プロローグ
こんにちは&初めまして。
まったり更新していく予定です。
宜しくお願いします!
『懲りないお坊っちゃんだなー。いい加減諦めろよー。どんだけ木の実無視して歩くんだっつーの。勿体無いったらありゃしない。あっ、あぁ!あれ、あれ、あの実は滅多に見つからねーパナプじゃん!取って帰ろーぜっ!!』
耳のすぐ横で毛玉が騒いでいるが、オレは無視して足を進める。
『あーあー!お前……あーあー、見えなくなっちまった……』
機嫌を損ねた毛玉はやれ腹が減ったの、疲れただのと文句を言う。
だがオレは気にせず森の奥へ進む足を緩めず無言で歩いた。
『……どうせ無駄足になるんだ。死んだ婆さんが言ってただろ』
呆れたように、だがどこか哀れむように毛玉は言う。
『結局出られやしないんだから、さ』
それでもオレは歩く。
茜色だった空は闇にのまれてきた。
焦りから半ば駆けるように足を動かす。
確かに昨日は駄目だった。
一昨日もその前も、婆ちゃんが死んでから毎日毎日森の奥へ足を運んで来たんだ。
今日は駄目でも明日なら、明後日ならと。
この丘を越えたらきっとそこにはーーー
『……ほら、見ろよ』
灯りのついていない小さな小屋がポツンと立っているのが見えた。
手入れされた小さな畑、開けっ放しの馬小屋。
飽きるほど見慣れた風景……つまりそれは我が家だった。
どれだけ時間が経ったのか、足の冷たさからオレは我にかえった。
気張って動かしていた足はいつのまにか湿った森の地面に両膝をついている。
『……家に入ろーぜ。すっかり冷えちまってる』
知らぬ間に首に巻きついていた毛玉が呟く。
オレを気遣い黙って暖めてくれていたようだ。
「そうだな……帰ろうか」
『腹減ったー』
「オレも」
『あん時パナプを取っときゃ今夜はご馳走だったのに……』
マフラーを止め、肩に座り直した毛玉ーー基、ペティーがぶつぶつ文句を言い始めた。
それをいつもの事だと苦笑いで返す。
今日も駄目だったーーーオレは諦めと絶望を感じながら、重い足を小さな古い小屋へ向けた。
感想など頂けますと、海より深く感謝します!