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転生者と魔王  作者: コウ
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五話

お待たせしました

異世界生活二日目、

 

 昨日の出来事を簡潔に説明すると、あの後イルの部下?の魔物達が俺に対して敵意むき出しだったのを二人で何とか説明して分かって貰ったり、 

 その魔物達のリーダー格のグリドさんと意気投合したり、魔王城の施設を案内して貰ったり、イルに日本の事を色々と話したりで日本にいたときとは比べられないほどに充実した一日だった。

 

 「う~ん、よく寝たなぁ~」

 

 おまけに魔王城のベッドは家のものとは比較できないぐらいに寝心地が良かったので、ついつい寝過ぎてしまった。……勿論イルの部屋とは別の部屋だぞ?

 

 「えっと、外の様子は……本当に寝過ぎたな、もう太陽が北東に昇ってるぞ」

 

 日本にいた時は日の出の時間には起きて散歩をしていたんだけどなぁ。……見知らぬ場所を歩き回る勇気は俺にはないから地形が把握できるまでは散歩する気は毛頭ないが

 

 正直昨日で魔王城の魔物の人達は皆いい人で結構仲良くなった方だとは思うが、それでも外は安全だとは限らないし……俺に反則的な能力があるのは分かったけど戦闘なんてしたくないしね!

 

 「さて、ずっと部屋に籠もっているのもアレだし。そろそろ食堂にでも行こうかな」

 

 俺はベッドを飛び出して部屋から出ようとすると慌てた様子の足音が聞こえてきた。

 

 「ミノ!ミノはいるか!」

 

 更に慌ただしい声も追加されて目の前のドアが空間を押しつぶすかのような勢いで開けられた

 

 「あ、グリドさん。丁度今部屋から出ようとしてたんですけど何かありました?」

 

 「ぜぇ…ぜぇ…聞きたいことがあるんだが…お前は今日いつ起きた?」

 

 え?いつって言われても……さっき起きたばかりなんだけど……

 

 「ついさっき起きたばかりですが…それがなにか?」

 

 「本当だな!?間違いないな!?」

 

 うわ……剣幕が凄い。この様子はただ事ではないな。……というか二日目でどうしてこんなにも面倒くさそうな事態が発生しているのだろうか?……というかめっちゃ肩揺すられてるし!やばい酔う!

 

 「お、落ち着いて下さい!というか揺らさないで!事情が分からないとこっちとしては混乱するばかりなんですが!」

 

 「……その様子だと間違いないようだな。すまなかった。今から事情を話す……でも時間が危険だから急ぎで話すぞ!?」

 

 時間が危険ってなんだよ。慌てすぎて単語が意味不明だぞ

 

 「は、はい。お願いします」

 

 その瞬間彼の口から発せられた言葉に俺は耳を疑った

 

 「……簡潔に言うとな、暴走したお前がまた魔王様を襲っている」

 

 ―――――は?

 

 ちょっと俺の理解力では理解することが出来ない。……聞き間違いだよな?取りあえずもう一回聞いてみる。聞き間違いであることを祈りながら

 

 「――すいません、もう一回言って下さい」

 

 「お前の気持ちはよく分かる、俺だって同じ事を言われたら同じ反応をするさ、でも事実なんだ、だからもう一回言うぞ」

 

 止めて下さい、やっぱり言わなくていいです。だから止めてください!

 

 「暴走したお前がまた魔王様を襲っている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤバイな今一瞬意識を失いかけた。

 

 おかしくない!?俺は今確かにここにいるんだぞ!?ひょっとして今の俺は意識だけの存在とか?……いやグリドさんに俺のことが見えてる時点でそれはないか。

 

 じゃあこれは夢か?……そうだ夢だな。そうに違いない。ちょっと試しに頬を抓ってみよう……アレーオカシイナー、普通に痛い

 

 ……認めたくはないけどどうやらこれは現実らしい。現実は非情ですね

 

 「はぁぁぁぁ……」

 

 思わず大きな溜息が出てしまったけど仕方ないと思います。俺じゃなくてもこうなると思います。

 

 「……分かりました。イルの所に連れて行って下さい」

 

 「……覚悟しておけよ。俺がよく知ってるお前と全く同じだからな」

 

 ……つまりアレか。理由は不明だけど俺の裏人格ってのと同じ事をやってるってことか。

 

 正直未だに状況は掴めていないがじっとしてても事態は悪化するだろうし、早く魔王の間に向かうかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔王の間

 

 「あひゃひゃひゃひゃ!お前ってやっぱり雑魚だな!」

 

 「うっざああああああああい!」

 

 「魔王様!いまそちらに向かいます!」

  

 ―――何だこれ

 

 本当に何この状況!なんで俺がイルの周りを変なポーズで高速で回っているの!?

 

 表情もかなり腹立つ顔だし、というかマジで俺と同じ容姿じゃないか!

 

 「きしゃしゃしゃしゃ……しゃ?」

 

 うわ…こっちに気付いたようだ。じっと見てくる。……いろんな意味で気持ち悪いからじわじわと近づいてくるのを止めてくれませんかね!?

 

 「やぁ俺!ようやくお目覚めか…よ!」 


 「うぉ!危な!」

 

 イルに近づくグリドさんを無視してこっちに近づいてきた『俺』は突然殴りかかってきた。

 

 「ちっ!避けるんじゃねぇ!『マジックプリズン・氷』!」

 

『俺』が一言そう唱えると周囲が冷気に包まれ、氷の檻となりこの場にいる全員を拘束した

  

 「……成程、これが魔法か。……冷た!マジで氷だこれ!」

 

 というかこれって戦闘だよな?……初戦闘の相手が自分と同じ姿をした奴ってどういうことだよ!あ、ヤバイ。既に攻撃の姿勢に入ってきてる

 

 「さぁて!これでもう逃げられないなぁ!『表』にはとっとと退場してもらおうか!」

 

 悪党!セリフが完全に悪人のそれじゃんか!クソッ!何とかこいつの口から情報を聞き出せないだろうか。

 

 「ちょ、ちょっと待って!せめて退場させられる前に教えてくれよ!なんでお前は俺と同じ見た目なのかを!」

 

 「いいでしょう!冥土の土産に教えて差し上げますでござる!俺はお前の裏人格だ、そして俺は自由になりたかった。だから能力でお(おもて)(うら)を切り離してやった。それだけだ」

 

 ……ちょっと理解が追いつかないが、取りあえず今この時点での解釈は今俺の目の前にいる『俺』は裏人格そのものっていう解釈でいいわけだ。……というか本当に口調が安定してないなこいつ

 

 「まぁ、そういうわけだ。俺が成り代わるために貴様には死んでいただかなければいけないの。死んで下さるかしら?」

 

 「嫌に決まってるだろ!」

 

 冗談じゃないよ。こんな軽いノリで殺されてたまるか。なんとかこの檻から抜け出す策を考えないと……

 

 物理で殴って壊すか?幸い俺のステータスは反則級だし、どうにかな――

 

 ――いや、駄目かもしれないな。俺のステータスが反則級っていうことは、あっちも同じく反則級のステータスを持ってるってことだ。それとは関係なしに魔法で作られた物は物理では壊せない可能性だって十分ある

 

 じゃあどうする?物理が駄目なら後は――魔法? 物理では無理でも同じように魔法をぶつければ何とかなるか?

 

 おそらくだがこの状況を切り抜けるにはこれしかないだろう。だが、その場合はまた別の問題が発生する。

 

 それは俺が本当に魔法を使うことが出来るかどうかだ。これに関しては魔力の器という意味ならば間違いなく魔法は使えるのだろう。今目の前にいるこいつが魔法を使えているのが何よりの証拠だ。

 

 しかし、俺はそもそも魔法の使い方が分からない。なんとなくで分かるような天才ではないからだ。

 

 ならどうする?……答えは簡単。詳しい人物に聞くのが一番だろう。幸い目の前にいるこいつはイルのことは眼中に入っていない。それに大声を出せば届かない距離でもない

 

 「イル!魔法ってどうやって使うんだ!?」

 

 「あ、アンタよくそのマズイ状況で質問なんて出来るわね!でもそれが必要なことなら答えてあげる。全身に意識を集中すればいいの!そうすれば体が熱くなってくるのが分かる筈よ!」

 

 全身に意識を集中。今は他事を考えてる暇はない。邪念が入れば待っているのは死のみであるのは明白だからだ。――あぁ、何となくだが魔力が体を駆け巡っているのが分かる、あぁこれならなんとかなり――

 

 「ッ!熱!クッソ!思ったよりも熱いぞ!」

 

 想像を遙かに超える熱さで一瞬だけ集中が途絶えてしまった。だがそんなことは関係ない、自身の体がまるで火の通った鉄板のように熱くなっているが、今は黙ってイルの指示を待つ

 

 「熱くなったのを感じたなら集中はそこまででいいわ!後は体の熱が冷めないうちに魔力を外に出して!力を抜けばいいの!」

 

 力を…抜く…こんな感じか!

 

 「そこまで行けたら次でラストよ!とにかく頭でイメージしなさい!」

 

 イ、イメージ!?最後に凄く曖昧な物が出て来たぞ!えっと……氷の檻を直ぐに溶かすには……そうだ、これはどうだろう

 

 先ず最初は炎、だがただの炎ではこの氷の檻を溶かすことなど不可能だろう。だから地獄の炎を持ってくるしかないと思う。

 

 そしてただ一直線に放つのではなく。纏めで溶かせられるような形状……自分の体に纏うのはどうだろうか。

 

 よし!これでだいたいのイメージは揃った。最後にもう一つ。炎を纏うならそもそも自分の身が安全でなくては攻撃としてはまるで意味がない。

 

 だから、この地獄の炎から身を守れるようなバリアが必要、だがこれが一番の難関だ。何故なら地獄の炎から己を守れる手段などないに等しいからだ。

 

 だが考えている時間はない。今こうして考えている間にも『俺』はじわじわとこっちに迫ってきている

 

 「はぁい、今までは悪役らしく律儀に待ってやったがそろそろカウントダウンの開始だぁ!これが0になった時がお前の最後ですよ~ん。はい、それじゃあ先ずは10から~」

 

 マズイ、とうとう俺の死へのカウントダウンが始まってしまった。

 

 「10」

 

 クソッ!早く考えなければ!考えろ!とにかく考えろ!

 

 「9」

 

 刻一刻とカウントが減っていく

 

 「8、7」

 

 なっ!?あの野郎ペースを上げてきた!

 

 「6、5」

 

 残り時間はがもう実質3秒もないぞ!どうする、どうするどうするどうするどうする

 

 「4、3、2」









  

 ―あ―そうだ――何を難しく考える必要があったんだろう。今から俺が使おうとしている物に理屈なんて必要ないじゃないか

 

 今から使う物は『科学』ではない『魔法』なんだ、魔法に理屈なんていらない。ただ自分の思い通りにすればいいだけの話だ

 

 は、はは、ははははは!もう何がどうすればとかは考えない。今から俺が張るバリアはあらゆる攻撃を無効にする!

 

 曖昧だろうがどうでもいい。だって俺の能力は『絶対者』なんだから。そんなもの無理矢理俺の為に確たるものにしてやればいい!

 

 「1、0、はい、それじゃあグッバ―」

 

 カウントがとうとう0になった。だがもう関係ない、イメージは既に完成したからだ。それではお見せしよう。俺の初めての魔法、その名は――

 

 「『インヘルノ・フェニックス』!」

 

 さぁここから逆転の始まりだ!

 

 

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