも見たことない魔法が飛んでくるわで苦労したんだ、だから仕方なく大事なものかもしれないと思ったが半分にぶった切ってやった」


「ロウ君…もし本当なら流石にそれはどうかと思うわ」

 校長は哀れみの目を浮かべている。


「こっちも命かかってたんだよ!あれはかなりの魔力込めて作られてたから下手したら死んでたんだぞ!それに切ったらそのあと普通に読めたんだ、結果オーライだろ。その本の中身は魔王ウルスについて書かれた日記のようなものでその中に魔法適正が載ってたってわけ」

「で、結局なんで今まで言わなかったのよ、それに魔王ウルスの時代の遺跡ってなんでわかったのよ」

校長はまだ疑いをやめてはいないが先ほどまでの警戒心はない。


「あぁ、それはその日記が本物にしか思えなかったからそう俺が決めつけてただけで実際はわからん。あと言わなかったんじゃなくて忘れさせられてたんだ。日記を読み終わった途端、転移させられて知らない街の入り口にいたんだよ。その時に忘却の魔法がついてたらしくすっかり忘れてた。だから場所もわからないし、あの本の行方も半分のまま残ってるのかどうかもわからない。けど俺が見たっていう記憶だけさっき思い出した」

「歴史的価値をなんだと思ってるんだ」


「そんなこと言われてもな、魔王ウルスなんてその当時知らなかったし。この学校に来てから始めておとぎ話で聞いたんだよ、その魔王について」

 おとぎ話も土地ごとにあるからな、ロウ先生を責めたりはできないだろ。


「ま、ロウ君を信じることにするわ。疑ってごめんなさいね。その魔王ウルスとテスラ君の適正が同じということは後から相談しましょう。それよりもこれをどうやって隠すか、よ。」


その説明に納得したようで校長はロウ先生に頭を下げていたがロウ先生は別に気にも留めないですんなり許していた。


「そうですね、ランクFは罪人扱い、ランクSSSは嘘扱いでしょうし、テスラ君には申し訳ないですが代表たり得る能力とは言えないですから、なんとか誤魔化さないといけませんね」


 想定外だったに違いない。あってはならない能力に校長もレヴィも頭を悩ませる一方で解決策は見つかりそうもなかった。



「それにしてもあんたがトラブルメーカーじゃないのよ、あたしの才能(ギフト)あげるわよ」


 重い空気を察してか、コハルが手を僕にかざしながら『移れ〜』と念じるようにしてふざけ始めた。


「そんなこと言われてもな、魔王と一緒とか俺も困ってるんだぜ?それに普通の魔法が使えないなんてショックだよ」

「それでもテスラ君SSSもあるんですよ!きっと特別な魔法がつかえますよ!」

「魔王が使ってたやつとかか?破壊しちまうかもしれないぞ?」

「そ、その時は私とコハルが止めますよ!」


 あわあわと慌ててる姿が可愛らしい、気を使ってくれる二人の友人をこれほど暖かく感じることはない。


「ありがと、スイハ。そうだな、二人が止めてくれるなら俺も自分ができることをすることにするよ」

「そうですよ!一緒にがんばりましょ!」

「あぁ!ところでコハルはいつまでやってるんだ?」

「へっ?そろそろ移るかなと」

 本気でやってたのかよ。


「ふふ、才能(ギフト)は移らないわよ」


 アイズが校長やレヴィの輪から離れてこちらへやってきた。

「話し合いは終わったんですか?」

「ぜーんぜん。君の処遇なんて上位クラスにしても使えないことがバレて問題になるし、下位クラスにしても代表が下位なんてと問題になるからどちらにしても困るのよ、八方塞がりね」

 やれやれと両手を上げてお手上げといった表情をする。


「まっ、それでま校長とレヴィがなんとかするわよ。ああ見えて生徒はちゃんと守る人たちだからね」


 ああ見えては余計な一言だろうがそれでもどこか納得する一言ではある。


「アイズ先生、才能(ギフト)の能力がどんなものかわからないんだけど教えてもらえないですか?」

 コハルがこそっと僕の横にきて尋ねた。

 たしかに自分の能力がどんなものなのか知っておきたいというのはある。


「うーん、そうね…少し時間かかりそうだし。いいわ、わかる範囲で教えてあげる。それぞれプレート見せてちょうだい!」


 僕の処遇を相談している間、自分たちの能力についての講習をアイズ先生の元で受けることになった。




 時刻は昼過ぎ、陽の差し込まない地下空間は入ってきた当初よりも複雑な空気をまとっていた。




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