第74話 百合に近い何か
「いや~ふっかふかやわ~なんでこんなにデカくて柔らかいんや~」
こ、こんにちは。天法院美空です。こんな挨拶も久しぶりですね。私は今どうなっているかと言うと…
「ん…そ、そう?」
「こんな良いもん、あんな奴には勿体ないわ。ウチが貰ったるわ」
お風呂場で裸で胸をまさぐられるという拷問紛いの行為を受けています。
「いや、あげないからっ」
相手は同じく裸のレイコです。指をわきわきと動かしています。私も流石に我慢できなくなり、咄嗟に両手で胸を覆い隠し、身を捩ります。何故こうなったのか私も知りたいので少し遡って見ましょう。
◆
「行くとこもないやろ?ウチに招待したるわ」
茜色に染まるマンションの廊下にレイコは息を切らして立っていました。
「…なんで?」
「「なんで?」はないやろ!!ウチら友達なんやから、理由なんて必要ないやろ?」
レイコが差し伸べてくれた手を掴もうとする私の手は震えていました。人の温もりを知って、また失うのを恐れている。
「…本当に、良いの?」
恐る恐る尋ねました。
「なっ、何度も言わせんなや。ミソラはウチの友達なんや。ほっとけるわけないやろ。恥ずかし」
このまま一時の大切な思い出として、胸の奥にしまうこともできる。その方が辛い思いはしないかも知れない。けれど、
「ありがとう」
まだ、天法院美空として諦めきれないものがありました。
しっかりと手を握ると、レイコは満面の笑みと共に崩れ落ちました。
「ちょ、ちょっとレイコ!?」
「いやな、ミソラがいなくなってしまうんやないかと怖かったんや。せやから、気が抜けてしもうたんかな」
軽く笑っているレイコでしたが、その瞳には涙が溢れていました。それを見て思い出しました。レイコの心を読める能力を。きっとレイコは心が読める分だけ他の人よりも敏感に感情を感じ取ってしまうから余計辛かったんでしょうね。
倒れかけたレイコを支えながら、気付けば、その頭の撫でていました。
「ふふっ、なんやねん」
私もレイコも、辛くても悲しくても泣きながらでも笑うことができる。それだけで不思議な安心感が心を満たしていました。
◆
コウヤ君のマンションとは対称的に、和風な一軒家に案内されました。
「ただいま~」
「お、お邪魔しまーす」
よそよそしく敷居を跨ぐと奥からエプロンを着けたままの女性が出迎えてくれました。
「お帰りなさい」
若々しく綺麗なその人に見とれていると目が合いました。
「あら?あなたが噂のミソラちゃん?リオから聞いてるわよ。スゴい新人女性ハンターが来たって」
「そうなんよ、母さん。ミソラはめちゃくちゃ強いんやで!!」
自分の事のように自慢して胸を張るレイコ。って聞き捨てならない事言わなかった?
「え!?レイコのお母さん!?」
「そうやで」
「うふふ」と手を頬に当て小首を傾げる姿は経産婦のものとは思えない程綺麗な人でした。
「ででで、でも、関西弁は!?お母さん関西弁じゃなかったよね!?」
「それはレイコが勝手に使ってるだけよ。我が家に関西系の血は知る限りないわ」
…初登場第10話から実に64話越しに明かされる衝撃の真実。思えば弟のレイトさんも関西弁じゃなかったけど、それが伏線だったとは。
「そ、そんなことより!!ミソラをしばらく泊めたげてもええ?」
「もちろん良いわよ、客間も空いてるし…」
「いやいや、ミソラはウチの部屋でええやろ?な!?」
「う、うん…」
不安を残しながらも二度目の居候生活が始まりました。
◆
うん、なんでこうなったのかさっぱり分かりませんね。
「しゃーないな、次はウチが代わりに教えたるわ」
「ホント、ナチュラルに心読むよね」
呆れながらも考えてしまいました。私にもこんな力があれば、コウヤ君の心も…って。
「そんな良いもんでもない」
「ごめん、そうだよね。昔そのせいで悩んでたんだもんね」
「それもあるけど…」
歯切れの悪い言葉の後、悩む間を置き、
「さっき、アイツの心を見たんや…」
今までの会話の内容も飛ぶ程の内容を聞かされました。私達が押し黙る中、水滴の落ちる音だけが妙に響きました。
美空「え!?ここで終わり!?」
レイコ「年内最後の更新やからな。引きっちゅうのが大事なんや」
美空「そんなメタは考えなくて良いから、はやく続きを教えてよ!!」
レイコ「待てや!!そんなことゆうて作者殺す気か。今回は閑話休題ってことで入浴サービス回やからこれで良いんや!!」
美空「…今回メッタメタだね」