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トライアングルフォース~都会と魔物とラブコメと~  作者: INONN
第3章 実践昇華~竜と女神と戦乙女と~
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第59話 魔の逆転劇

 「…しょうがない人だ。ボクがせっかく寛大な心で自分からボクのモノになる機会を与えているというのに。そんな分からない人には教えてあげよう。ボクの本当の強さを!!」


 各所に傷痕を持つ煌治が埃一つ被っていない美空に手をおおっぴらに広げ自信満々に叫ぶ。これほど場違いな発言があるだろうか、と美空が思うほどだ。


 「ムログ、ボクに力を貸せ!!」

 『へっへっへっ、しょうがねぇなぁ。相手はあのメスかぁ?いいじゃねぇかぁ』


 煌治の声に応え得体の知れない声が聞こえた。しゃがれた声が脳内に直接、不快感を与える。この感じは、


 「魔物!?」


 いつか、武演祭を襲撃したガレンの時と同じような倦怠感があった。その元は何やら黒いオーラを放っている煌治だった。


 『その呼び方は気に食わねぇなぁ。俺様をそこらの雑魚と同じ扱いたぁ、さぞかし強ぇんだろうなぁ?いいかぁ、俺様は貴様らが言うところの魔人って奴だぁ』


 魔人───魔物の上位種。美空も知識はあるが実際に戦ったことはない。ここしばらく戦ってきた美空だが魔人の実物を見るのは武演祭の一回きりだ。


 『教えてやったところでここで死ぬがなぁ』

 「何を言っているんだ。コレ(・・)はボクが貰うと言っただろう」

 『それならそれで何かあっても文句はねぇなっ!!』


 ムログと呼ばれた声が語尾を強めると煌治の姿が美空の前から消えた。「ど、どこに!?」と見回しても姿は見当たらない。まさかと考えた理論は現実となった。


 「動くなよ。キミはボクのモノなんだから」


 一切気配のなかった背後に煌治が付き、杖を首筋に当てる。座標の定まっている瞬間移動は定まらないそれに比べて格段に魔法としての難易度は上がる。それを煌治が──カードの力とは言え──使えるはずはない、と選択肢から排除していた。しかし、今の煌治には魔人が憑いているのだ。そこまで考慮して然るべきだった。

 迅速に状況を整理し美空は煌治を睨む。


 「この期に及んで、まだそんなことを───」

 「状況を理解できてないのはキミの方さ。ムログの力を得たボクに敵はない。それでも倒したいと思うなら倒せば良いさ。その後、あの愚民共がどうなるか分からないけどね」

 「っ!?」


 自らの杖を怒りに任せ振るい、煌治に棒術を繰り出した。が、撲った煌治は影で一撃はその影を何事もなく通り過ぎた。


 『良かっなぁ、メス。影を通っただけで激痛が走るぐらいの芸当も俺様にゃぁできるが、ヤんないでおいてやったぜぇ』


 背後に移る前の位置に煌治は戻り、姿は見えないがムログは美空を嘲笑う。


 「コウヤ君達に、何をしたんですかっ!?」


 声にいつもの流れるような美しさはなく、重々しくドスの効いた物だった。それに臆することもなく煌治はつり上がる口角を隠そうともせず応える。


 「戦を司る本(ルールブック)はキミも見ただろう?キミの読み通り、アレの三行目に少し細工をしてね。『以下の文書をその同行者共々従い、勝敗の判定は逆転する』とね」

 「っ!?」

 『おいおい、喋り過ぎだぞ。コレはコレでそそられる絶望の表情だがな、ヒッヒッヒ』

 「ムダに賢いキミならもう分かっただろう?ボクが仮に負けるようなことがあればあの愚民共もろともバツを受けるが…」

 (私が負ければ皆が巻き込まれることはない)


 見える物全てが絶望のように思え、美空はうつむき、あろうことか杖を落とした。それを見た煌治はすかさず《植物》属性の魔法を使い、美空の足元から植物の蔓を発生させ体を絡め取った。十字架に張り付けにされるキリストの如く蔓に高々と吊り上げられても顔はぐったりとうなだれ、煌治も蔓も見ようとはしなかった。

 煌治もそれを戦意喪失と捉え、整った顔をまがまがしい程に歪め、


 「『 散乱弾(グープ・パトローネズ)』!!」


 魔法を発動し、杖から何百発もの弾丸が美空めがけ射出される。使用者の集中力の影響があり命中率は高くないが、数があれば当たるもので、頬等をかすめ、その度に美空を激痛に襲わせる。


 「ひゃっはっはっ、良い気味だ。ボクをさんざん見下したバツさ。女は女らしくボクにこうべを垂れて尻を振っていれば良いんだよっ!!キミもそう思えてきただろう?だから何もせずボクにやられ、ボクのモノに自らなろうとしているんだろう?そうだな!?そうだと言え!!そうすれば、別れの挨拶ぐらいさせてやるさ。ほら言うんだ!!」


 煌治の怒りと共に魔法の弾丸の威力が増す。それでも美空は時折痛みに反応するだけで何とも言わなかった。

 代わりに、鼓膜を引き裂くような火花の飛び散る音が突然、煌治の左方からした。それが収まると、


 「自分の、心に、従えぇぇっ!!」


 星芒の剣と翼を携えた白銀の鎧が、煌治を───その奥のモノを一点の曇りもなく射るように見ていた。



 「おい、何か様子がおかしくないか?」


 ソウタは戦闘の様子を映したモニターを見て呟いた。


 「今更何を言っている。明らかにおかしいのは馬鹿が見ても分かろう」

 「ん?なんかおかしかったんか?」

 「…訂正しよう。馬鹿には分からなかったようだ。だが、これは由々しき事態だ」


 カノセは左に目をやると、鋼也が再度セイガに掴みかかっていた。だが、その目だけは違い、真に怒りに満ちていた。


 「…何をした?」

 「ふん、もう遅い。煌治様の勝利は確実な物となった。あの娘が闘技場に入った瞬間にな。それに、あのご様子では誰も今の煌治様を止めることはできん」


 殺意剥き出しで胸ぐらを掴まれてなお、それを嘲笑うかのように口角を吊り上げる。

 埒が明かないので、セイガを離しカノセに振り返る。


 「カノセ、いくら闘技場でも違法なことがあれば」

 「無理だ、その理屈は通らん。例え法外な手段を使い不正を働いていたとしても最初に確認しているのだ。そこで見抜けねば何をされても文句は言えん。それが今の法だ」

 「魔人が入りこんでも、か?」


 鋼也、セイガ以外の四人は最初何を言っているのかが分からずぽかんとしていたが、ようやくカノセが聞き返した。


 「何を言い出すのかと思えば…そんなこと、何を根拠に」

 「さっき、煌治の影から何かが出てきた。それからあいつは目を見張るほど強くなり、声もあいつと違うものが聞こえた」

 「マジ、なのか?」


 ソウタが恐る恐る尋ねると鋼也は静かに頷いた。


 「ど、どどどないすんねや!?いくら美空かて一人で魔人に勝てる訳ないやん!!」

 「…前例はない。どうなるかの保証はできない。が、それゆえお前の好きにしても、対処さえできれば咎められることもないだろう」

 「ありがとう…おっちゃん!!おっちゃんならアレとも連携取れるよな?」


 カノセに礼を言い、リュウジの方を見る。真剣な眼差しに、鋼也が何をしようとしているのか、リュウジは言葉はなくとも理解できた。


 「連携っつってもお前に合わせるだけだけどな」

 「十分だ」

 「どないするつもりや!?」

 「魔人は闘技場の中なんだろ!?試合中は部外者の侵入は不可能なんだぞ」

 「…んな時に言うのもなんだけど」


 首にかけて肌身離さず持ち歩くソレを掴み、含みのある笑いをして、


 「不可能を可能にしてこそ、チート主人公だろ?」


 ソウタが聞き終わると同時に闘技場の入り口に飛び込む。入り口のドアは開いているが契約による魔法の障壁によって侵入者を阻む。 鋼也とてその対象外ではない。障壁に正面から突進し、火花やスパーク、衝撃が飛び交う。


 (初めて相対したけど何とかなりそうだな。これを使えば、だけど)


 光り輝くネックレス───トライアングルフォース───を見て忌々しく思う。


 (嫌いなんだけどな。どうしても使わなきゃいけないなんて、まだ俺は弱いんだな)

 「トライアングルフォース、は──」

 (なんだ、これ。闘技場()の様子?でも…)


 ソレを発動させる言葉を遮るように鋼也の頭にイメージが流れ込む。頭を抑えその状況を整理する。迫る派手な魔法、不快感を与える声、突き付けられる現実、希望のない深き絶望、物理的苦痛に勝る虚無感…だが重要な人物が見当たらなかった。


 (そうか、美空さんの視点か…美空さんも苦しんでるんだ唯一こんな約束ぐらいしか俺は守れないからな。渋ってる場合じゃない)


 覚悟を決め、再び叫ぶ。


 「トライアングルフォース、発動!!」


 コールしてからは鋼也には自分自身の事であるが干渉はできない。そのラグはわずか10秒。勢いは付けてあり闘技場には突入できるが、


 (それだけじゃだめ、だ。一言、一言だけ。伝えないと!!)


 トライアングルフォースの力が全身にみなぎり一気に障壁との均衡を破り、飛び出す。


 「自分のッ!!


 ありったけの声量と思い、


 心にッ!!


 正気を保てる時間を使い、


 従えぇぇッ!!」


 美空にぶつける。

 断片的な記憶から美空に足りないものが鋼也には不思議と分かった。本能の赴くままに、自分が真にやり遂げたいことをする、ということだ。彼女は賢い故、戦う時も無意識に考えを巡らせ、固まってしまっていた。


 (俺に必要なことだったんだけどな。皮肉なもんだ。でもお互い補いあってこそ強くなれる。あの二人みたいに。だから、俺は美空を助ける)


 そう思う頃には鋼也の意識は奥深くへと押し込まれていった。白銀の鎧を纏う鋼也の目は冷たく輝き、煌治を苛つかせ、重く上がらなかった美空の頭を持ち上げ、希望を見せるのだった。

鋼也「…」

美空「…」

作者「ん?どしたの二人共」

鋼也「なんつーか、こういうの(・・・・・ )が好きなんだなぁと気付いてちょっと引いてる」

作者「…え?」

美空「最初から私をああする(・・・・)つもりで作り出したんですね!?最低です、見損ないました」

作者「いや、誤解があるようだから言うと、元々この話は考えてなかったんだよ。3章足りないなと思って付け足したもので流れに身を任せたらこうなったけど、正直あんまり好きじゃない」

鋼也「マジレスかよ、つまんねぇな。『実は女性陣全員触手で絡めとるつもりでしたぁ』とでも言えよ」

作者「そんなこと言う奴はホントにそうしてやる」

鋼也「ちょ、まっ!?」(触手に四肢を絡めとられ大の字)

作者「さぁ美空さんにプレゼントだよ。煮るなり焼くなりご自由に」

美空「ゴクッ…」

鋼也「美空さん!?ちょっと待って!?」

美空「ちょっとだけですから、そうしたら解放してあげますから」

鋼也「アーッ!!」

作者「実はこっちの方が好きです。次回もお楽しみに」

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