六話
あまりにも久しぶりすぎる更新です
「『インヘルノ・フェニックス』!」
「なっ……嘘…だろ…?」
今、俺の目の前にいる『俺』は信じられないとでも言うように驚いた顔をしている
それはそうだろう。さっきまで全く魔法の使い方が分からなかった奴が突然魔法を使ったのだから
「……ちっ、なんだ驚かせやがってよぉ!唯々体が燃えてるだけじゃないですか!そんなので一転攻勢出来るわけないんだ……よぉ!」
小物臭い台詞をわざとらしく吐きながら『俺』は魔力の玉の様なものを大量に投げつけてくる。
……だがそれがどうしたというのだ。俺は気にせずに『俺』に向かって歩いて行く
「魔弾が……消滅……だと。……面白いよ俺!だぁが、そぉれがいつまで持つのだろうでしょうか!」
だが目の前にいる『俺』は、懲りずに再び魔力の玉を大量に投げてきた。しかし、さっきとは明らかに出力が違う。
こいつが投げてきたのは、恐らく全ての属性を詰め込み、一つ一つが街ぐらいなら簡単に吹き飛ばせるような代物だろう
「ヒャッハアアアアア!流石にこれなら死ぬだろおおおお!……なッ!」
だが、それすらもこの炎の前では意味はない。これこそ、全てを燃やし尽くす地獄の炎だからだ。
だからこそ体に貼り付けたバリアがなければ確実に俺の体も完全に消滅してしまうのだ。
「……無駄な抵抗はやめろ。さもなくば、この炎の纏った拳でお前の体をぶち抜く!」
「ちっ!雑魚がほざくんじゃねぇ!うぐおおおおおおおお!」
『俺』は天井に手を向けると、大量の魔力を注ぎ始めた。すると、次の瞬間に超巨大な魔力の塊が出現する
「は、はははは!ふぅははははははは!流石のアナタ殿もこれを食らえばただでは済まねぇぞ!死ねええええ!」
……たしかにこれはヤバイな。うん、何がヤバイって、このままじゃこの城がぶっ壊れるな。……まぁ、俺は炎のおかげで無傷で済むんだが
イルと魔王城の人達には世話になったし、それは避けたいしな。……というか何よりもイルが泣くだろう
しょうがない。こうなったらあの塊に飛び込むか。一欠片も部屋の一部に触れないように
「よっ……と!」
俺はその場で思い切り飛び跳ねると、空を飛ぶイメージを展開する。するとイメージしたとおりに体が浮き始めた。
さすが『絶対者』なんて大層なスキル名なだけあるな。やりたい放題だ。
「はぁ!」
掛け声と共に、塊に飛び込んでいく。思った通り炎のおかげで俺の体にはダメージはいかない。
それを確認すると同時に、塊の核に向かって全速力で向かっていく。
「そこ……だぁ!」
案の定、核は中心にあった。まるで小さな硝子玉のような見た目だった。硝子玉のようなそれに、手を伸ばした。すると
「うがぁぁぁ!有り得ん!嘘だろ!アレが消されるとはぁ!」
魔力の塊は一瞬にして消滅。下で『俺』が悲鳴をあげている。いい気味だ
俺は『俺』の近くに降りて、拳を握る
「さぁ、言い残すことはあるか?」
「許してく――」
「駄目だ」
俺は『俺』を消滅させるために、握った拳を『俺』に向かって振り抜いた。……しかし
「は、ははは、ふははははは!俺に出来ることが俺に出来ないとでも思ったか?……お前がバリア貼れるなら俺にだって貼れるに決まってるだろうが!」
防がれた。……あぁ、考えてみれば当たり前か。こいつは俺だ。俺と同じ能力を持ってるんだ。俺がこの炎を防げるバリアを使える時点で、こいつも防げるのは確定してるんだ
(あぁ、終わった)
俺はもう『俺』に殺されるんだ。と、俺は死を覚悟して目を瞑った。すると
「あぁ、安心しろ。今までのは全部演技だ。実際お前を殺したら俺も消えるしな」
「……は?」
演技?それにしては殺意がマジだったんだが?
「だから演技ですよ演技。分離したと言っても本体はお前なんだぜ?本体が死んだら分離体も消えるのは基本ですのこと」
……口調は素なのかよ。
「消えるのは普通に嫌だからな!だって消えたらねぇ……?」
そう言いながら『俺』はさっきまで空気だったイルの方向を向く
「ひぃっ!」
可哀想なことに、彼女はすっかりと怯えてしまっている。なんか少し涙目になってる気がする
「イルの泣き顔とかああいう怯えた表情とか見れなくなるだろうが!」
「性格わっるっ!」
いや、たしかにな!泣き顔のイルも正直かわいいと思ったよ?でも俺が見たいのはなぁ……
「俺は笑顔のイルの方が好きなんだ!お前みたいな奴からは絶対守ってやるって決めたぞ!」
「ひゅ~かぁっこいいね~!本人の前でそんなこと言うとかすげぇや!ほらイルの顔みてみろ」
「~~~~~~~」
『俺』に言われた通りイルの顔を見るとぷしゅ~という音を立てながら真っ赤になってるのが分かる。
……天使かな?この子本当は魔王じゃなくて天使なんじゃないかな?
「……かわいい」
やばい、思わず口に出てしまった
「!?」
イルはトマトのように顔を真っ赤にして、気絶した