第68話 思わぬ再会
『え?コウヤちゃんが?そんなはず…はい、彼の意識が戻り次第連絡します』
『竜と女神』のベッドで目を覚ました時、俺の周りには誰もいなかった。外から話している声が聞こえるからおっちゃんやリオさん、それに美空さんもいるようだ。落ちる時、一瞬姿が見えたから驚いたが無事で良かった。肩を撫で下ろす。
だが、無事なら余計巻き込む訳にはいかない。近くに置いてあった紙をメモ代わりにして美空さんに警告する。重い体を動かし皆にバレないように窓から戦場へと出る。
「休憩は終わりだ。ラスタだけは絶対に俺が倒す」
俺の嫌いな「死ぬ覚悟」を決めて再び翼をはためかせた。
◆
「私、行ってきますっ!!」
「やめろ、嬢ちゃん。危険過ぎる」
「そんなの、コウヤ君だって同じですっ!!」
「嬢ちゃんだって気付いてんだろ?その手紙…自分に書かれたものだって」
わざわざメモは敬語で書いてありました。それは私への言葉と伝える為。でもそれで伝わる関係…お互い敬語を使う関係のままなんて。
「私嫌なんです!!弱いと思われたままコウヤと…離ればなれになるなんて」
「お、おい!!待て…っつたた。クソ!!」
リュウジは追いかけようとするが、手が届く前に倒れ込んでしまった。リオが慌てて駆け寄るも、リュウジは痛み以上に苦い顔をする。
「まだ傷が治ってないわ。どうしたの?そんなに取り乱して」
「約束があんだよ。守らなきゃならねぇ約束がよ」
大きな握りこぶしをまっすぐ床に叩きつけた。悲痛に鳴り響く轟音にリオも何も言えなくなった。
◆
白銀の鎧を纏い、空を飛ぶ鋼也は憎むべき敵の存在へとまるで何かに急かされるように加速し続けた。向かい風をも切り裂くような激しさだが、その存在を感知する者はほとんどいない。
「…っ!?」
突然の狙撃に避けきれず、あろうことかトライアングルフォース本体である左腕の装甲との接触点に被弾し、鎧をはじめとした武装が消え去って行く。翼も例外ではなく、元の飛行スピードもに相まって空へと放り出された。ギリギリの所で《加速する槍》を出現させ、落下スピードを弱めるが墜落は免れなかった。
痺れる体を力任せに起き上がる。が、完全に立ち上がる力はなく片膝しか立たなかった。
『…哀れなもんだな。魔王を封印した最強の魔物ハンター達の一人息子が、一撃かすっただけでこのザマなんてな』
「…っ!?」
耳を疑った。ソウタの声がずっと追っていた敵の存在から聞こえたのだ。
『お前と話がしたくて撃っちまったよ。まあ避けてくれたお陰で好都合だ』
「ソウタ、お前!?」
『前みたくまた一戦、やろうぜ?』
異形をなしていたソウタの銃は早速鋼也の額へと照準を合わせられた。鋼也は歯軋りをしながらも立ち上がり、トライアングルフォースのネックレスを握る。と同時に銃声が鳴り響く。弾丸は鋼也の脳天ではなく手元へと正確に撃ち込まれた。
『いきなりソイツを使うのは酷いんじゃねぇか?』
「くっ…」
ネックレスは弾かれ、放物線を描いて鋼也の後ろに落ちた。
「…お前、ソウタじゃねぇな」
『くっくっく、なら俺はなんだ?教えてくれよ、コウヤ』
「お前は…俺だ」
ソウタは固まり、またも「くっくっく」と笑い始めた。
『傑作だ。面白い答えだな』
『ならコイツにも聞いてみるか?』そう言って持ち上げられた手には、ぐったりとうなだれたレイコの腕が握られていた。
「…コウヤ?ソウ、タが…」
レイコの瞳に光はなく、言葉もたどたどしい。ソウタはその姿を見てニヤリと笑う。
『レイコが俺に『相棒』として協力してくれるって言うからよ。人質になってもらったんだ』
「お前っ!!」
拳だけでなく腕全体を力む。先程までの体の不自由さなど怒りで吹き飛び、前に一歩踏み出す。
『動くな。コイツが大事ならな』
しかし、ソウタの左手によって制止される。悔しげに止まる鋼也を見て更に口角を吊り上げる。
『そうそう、大事って言やぁ、この体の主が大事にしてんのは──』
「黙れ!!」
叫ぶと同時に殺気を放ち、言葉を遮る。
「それをお前の口から言うんじゃねぇ!!」
『はっ、もうとっくに化け物の癖に。人間の気持ち分かった気になってるなんてな』
ソウタの表情も余裕のある嘲笑から本能的に牙を剥く怒りへと移り変わる。
『それこそ傑作だ』
冷たく言い放ち再び禍々しく変貌した銃を構える。
書き貯めていた分が終了したので(はやい)今回からまたギリギリまで書いてます。その切羽詰まった状況が作品に反映されると良いな(願望)と思っておりますので。まだしばらくお付き合いいただけるとありがたいです。




