第67話 奔走
「まったく、何でこう男の子っていうのは無茶しちゃう生き物なのかしらね」
眠ったままのコウヤ君をギルドのベッドに寝かせると、リオさんは腕を組んで怒っていました。コウヤ君にもなんでしょうけど、
「面目ねぇ。それでも野郎は野郎の信念の為にはありもしない全力を振り絞っちまう生き方しかできない不器用なんだよ」
胴体に包帯をぐるぐる巻きにしたリュウジさんに対して言っているのが大きいようです。仲間を庇って大きな怪我を負ってしまったようです。それに比べて私は…
「ごめんなさい!!リュウジさん達は大変な戦いの中頑張っていたのに、私はただ見回りしただけでコウヤ君も守れなくて」
「もうっ!!一人で考え込むの止めなさい。私が見回りをお願いしたんだし、この子は自分で勝手な行動して怪我しただけよ。今までさんざんヤンチャしたツケが回ってきたのよ。そう笑ってあげなさい。その方がコウヤちゃんも喜ぶから」
頭をポンポンと軽く叩かれ、リオさんは励ましてくれます。それでも色々と考えて黙り込んでいると、電話が鳴りました。
「え?コウヤちゃんが?そんなはず…はい、彼の意識が戻り次第連絡します」
医務室を出て電話を取ったリオさんの驚く声の中にコウヤ君の名前があり、私とリュウジさんもつられて外に出ました。
「どうしたんですか?」
「それが…コウヤちゃんらしき人影が今さっき人に怪我をさせたって」
「そんな…コウヤ君はずっとここに──」
そこまで言いかけて嫌な予感に従って医務室のドアを開けると、案の定窓から風が入り込みカーテンを大きく揺らしていて、
「あのバカ」
「本っ当にバカなんだから」
ベッドの上には置き手紙があり、
『追いかけないでください』
敬語で書いてあるのは私に向けてってことです。どうやらコウヤ君はどうしても私を遠ざけたいようです。
◆
「…っ!!どこや、どこに行ったんや!?」
横浜のビル街を駆けるレイコの顔には焦りが生じていた。旧友を探しに行く為とは言え、倒れたもう一人の旧友を中途半端に見捨てることになってしまったことに後悔し始めている。
(でも、もうコウヤにはミソラが付いとる。でもソウタには…ウチが付いてやらんと)
ギルドからの通信すら無視して、ただ走り続ける。
(でも何で…何でウチはそんなにソウタに構うんやろ?何をそんなに焦っとるんやろ?何で…何で…)
必死に探せば探す程レイコの頭には疑問が浮かび、その度に一挙一動を遅くさせる。それに苛つき一度立ち止まる。目を瞑り、深く息を吐く。
(そんなん、決まってるやろ)
「相棒があんな顔してたら、一発殴って目ぇ覚ましたるんが相棒の務めって奴や!!」
「それは嬉しいな。なら相棒の為に一働きしてくれよ、なぁ」
突然頭上に現れた何かにレイコは意識を刈り取られ、その者の腕の中に倒れる。
「相棒」