七話
「おい、どうするんだ?気絶したぞ。かっこ笑いかっこ閉じ」
「かっこ笑いって口に出すんじゃないよ!おーい!イルー!目ー覚ませー!」
必死にイルに呼びかけてみるが目を覚ます気配は全くない。どうしたものかと考えていると『俺』がとんでもないことをした
「ふぅ~はは~!よ~し!俺に任せるがよい!」
「任せるって何を――」
気絶しているイルの目の前に立つと、おもむろにイルの履いていたスカートを降ろした
「おまっ!何して――」
しかし、俺の言葉を無視して『俺』は間髪入れず次の行動に出た
「よ~し!このまま最後はパンツを――」
「「何してやがるんだあああああ!」」
俺が発した言葉が誰かと被った。……あぁ、そういえばいたなぁグリドさん。……なんでさっきまで傍観してたんだろう。……助け船とか欲しかった
「お前えええ!さっきからおとなしくしてりゃ魔王様に何を――ゲフゥ!」
「うるせぇ邪魔すんな」
って、よっわ!グリドさんよっわ!まさかの一撃ノックアウト!?
「お、おま、お前えええ!イルに何しようとしてるんだ!」
「見て分かるだろうよ。パンツ脱がせようとしてるんだよぅ……お前は好きな子が剥かれるところをそこで見ておくんだよぉ……」
「やめろおおおおおおおおお!」
俺は必死に『俺』の手をイルから引き剥がそうとしたが、間に合わず、パンツに手を掛けたその瞬間……
「きゃああああああああ!」
「ゲフ……」
寸前のタイミングで意識を取り戻したイルが『俺』の股間辺りをを思いっきり蹴り上げた。
「あ、アンタ。またやったわね!そ、それも気絶してる間に……ド変態!」
……また、ねぇ。そう言えば言ってたなぁ。無理矢理にスカート降ろしたとか……
「ふ、ふへへかか!いいキックを放つじゃぁないか……今までで一番効いた…ぜ…。……バタン」
バタンって……口で言える気力あるとか、……こいつ結構余裕あるだろ
「ふぅ……。ねぇミノ?アンタも見たでしょ。」
……アカン、巻き添えで俺に矛先向いた
「み、見てないぞ?むしろ俺は必死にこいつを止めようとしたんだよ!」
イルから顔を逸らしながら、そう答える。だって逸らさないとパンツが視界に入ってしまうわけで
「そう言うなら、こっち見なさいよ。目を逸らさないでよ」
「じゃあイルもスカート履いてくれよ!そこに倒れてる『俺』が手に持ってるからさぁ!」
「……~~~~~」
俺がそう言うと、ようやく冷静になって自分の格好に気づいたのか、再び顔を赤くしてその場に崩れた
「……ごめんなさい。ちょっと代わりにソイツの持ってるスカート取って、動いたら隠せないから!」
「あ、うん」
イルに言われたとおりに俺は強引に『俺』の手を開かせ、スカートを奪い取る。
そして、それを横を向きながらイルに渡した
「……ありがと、いいって言うまで目瞑っててよ?」
「う、うん。だよな」
言われた通りに目を塞いでおく。……下着姿なんて見てしまったら確実に気まずくなるからな。理性が吹っ飛ぶかもしれないからな
「……………」
こ、これはこれでヤバイ!何も見えないおかげで余計な想像が……想像が……
「へ、変なこと考えてないわよね!?」
「そんなこと言ってないで早く履いて!変な考えが溢れてくるから!」
俺は少し強めにそう言うと、目だけではなく耳も塞いだ。……大丈夫大丈夫、少しぐらいなら呼びかける声が拾えるはず……
「……もういいわよ」
「よっしゃああああ!」
一分もない程に短い時間だったのに、何故か俺の中では長かったように感じる。多分だが、もし目を開けた場合は俺もそこで倒れてるのと同じ目に遭ったと思う
「ところでさ、そこで倒れてるのどうするよ?」
「放っとけばいいんじゃない?……それか、今までの仕返しを……」
ふっふっふ……と珍しく魔王らしい黒い笑みを浮かべながら、イルは倒れている『俺』に近づいていく
「仕返し…ってことは……脱がすのか……」
「脱がさないわよ!そんな破廉恥な!」
……よかった、安心した。正直に言うと俺と同じ容姿をした奴が脱がされるのを見るのは結構精神的に来そうだしな
「じゃあどうするんだよ?」
「……こうするの…よ!」
そう言いながら、イルは『俺』を蹴るために足を上げる。その矛先は……急所だな、うん
まぁ自業自得だし、止めないでおこう。
イルの鋭いキックが再び『俺』の股間に迫ったその時
「おっと、それは困る」
気絶していたはずだった『俺』が目を覚まして、素早く立ち上がった
「……あ」
そして、イルは勢い余って盛大に転んだ。イルも再び立ち上がると、『俺』に話しかける
「……いつ意識戻ったの?」
「最初からさ!そもそも気絶なんてしてねぇんだーよ!お前の下着もしっかりと見てやったから安心するといいよ!……また縞々だったな!」
……成程、縞々か……履いてるパンツまでかわい……じゃなくて!こいつさっきまでうつぶせになってたよな!どうやって見てたんだよ!
「……殺す!絶対に殺す!」
イルは何処からか、禍々しいオーラの様なものを纏った剣を出して。『俺』に斬り掛かる……が
「へいへい、落ち着きたまえよ、イル君。それと『俺』よ。うつぶせになってたのにどうやって見たんだという疑問だがな」
……こいつ何で当然のように俺の思考を読んでるんだよ。聞く手間が省けたからいいけどさぁ……
「ほら、あれだ。所謂『千里眼』って奴だよ。これで自分の視界を変えたってだけだ」
何かすごく早く剣で斬りまくってるイルを片手だけでいなしながら俺に向かってそう答える
「簡単に言ってやんよ。ようは架空の目を作って、その情報を脳に流してるってこった。だから目を開いてるとかは関係ない」
……よく分からん。要約すると、見えないカメラで取った映像を見てるってことでいいのか?
「ははっは!つまりそういうことよ!好きなところに好きなタイミングで何処までも飛ばせるドローンみたいなもんだ!」
「うああああああああ!」
さっきからイルは変わらずに『俺』を斬りまくっている。というか時間経つごとに速さとか威力とか上がっている気が……
「ひゃはははは!無駄無駄ァ!テメェじゃ俺には勝てねぇんだよ!」
「……てい」
「グォゥ!」
『俺』があまりにも調子にのっていたので、ちょっと後ろに回り込んで攻撃をたたき込んでみた。……ステータスが同じだからだろう。普通に攻撃が届いた