第46話 辛い夢
気付いたら俺は真っ暗な世界にいた。どこまで進んでも消えない闇、まさに常闇の世界だった。
『流石だなぁぁ~本っ当に、流石あの二人の倅だぁぁ~』
頭の中に直接聞こえてくる声を俺は知っていた。小さい時一度だけ聞いたことのある。その声と共に甦ってくるのは忌々しい記憶、それを思い出すと今でも苦虫を噛み潰したような思いになり、声を荒らげる。
「何のマネだ!?どうしてこんなところに俺を呼び出した!?」
『ああ!?口の効き方考えろよ、お前は俺には逆らえねぇんだからなぁ。それに…』
声が途切れる代わりにその主が現れた。ぼろぼろの和服を着てその赤黒い色と同じ肌をした奴───ラスタだ。
「今日はお前がデカブツを倒せるようになったことを讃えに来てやったんだぞ、同ぞ「黙れっ!!」んあ?どうしたぁ、同族」
「くっ、黙れ黙れ!!」
俺が必至になって叫ぶとラスタは面白がり「いいねぇ、もっと苦しんで見せろ」と言い指をパチンと鳴らす。それに反応するように俺の周りを記憶───血塗られた暗い後悔の記憶の断片的な映像の数々が漂う。見まいとするもラスタの声と同じく頭に直接映り、目を瞑ろうが、顔を隠そうが過去がより鮮明に甦る。
「くっ、来るな!!」
「そんなこと言うなって、せっかくお前なんかの為にゴミみたいなデータ集めてやったんだぁ。もっと楽しませろよぉ」
「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ来るな来るな来るな来るな来るな来る…来──」
「──く…ウヤ…ん…コウヤ君っ!!」
俺の必至の叫び声を掻き消すように強く名前を呼ばれ目を見開く。見知らぬ白い屋根を背景にする良く知っている顔が見え安心できた。
「こ、ここは…」
「りゅ、『竜と女神』の、救急治療室で、コウヤ君がなかなか起きなくて。それで、それで…」
元から涙目だった普段からは想像もできないくらい泣き崩れてしまった。どうすれば良いか分からず「ごめん」と小声で謝る。
「謝らないで下さい。謝らないといけないのは私の方なんです。身勝手な理由で疲れているコウヤ君の意識を刈り取ったりして。最初はすぐに起きるだろうと甘く見ていたのに中々起きなくて、魘されてすごくつらそうにしているのを見ると…だから、本当にごめんなさい!!」
必至に謝ってくる美空さんを見て大切に思ってもらっていることを再確認して震えている美空さんの背中を擦る。すると顔を上げてくれたので少しぎこちなかったかもしれないが笑うと落ち着きを取り戻してくれた。さて、
「何か文句があるなら来いよ。いるんだろ?カノセ」
人の気配を感じた場所───この部屋の扉の向こう側にも聞こえる大きさの声をかけるとその扉は開かれ凛々しい顔立ちの少女───カノセが入って来た。
ミニコーナー もしもシリーズ②
もし異世界転生物だったら…
トライアングルフォース~異世界と魔物と異能力と~
普通の女子高校生、天法院美空はひょんなことから異世界に転生しチート──魔法最強ステータスと自分好みの戦士式神──を手に入れた。無双してイケメン式神とイチャイチャしてついでに魔王も楽々撃破なぶっ壊れ展開。
こんなんでどうですかね?こっちの方が美空さんは喜ぶかも(笑)終わったらスピンオフとか気取って書いてみたいです。




