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アカデミーの落ちこぼれ  作者: 安藤豚々
プロローグ
1/10

古典的異世界入場

 




「今は昔竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて、竹をとりつゝ、よろづの事につかひけり。名をば讃岐造麿(さぬきのみやつこ)となんいひけるーーーー」


  ピリッと張り詰めた空気の中、淡々と朗読する女子を横目に俺は襲い来る眠気と今日一番の戦いを繰り広げていた。


 授業は5限目、退屈な古文の授業はいつも以上に子守唄力を発揮している。


 周りを見渡せばすでに机に伏して眠っているやつ、こくりこくりと舟をこいでいるものもいる。


 既にクラスの半分ほどは睡魔に負けそうになっているようだ。


 そんなこと露知らずと言わんばかりに授業は進む。ただ教卓から見れば寝ているかどうかなどすぐにわかるので単純に教師は諦めているだけなのだが。


 率先して授業参加をし、朗読までしている委員長だが如何(いかん)せんその朗読の単調さと長さでより眠りに落ちるものが増えていく。


 かくいう俺も山場を超えられずそのまま意識を失うようにリタイアするのであった。





 ――

 ――――

 ――――――

 ――――――――





「ん?」



 目を閉じながら意識を取り戻した時、違和感が真っ先にやってきた。


 先程まで硬い椅子と机で寝ていたはずなのに今、自分は横になって寝ている。

 さらに言えばふかふかのベッドで布団をしっかり肩までかけられているので随分と心地がいい。


 陽気な小鳥の鳴き声が時折聞こえるのだが自分の置かれている状況が怖くて目を開けられないでいた。


 そんな状況が数分。聞き耳を立てても物音がなく周りから人の気配がしないことを確認して薄っすら目を開けてみる。


 人影はなく隣には一台の空きベッドがあり足元の方にはコートなどをかけるタンスとその横に小さなテーブルとイスがあるだけの(よくあるゲームの宿屋のような)ツインルームの部屋であった。


 誰もいないようなので目を開け体を起こす。布団から出た自分の身体を確認する、鏡はないので目視でだが、服装は制服のままで特に変わりはない。


 鳥の鳴き声がしていた窓から外を覗く。


「は?いや、ここどこだよ」


 思わず口にしてしまったが想像していなかった光景が目の前に広がっていた。


 石造りのような建物が通りを囲むように立てられており、舗装された道の端では屋台やらが並んでいる、さながら中世ヨーロッパの雰囲気と東南アジアの屋台街が混ざったような感じだ。


 しかしそれよりも自分の目を疑ったのは人ではない生き物があちこち普通に歩いているのだ。


 亜人と言えばいいのか、動物の体で歩くものや、一部獣化してる人、全くの別生物などこれはまさしく異ーー


「世界ですな。」


 背後からの素っ頓狂な声にバッと窓から目を離し振り替える。


「いい反応と表情ですな。ハッハッハッ」


 身長180センチほどの大きな身長、やや細身で口髭を左右逆に跳ね上げている、服装はシルクハットに正装と見た目は英国紳士なだが色合いがおかしい。


 赤と緑と黒のチェック柄のスラックスに青いジャケット、中のシャツは紫、ネクタイは黄、白の手袋に後ろに見えるマントのようなものが虹色といえばいいのかマーブルカラー。なぜかシルクハットだけは王道の黒。


 おしゃれなのか、自分の色彩感覚ではよくわからないが不快感だけは確かにある。


「そんなにジッとみるところ、この服のおしゃれさに気づいたのですかな?さすがですな」


 典型的な紳士風の色彩変人のおじさんがニマニマとこちらを見ながら言う。

 いや、気づいてない。むしろ警戒してるわ。そんな色合い。


「あ、あんた、な、何者だ」


 突然の出来事で口が渇く。そのせいか(ども)ってしまう。


「落ち着いてくだされ。敵ではありませんぞ。」


 右手でシルクハットをあげ胸のあたりに持ってきて頭を下げる。紳士的な美しいお辞儀だ。


「申し遅れました、わたくしこの世界の案内人を申しつけられたもの。名前はありませんので悪しからず」


 そういうと頭を上げシルクハットを再び被る。


「案内人?というかここはどこだよ!なんだって俺はこんなところで寝てるんだ!」


 敵意がなく恐れることもないせいか、俺は怒鳴るような勢いで質問を投げかけてしまっていた。


「その説明のためにわたくしめがきたのでございます、あなたの世界でいうチュートリアル、操作説明はありませんが少しだけこの世界のことと、あなたの今の置かれた状況を説明いたします。」


 そういうとおもむろに右手の白い手袋を外しパチンッと指を鳴らす。ボンっと音を立て目の前で白煙が上がるとその中から黒板らしきボードが現れた。


「想像通りの驚かれようですね。何が起こったか不思議かもしれませんが後から説明します」


 よっぽど驚いた顔をしていたのだろうか、ふっふっふとにこやかに笑う姿も紳士的だ。


「では、突然のことで驚嘆(きょうたん)したと思われますが」


 ゴホンと咳払いをし一拍の間を作る。


「この世界はあなたのいた世界とは別世界です。まぁ先ほど外をご覧になっていましたからなんとなく気づいてはいたでしょうが」


 ……薄々そんな気はしていた。架空生物がいる時点でそうじゃないかと。


「まずは……そうですね、なぜあなたがここにいるのかを説明したほうがよろしいかな?」


 コクリと頷くと色彩変人紳士が黒板になにやら色々描き始めた。


「おそらくですが…あなたは今、異世界転生、召喚というものを想像されていると思います。が、残念ながら少し違います。異世界交換(チェンジ)、魂の交換でこちらへきたのです」


 よくわからないが詳しくはこんな感じ。


 僕の世界の小説やアニメに描かれる異世界は存在している。だが実際そこへ行くのは不可能でそのことを知ってるもしくは知るすべはない。


 が、日本に異世界転生、召喚された異世界人がいたらしくその人が自分の世界の物語を作り上げ、皆が現実にあるか、ないかを知ることもなく知識として知るようになった。


 気づけばファンタジー、空想世界と呼ばれ、さらに憧れが生まれ、そこから様々物語を創作や創造、それを読むものがそこからまた新しく創り上げる。


 その結果、別世界に行ってみたいとか、暮らしたいという思いが小さくたくさん集まる。すると限りなく小さい時空間、並行世界をつなげるゲートが一瞬開くらしい。


 そのゲートは本やアニメを媒介したり、扉の先、落とし穴のように道路に開いていたりする。そこを通ってやってくることを異世界召喚と言う、神隠しとかもそれらしい。


 たまに神様に会えることもあるらしいが、それは神様に選ばれ活躍する物語が流行った時に起こりやすいようで、『神様にあって能力をもらって異世界へ』なんていう思いが多くなると起きるという結論がでてるらしい。


 物語の流行りで会えるかどうか変わるというのは理不尽な気もするがそもそも異世界へ行くこと自体が有り得ない話だ。会わないほうが何も考えずに生きていけるらしい。


 転生は死ぬ間際とか事故で即死しそうな魂がゲートに吸い込まれてなるらしい。魂なので幽体離脱的なことで入り込むこともあるみたい。


 多分今までの僕ならそんなこと信じなかっただろう。現にゲートは目には見えないし、転生や、召喚された人なんてのは会ったこともなかった。が、自分が異世界にいる以上信じざるを得ない。


 僕のされた異世界交換(チェンジ)だがAの世界とBの世界の魂を交換するらしい。転生と何か違うことでもあるのだろうか。魂とは言ってたが服装は同じだったし。


「失敬、まだ魂と肉体が結びついておりませんでしたので先ほどは前と同じ姿に見えたのかと、もう一度こちらの鏡で自分の服装、大きさを確認して見ては?」


 どこから出したのか目の前に鏡が置かれる。それを見るとそこには小学生ほどの年齢の少年が映っていた。

 瞳は青く、髪は黄色と金が混じり合った色になっている、短髪というには少し長いツンツン頭。元気そうな印象をもつ整った顔立ち。

 外人っぽくはない。ただ日本人かと言われるとそんなこともない。ハーフっぽいといえばいいのか、なんにせよ人の子であるには違いなさそうだ。


「えっと、これが僕ですか?なんだか全くの別人なんですけど」


 そもそも年齢が違う。自分という実感がわかないが手足を動かすと同じ動きをするのは目の前の鏡に映る少年だ。


「そうですぞ、それがこの世界でのあなたの姿です。交換された体と言っていいでしょう」


 通りで目の前の色彩変人紳士を大きく感じたわけだ。子供の姿では180センチは巨人に感じるな。


 交換(チェンジ)というからには多分、元いた世界の自分の体は、


「この体の持ち主が引き継いでるんですか?」

「察しがいいようで、その通りでございます。元いた世界のあなたの体は別の魂を宿しそのまま生き続けております」


 この子が僕の体で生きるのか。向こうの世界でもおじさんのように案内人と呼ばれる人が同じように状況を説明しているらしい。


「なんとなく異世界交換(チェンジ)の意味はわかりました。僕はこの体でこの異世界生活をするってことですね、元の世界にはいつか戻ることできるんですか?」


 単純な疑問をぶつけてみる。


「そうですな……」


 有耶無耶にはできないようで少し悩んでいる。


「正直なところ戻るのは……不可能、無理でしょう。方法はありますが元の体に戻れることはありません。仮に元の世界へ行けても今の姿で、さらにあなたの生きていた時代よりはるかに未来に行くことになるかと」


 ポケットから出したハンカチーフで冷や汗を拭く仕草をする、申し訳なさそうな表情だ。


「そっか、戻れないのか。まぁこうなっちゃったのは運が良かったと考えることにします。別世界の住人になるなんて経験できるものじゃないし」


 元の世界に未練はない、高校生活も楽しかったが将来を考えた時、不安が勝ることが多かった。正直こっちの方がずっとわくわくするのだ。


「いやはや、そう言っていただけるだけで私も救われます。寛大な御心に感謝を。」


「ところでおじさんが僕たちを入れ替えたの?」


 そもそも僕らを入れ替えたのは誰なのか、そこを教えてもらったいなかった。


「いえ、私ではないです。誰かというのも私は知らないです。申し訳ありません」


 本当は知りたかったけどな。でも今、適当に選んで交換しましたとか言われたら流石にイラっとするからわからなくてよかったのかもしれない。


「それと世界の概要ですね。まず先ほど窓からご覧になられましたでしょうがこの世界には亜人と呼ばれるものたちがおります。人間と同じぐらいの比率でいると考えてもらって結構でございます」


 人じゃない人がいるというだけで一気に別世界感は強くなる。


「人型に耳や尻尾など動物的特徴があるものを獣人、角や羽など魔物のような特徴があるものを魔人。その2種にも細かな族称がありますが総称して亜人と呼びます、ただ亜人と呼ぶと差別的だというところもありますのでお気をつけを。種族ごとに能力の特徴もあるのですがまぁそれは追い追い知り合ってから教えてもらったほうがいいでしょう。説明するにも種族の種類はかなりありますからな」


 どの世界にも差別はあるか。それにしても亜人ね、リアル猫耳な女の子とかいると思うと早く外を歩きたくなるな。


「人間と亜人、あとは亜人の特徴になる動物と魔獣がこの世界で生きている生物ってことであってる?」


「はい、(おおむ)ね。例外としては精霊やエルフと呼ばれる部類しにくい高位の生き物もいますね。後、幽体や屍人、これは魔獣扱いにはなるのですが死んでしまって別の生き物として生かされる場合がありますね。」


 ゾンビ系とお化け系もいるのか。見て見たいような会いたくないような。


「浄化する光魔法が使えればなんてことはありません、あまり使える人はいませんが。会うことも少ないのでそこまで気にしなくてもいいと思いますぞ」


 おっ、光魔法ときたか。これはーー


「魔法あるんですね!」


 テンション上がるな。思わず弾んだ声で喋ってしまった。


「あります。この世界は魔法が一般的に使われております。先ほどの黒板を出すのも道具箱(アイテムボックス)という基礎魔法の1つです、発動の仕方は人それぞれなので…私の場合は」


 パチンッと指を鳴らし目の前の黒板を消した。


「こんな感じで指を鳴らして発動させます、小物であれば何もしなくて発動できますが」


 そう言うと右手に杖、何かの実、短刀と出しては消してを見せてくれた。


「すごいですね!これが一般的な魔法!こういう便利魔法って上位魔法が定番なのに。その…アイテムボックス?は容量とかものの大きさとか関係なく無限に出し入れできるんですか?」


 つい高揚してしまう。これが使えたらカバンとかいらないからな、よくある序盤イベントのスリとか被害に遭うこともなさそうだし。


「いえ、もちろん制限はあります。この魔法は使用者の魔力総量で入れられる量が決まってますので、人によってはポーチサイズほどの容量でいっぱいの人もいれば馬車数台分持っていられるよう人もいるようです。かく言う私はそれより多くの容量入れられますが」


 自信ありげな顔だな。上がった髭が揺れてるぞ。


「魔力総量ね、やっぱり生まれ持った能力で優劣がこの世界でもきまるのか」


「いえいえ、確かに収納の量はそうですが、他の面では一概にそうとも言えません。魔力総量が多くても魔力の扱いが下手くそでは全く使い物になりませんし、総量も増やそうと思えば増やせるのです。リスクもあるので推奨はしませんが。魔力の扱いの方を優先して鍛えたほうがよっぽど利用価値ありと判断されます」


 なるほど、扱い方のほうが大事なのか。多くても暴発するようでは一般的に魔法を使うこの世界では確かに使いものにならないのかもしれない。


「例えばこの花瓶を道具箱(アイテムボックス)でしまいます。しまうのは触れてさえいれば魔力はほとんど使いません。がこれを取り出すときにどの程度花瓶の輪郭を捉えるかで魔力の使う量が変わります」


 花瓶の周りに魔力を薄くまとわせられれば少量の魔力で出すことができ、下手くそな魔力操作だと花瓶を大きな丸で囲って出すことになるようでかなり差が出るらしい。完璧な出し方の消費魔力が1だとすると下手くそは100といったところみたいだ。


 確かにこれはかなり差が出るな。なんでもマスタークラスと呼ばれる上位魔法官でも5ほどは使うらしいから一般の人はおいそれと簡単に出し入れできない。


「極端だけど1と100か。カバンなしでアイテムボックスのみで出歩くなんて魔力の無駄遣いってことか」


「そうですね、よほど魔力量が多ければいいですがそんな人は一握りですから。それに市内魔力使用禁止の街なんてざらにあります。無難にカバンに必需品はいれとくほうがいいですよ。自分以外開けられない付属魔法がかかったカバンも作られてますし」


 なるほどね、基本的に非常食とか頻繁には使わないけどいるものをいれとく感じだな。まさに道具箱だ。


「他に何か魔法ないんですか?もっとこう派手な」


 まぁ道具箱(アイテムボックス)も何もないところにものを出すわけだから十分驚いたけど、どうせならもっと大きな火を出したり、ものを凍らせたり、これぞ魔法!ってなのを見たいころだ。


「あります、先ほどの白煙もある種魔法ですから、しかしそれは冒険者養成学校(アカデミー)で基礎から習ってきたほうがいいでしょう。あまり私の魔法は参考にするべきではないです」


「アカデミー?」


「そうです、あなたの世界でいう小学校の立ち位置ですね。冒険者養成とはなっていますがこの国では皆、子供の頃にそのアカデミーへ通うのが一般的です。今後の予定としてはそこへ入学していただきます」


 学校か。この世界の文字とかもありそうだし、今の状況ではありがたい。そこで魔法も学べるようだし、異世界で生きるすべを身につけなくては。


「わかった。とりあえず今ははおじさんの言うようにするしかなさそうだし、アカデミーへ行かせてもらうよ」


「よろしくお願いします。アカデミー入学までの1週間はこの宿で宿泊できるようにしてあります。一応私の連れてきた孫ということにしてますので怪しまれることはないでしょう」


 アカデミー入学が1週間後か。その間に家を探すのか?


「その後はアカデミーの提供する家で住んでいただきます。食事等は自炊してもらわないといけませんが」


 いや、十分だろう。無償で家を貸してもらうのだ。それくらい自分でやる。


「今後のアカデミーのことはわかりました。この世界についてもう少し詳しく教えてもらえないですか?」


 亜人の存在と魔法以外にもきっと基礎的に知っていて当然なことはあるはずだ。


「そうですね…電力は魔力を保存する水晶によって各家庭でも使えるようになっています。なので科学と魔法の混じり合った状態になってます。元の世界とは違い不便さを感じるとするなら移動手段が馬車なので車や電車、飛行機がないこと。連絡は未だに手紙なので携帯電話や電話といった通信機がないことぐらいですね」


 その程度なら想定内、車も携帯もないのがファンタジーというものだ。


「あとは………申し訳ありません、これ以上は御教えする時間がなさそうです。」


 えっ、急だな


「ここにいることだけを想定した魔力量しか持ってこなかったので先ほどの道具箱(アイテムボックス)で存在維持が難しくなってしました。」


 おいおい。ヘラヘラと笑って言っているがかなり惚けているらしい。

 そういえばさっきと比べるとなんか薄っすらと透けてきてるし。


 こんな知識量でアカデミーまでの1週間どう過ごせというのか。通貨の単位も価値も食事もこの国の王や他国の場所、宗教だって知らないと後から困るぞ。


「心配はいりませんぞ。その年子で通貨はさておき王や他国、宗教のことを知っているものなど貴族の坊ちゃん嬢ちゃんくらいで一般的な子はアカデミーで習うことなので気にしなくてもいいのです」


 そうか、確かにこの年齢の子供が知りすぎているのは目をつけられるかもしれないな。通貨だけでも教えてもらおう。


「それじゃあ通貨のことを「そろそろ」」


 僕の言葉を遮りシルクハットを取り胸の辺りへ当てお辞儀をする。


「此度の転移であなたの人生は変わってしまわれた。しかし、この世界もまたあなたの世界。その少年、日向(ひなた)テスラの体にてどうか楽しい異世界ライフを。何かありましたらお呼びください。あなたが魔力を扱えるようになった頃呼び方もわかりましょう」


 そういって頭をあげシルクハットを被ると、ではまた。と言い、つけていた虹色のマントで体を隠すように翻すとそのまま何もなかったかのように消えていった。魔力切れなのか、消える魔法なのか、わからないな。


 ーー祖父は用事で旅立ったと宿の主人にはお伝えを


 風とともに聞こえた声に頷く。


日向(ひなた)テスラ。それが僕の名前か」


 というか通貨教えていけよ。


 色彩変人紳士のいなくなった部屋は物静かになり、窓の外からは賑やかな街の流れが喧しく響いていた。





読んでいただきありがとうございます。

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