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トライアングルフォース~都会と魔物とラブコメと~  作者: INONN
第3章 実践昇華~竜と女神と戦乙女と~
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第58話 見た目の派手さなら五分

楽しみにしてくださっている皆様、結構更新が遅れてしまい申し訳ありません。

 「この決闘は俺が見届け人をやらせてもらう。何か不正があった場合は即刻本部に突き出し豚箱送りになる」


 いつもの服装に喋り方、それなのにリュウジさんはどこか違う厳格な雰囲気を出していました。

 私の隣にいる煌治さんはつまらなそうな顔をしています。きっと、自分が捕まる(そんな事になる)はずがない、と思っているのでしょう。

 その煌治さんがリュウジさんに戦を司る本(ルールブック)を渡し、その本は開かれました。


・寿煌治対──ミソラの戦いは1対1の個人戦とする。

・双方ともに、相手を撃破することで勝利とする。


・双方、敗者は勝者の命を忠実に執行するものとする


 戦を司る本(ルールブック)に書かれていることに不自然な箇所は見当たりませんでしたが、


 「この2行目と3行目の間空白はなんですか?」

 「そのような些細なことは良いではないですか。あくまでこの決闘は形だけのも───」

 「いいから答えろ」


 煌治さんの言いぐさに苛立ったのかリュウジさんは胸ぐらに掴みかかり迫りましたが、すぐに護衛の黒スーツの人が寄って来たので放しました。

 乱れた服を整えながらリュウジさんの目も見ず答えました。


 「ボクとこのミソラさんとの記念すべきこの戦いの為に、今はほとんど使われていない紙製の物を用意して、ボク自ら執筆したが、ペンがボクの達筆さについてこれずあろうことか誤った字が書かれた。だから影響が起きないように魔法で消して字の効力をなくしたんだ」


 確かによく見てみると魔法がかかっているのが分かりました。「むしろ、そちらの手間を煩わせなかったのだから、感謝して欲しいぐらいなんだけど」と付け加えたのは気分の良いものではないですが。

 昔、戦を司る本(ルールブック)は紙の物が主流だったようですが魔物ハンターの世界にも電子化の波が押し寄せて、パソコン等と同じように文字の削除も簡単になり完全に電子版が独占したそうです。


 「…本当にそうなら問題はなかろう。では署名を」


 戦を司る本(ルールブック)は対戦者の本名を書くことで効力を発揮して法的拘束まで影響してきます。既に煌治さんは名前を記入していたので私が署名するだけでした。手が震えながらも書ききりリュウジさんに再度本を渡しました。


 「では、闘技場に移動する」


 いつもは行くことのないギルドの裏に規模で言えば本部の物と勝るとも劣らない闘技場がありました。


 「…こんな所にあったんですね」

 「これも家などに使われる空間拡張魔法だ。実際にこれ程の敷地がある訳ではない」

 「言ってくれるな、本部の人間は。これでも土地買うのと同じくれぇ金かかってんだぞ」


 教えてくれたカノセさんに呆れるリュウジさんは闘技場のシステム盤に戦を司る本(ルールブック)を読み込ませ中に通じる門を開きました。


 「こっから先はお前達二人しか入れん。戦を司る本(ルールブック)の決め事を真に全うする覚悟があるならば入れ」


 余裕綽々たる態度で煌治さんは先の見えない門に進みました。一歩を踏み出すのに恐怖から体を小刻みに震わせていると、


 「大丈夫ですか?怖いなら止めても良いんですよ?」


 震える私の肩を落ち着かせてくれた手はコウヤ君の物でした。


 「…いえ、戦うって決めましたので」

 「なら行ってこい。行って自分の気持ちを突き通してきてください」

 「はい!!」


 やっぱりコウヤ君は頼もしいですね。それに少しですけど、敬語を使わないで話してくれました。小さいことですが私の背中を押すには充分過ぎる力でした。進んでから、「これで良かったか?」、「上出来や」等と言う会話が聞こえたのは残念ですが──天法院美空、行きます!!



 ギルド『竜と女神』の闘技場は本部や学園のそれとは違い観客席を内臓しておらず、観客は外のモニターからしか戦闘を見ることができない。鋼也達、そして煌治のお側付きであるセイガも例に漏れることなくモニターを眺めていた。


 「にしても本当に大丈夫か?ミソラさん」

 「なんやソウタ、ミソラがあんなボンボンに負ける言うんか?」

 「そうじゃないけどさ、陰謀の匂いがするんだよ」

 「流石、陰謀好きは違うわなぁ。好物の匂いまで嗅ぎとって」

 「ソウタがそう言うなら間違いでもないんだろう。で、何企んでんだ?あんたらは」


 鋼也は後方のセイガに目を向ける。疑惑をかけられてなお、目を反らす訳でもなく淡々と、


 「その内分かる」


 それを述べるだけだった。鋼也は「そんなことだろうと思ったよ」とため息を吐き、モニターに視線を戻す。


 「ま、良いさ。美空さんは姑息な手にやられる程やわじゃない。なんせ俺の(・・)パートナーだからな」

 「…本人いたら大歓喜だな」

 「せやな」

 「むしろいなくて良かったんじゃないか?鼻血や気絶でも済まない予感がする」

 「お前ら、何こそこそ話してんだ?」


 後方で、に苛立ち鋼也は振り返り尋ねる。べ、別に一人仲間外れで会話に加わりたかったんじゃないからねっ!!by天文字鋼也、だそうだ。

 三人はピタリと会話を止め、ソウタが誤魔化す。


 「あいつがムカつくから『コウ』って名前に付く奴が全員蒸発しないかなって」

 「俺も死ねと?」

 「それについてはまったく気付かなかったが、私は名案だと思うぞ」

 「ちょうどええやん。ろくでなしに加えて腐れ外道も完全消滅や」

 「くだらないこと言ってねぇで試合見てやれよ」


 荒々しい口調でも美空の為を思って怒っていることが分かり、旧友三人は静かに笑い、今度こそモニターに頭を上げた。



 「では、私から行かせてもらいます」

 「レディファーストは紳士の嗜みで───」

 「『激流の意志(ウィールストリーム)』」


 煌治の言葉を遮り白く輝く杖───《白鳥の翼(レイオブスワン)》を横に構え、先に付く青い結晶に浮かび上がる魔方陣から名の通りに激流を放つ。

 喋っていた煌治の口に水が入る等のレベルではなく、体全てを飲み込まれた。


 「水も滴る良い男ってことでこれくらいは(・・・・・・)許してくださいね」


 鋼也譲りの煽り文句を全身ずぶ濡れの煌治にこれ以上ない笑みを繰り出す。


 「…ふ、ふふ。これは恐れいったよ。流石はボクが(・・・)見込んだ女性だ。だが、『雷龍の咆哮(トールインパクト)』!! 」


 煌治は歪んだ笑みで本───カードケースから杖を取り出し、杖で本をなぞり魔法カードを読み込ませ電撃の龍を放つ。


 「ボクもやられっぱなしでは格好がつかないからね、本気で行かせてもらうよ」


 台詞や魔法の派手さから煌治にとって渾身の一撃であることが伺える。

 しかし、美空としては、


 「拍子抜けですね。ソウタさんの方が強力でしたよ。『聖照の加護(ホーリーシールド)』」


 武演祭の時と同じ魔法の組み合わせだが、その時以上にあっさり、『雷龍の咆哮(トールインパクト)』を壁がクラッカーの紙紐を弾く如く簡単に防いだ。魔法の主も片やバテバテ、片や澄まし顔である。その事実に煌治は歯ぎしりをして美空を睨む。


 「おのれ、女の癖に…ボクに楯突くなんて…そう簡単に許してなる、ものか!!」


 ひねくれた怒りを吐きながら懐から半透明なカードを取り出す。



 「あれは…MPカードか」


 場外で観戦しているカノセがそれを見て呟く。


 「なんや?それ」

 「授業聞いてなかったのか?通常魔法と同じMP量で発動できて自分のMPを回復させるカードだ」


 幼なじみの疑問にソウタは呆れながらも解説する。


 「そんなん最強やん。なんで皆使わんの?」

 「MPを人に渡す技術は極めて難解だ。できる職人が限られているから高いんだよ。相場なら1枚一万はする。しかも使いきりときたもんだ」

 「ぼ、ぼったくりや!!」

 「そう、だからめったに使われる物じゃない。が、あの煌治ボンボンはじいちゃんの金に物言わせて買い集めたんだろうよ」

 「んな奴に負けんなよー!!ミソラー!!」


 音声が届かないがせめて気持ちだけでも親友に届くようにと声を張り上げるレイコとは対照的に鋼也は黙ってモニターをじっと見つめていた。



 「まだまだ、『次元飛翔竜(アセンションブルム)』!!ボクをこけにする奴を倒せ!!」


 回復したMPで放った魔法は『雷龍の咆哮(トールインパクト)』と同じレベルに位置付けられる強力な物だ。その姿は名の如く透明な竜が牙を剥き出して美空に襲いかかろうとしていた。杖を構え直し再び防御しようとする美空にとって予想外の事態が起きたのだ。目の前の竜が消えたのだ。元々透明で認識しづらいものだったが見失った訳ではなく本当に跡形もなく消え去り姿を追えなくなったのだ。


 「高次元とこの世界を行き来して攻撃する魔法、と言った所でしょうか」


 背後、側面、真上等と四方八方から飛び出してくる姿無き竜を的確に防御魔法の盾で弾き冷静に分析する。


 「そう、我が一族に代々伝わる伝説の〈空間〉魔法さ。この魔法でもその一握りに過ぎないけどね!!」


 魔法の仕組みがバレてなお、偉そうに自慢する。


 「そうですか、ならこれでどうです?」


 美空は氷の波、言うならば氷河を向かってくる竜に撃つ。しかし、『次元飛翔竜(アセンションブルム)』の勢いは止まらない。


 「無駄だと言っているじゃないですか。潔く負けを認めた方が────」


 哀れみを込めた煌治の言葉を遮ったのは、硬い物を切り裂く衝撃──それによる音と風圧だった。

 見れば、『次元飛翔竜(アセンションブルム)』の姿はどこにもなかった。高次元に隠れている訳ではない。存在がなくなっていた。


 「ば、ばかな。〈空間〉魔法を打ち破るなんて。ボクの一族しか使えない最強魔法のはずじゃ」

 「その時点で矛盾が生じてますけどね。あなたがたった今使ったカードを使えば誰でも今の〈空間〉魔法は使えると思えます。あなたのお祖父様以外のご先祖様は存じ上げませんが、少なくともあなたには〈空間〉の、いえ魔法の適性があるようには見えません」


 美空の全てを見透かすかのような眼差しに煌治は怒りに歯を軋ませ、目を尖らせる。


 「種明かしでもしましょうか。〈空間〉魔法は少なからず他の魔法の属性を受けやすいそうです」

 「何故そんなことをっ!?」


 怒りから驚きへとコロコロと表情が変わる煌治に内心呆れながら説明を続けた。


 「何せ校長が自身の武勇伝や実力を自慢(ふきょう)したいと考える方だったので。話を戻すと、その特性を利用して〈氷〉属性を大量に与え、断ち切りやすい実体を与えた所で〈晶〉属性の魔法、『 黒曜の刃(ブラッシュブラック)』を使って斬らせていただきました」


 「さて、まだ続けますか?」と付け加え煌治を見る。その視線は彼女の怒りではなく自らの意志を示す真っ直ぐ、一点の曇りもない。対して煌治は自身の意に背く現実を認められないでいる。目を吊り上げ頬は痙攣し、杖を握る手も力んで見える。


 「…しょうがない人だ。ボクがせっかく寛大な心で自分からボクのモノになる機会を与えているというのに。そんな分からない人には教えてあげよう。ボクの本当の強さを!!」

作者「あー最近忙しくて全然書けなかったなー」

鋼也「…嘘っぽくてホントなのが腹立つ!!」

美空「でも今回は前もって忙しくなることが分かってましたよね?」ゴゴゴゴゴ

作者「…ハイ」しょぼん

美空「それならいくらでも対応はできたのでは?」

鋼也「美空さんから覇気が見えるっ!!」

作者「…スミマセンデシタ」

美空「謝罪は態度で表して欲しいものですね」

作者「分かりました何でもします」

鋼也「あ…」(察し)

美空「今、何でもって言いましたね?では、今年中にコウヤ君とのイチャイチャ回をお願いします!!」

作者「え、今ストーリーのとちゅ──」

美空「どうせ私が煌治さん倒してすぐ終わりじゃないですか。できますよ」

鋼也「あーっ!!フラグだ、作品的な意味でもストーリー的な意味でも」

作者「《掟やぶり(フラグブレイカー)》さん何とかして」

鋼也「さて、長くなったが次回はどうなることやら。お楽しみにー」スタスタ

作者「無視しないでぇ~!!」(鋼也に救いを求めて手を伸ばす)

美空「書くまで逃がしませんからね?」(それを阻むように作者を押し潰す)


出来ればやりたいですが数回の更新で区切りが付けば、ですね。

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