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夏の夜には  作者: 祐羽
1/1

はじまりはじまり

第一夜 煙の迎




誰にでも不思議な体験の一つや二つはあるものだろう。


その中でも夏になると出てくる怪談話。不思議な体験、恐怖体験、そんなイメージがついてまわるが…

はたして、彼らは私達に対して怖いだけの存在なのだろうか?


かとゆう私も不思議な体験には慣れっこ…と、言いたいところだが、残念ながら怖い話は大の苦手だ。

だけど、残念なことに産まれてから何度もこの不思議な体験、不透明な存在に助けられてしまっている。なんとも不本意だが。

そんなこと言ったら怒られるだろうか…


だが、またもや残念なことに、私の周りで私を助ける不透明な存在の二人は実は知っていたりするのだ。

知っているのは私と弟の二人だけ…。


小さい頃から感動の少ない子だとか、表情の少ない子だとかよく言われた私。

父親いわく、どこに連れて行こうが、何を買おうが嬉しそうにはするが、どこかそれだけで子供らしくはしゃぐって事がなかったらしい。

それもそのはず。良く予知夢を見ていた。

特に話したことはなかったが、はじめて連れてってもらった遊園地やある一場面。そういったのが夢で見てしまう。

一度、はじめて行った遊園地に行く車の中で何に乗るか話しているときのこと。


「ここのジェットコースター、後ろに走るんだって。」

「それ、あんまり怖くなかったなぁー。」

「はじめて行くのに何いってんの、乗ったことないでしょ。」


なんて、言われてしまった。私はどこに何があったのかも覚えていたし、どんな形だったかも覚えていた。

園に着いて地図を見ながらの家族をみながら、一回来たのに覚えてないんだなぁ、程度にしか思ってなかったが。


お昼を食べる場所を探しているとき、少し芝のある開けた場所がないか探していた。

これも覚えてないのかぁ…と思って、

「こっちだよ。」

と、私が知っている広場につれていった。

まぁ、もちろん親の方がキョトーンとしていたのをおぼえている。


「なんで、こんなとこ知ってるの?」

「え?だって前もきたじゃん。」

「いや…はじめてだよ?ここに連れてきたのは…。」


ふむ、そこまで言われちゃはじめての遊園地だったのだろう。

自分が予知夢を見てるんだなーって自覚したのは父親と母親の喧嘩の台詞を一言一句ぴったり同じ事を言ってるのを聞いたとき。夢で見た、親が隠したクリスマスプレゼントの場所で実物を見つけたとき。


なので、嬉しいことは嬉しいが、サプライズにはならず知っちゃってるんですな。

はしゃいでるフリはしてたのだが、そこは親である。

フリなのばれていたのだ。


そんなで、4つ下の弟は予知夢は見ないまでもくじ運が凄くいい。

何かのくじを引けば一等から四等までに必ず食い込む。

何かを選ぶときは絶対失敗しない。

弟いわく、


「うーん、なんかこれだっ!て思うんだよねー。」


らいし。曖昧すぎて真似できない。

いつか、宝くじを買ってもらおう。


そんなある日…。


小学校に行く前。家の仏間から煙がでている。祖父母がお線香炊きすぎたのだろう、と思っていた。

放課後家に帰ると、煙の量が物凄い。

どの部屋にも薄く煙がかかっている。さすがに火事かとも思ったが、出迎えた祖父母は普通。


「おばあちゃん、お線香炊きすぎたの?」

「そんなの朝だけで、炊いてないよ。」


恐る恐る仏間に確認しに行ったが、お線香は炊かれてない。仏間は他の部屋よりも煙は濃かったが。

これで、なにもないってなんだろう、なんて思っていたら弟に、


「ねぇちゃんも見えてるんだね。あー、良かった。火事じゃないかとおもったけど、どこも燃えてないよ。」

「そっか、火事じゃないならいっか。」


そのうち消えるだろうとも思い窓を思いっきり開け放しといたら、祖母に怒られた。

その日の夕飯は弟と一緒に友達の家に食べに行った。

家族で付き合いがある友達である。

だが、夜迎えに来た父親にワガママを言って、お泊まりにしてもらった。子供達のワガママは強いのだ。


何となく帰りたくないのもあった。理由を聞かれても何となく。煙の事が気になってたのもあるが、弟が嫌がったのもある。


その日の夜。闘病中だった母親が亡くなった。

良く晴れた秋空に、帰り道いつも繋がない姉弟の手を引いて歩く父親。


「お母さん死んだんでしょ。」


とサラッと言った弟。

何となく分かってはいた。もちろん、鮮明な予知夢ではないにせよ、なんどか母親が遠くで見守ってるのに、その場所に行くと母親の持ち物だけが置いてあり、二度と会えない。

なんて夢を何度も何度も繰り返しみていた。母親が闘病に入る前なんてものではなく、それこそ物心ついた頃から。


その荷物の中身は私たちの玩具やお菓子、そんなものが入ってた。二人で重い鞄を泣きながら持って帰る。

そんな夢。


それから数年。

今度は突然祖母が亡くなった。下痢が酷いからと病院に行って入院。そのまま状態悪化してだった。


その日、祖母の顔を見て父親に先に帰ってろといわれ、家に着くと家の中が煙で充満している。

仏間から煙が出ていた。


「ねぇちゃん、またかな?」


もちろん、出掛けるのにお線香など炊かない。


あー、おばあちゃん亡くなったんだ。


と、思った瞬間家の電話が鳴った。


「おばあちゃん今亡くなったから。」

「そっか。」


父親からの電話だった。

だと思ったよ。とは言わなかった。


そんなときに弟はテレビの前でビデオの操作をしている。


「すぐ戻ることになると思って、今日の分のテレビ録画予約してる!お姉ちゃんいつものでしょ!」


えぇ、いつものでお願いします。

不謹慎と言えば不謹慎かもしれないが、私達に取っては母親から始まってこういう別れに折れて欲しくないと思う二人だろうと思う。

闘病中に笑ってた母親も、母親が亡くなってから育ててくれた祖母も暗い顔したら絶対怒る。

だったら、空元気でもいつも通りが大事。


病院に戻り、また家に帰って来たときには煙は綺麗に消えていた。

不思議と怖いという感覚はなく。しっかり迎えが来てくれたんだなぁと安心感があった。


それからは煙は一度も出ていない。誰も亡くなってないからかもしれないが。



そして、前後してしまうが、母親が亡くなったあたりから不思議なことが増えていったきがする。

そう。恐らく不透明な存在の一つは母親だ。

見たわけではないから断言はできない。


不思議な話はまた次のお話で。

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