第4話 再会
しばらく美空視点です。
赤い空…そこかしこに転がる血塗れの死体…そしてそれらを食らう化け物…その光景は見る者全てに恐怖を与える。
まさに地獄そのものだった。
そんな中1人の少女が泣いていた。少女の目の前にはその両親と思われる死体が見るも無惨な姿で倒れていた。少女の付近にはもう化け物の姿はなかった。少女の周りの化け物は全てある者によって倒されていたのだが少女が泣き止むことはなかった。
その時、向こうの赤い空に少女は見た…翼の生えた人型の化け物の姿を…それが聞く者を威圧し遠ざけようと笑いをあげているのを。
◆
こんにちは、天法院美空です。
昨夜はとても恐ろしい夢を見てしまいました…夢だったのでしょうか?夢なので朧気ですが妙に真実味があって…何故か実際にあった過去の出来事のようにも思えました。でもそんな訳ないですよね。
さて、私が今何処に居るのかと言うと…昨日と同じく、横浜のビル街にいます。コウヤ君の事、そして昨日の化け物の事が気になり休日であった為、朝食を頂いてからすぐに出て来ました。もしかしたらまたコウヤ君が来るかも知れない、そう思ったのですが…
「はぁー、流石に来る訳ありませんよね」
そう都合良くいきませんでした。多少がっかりしつつもうっすら気付いてはいたのでショックは少なく今日は帰ることにしました。コウヤ君に関する情報は少なく、一度会った場所で待つ他に対面する術がないというのはもどかしいです。
すると何処からか聞き慣れない不思議な音──火花の散るような炸裂音が聞こえて来ました。物陰から音のする方を覗き込みました。するとそこには昨日とは違うそれがいました。
昨日のより体は大きく、目もちゃんとあり、言うならばティラノサウルスのような見た目です。ただティラノサウルスと違うのは頭にある2本の真っ直ぐな角と体が青い所です。
…何てまた冷静に分析しているとそれが動き始めやはり私が見つかってしまいました。こちらを睨んで唸り声をあげているそれ。ですがもう本当に怖くありません。何故ならコウヤ君に貰ったお守りがあるからです。バックに忍ばせていたお守りを握りしめ目を瞑り、考えるのはやはりコウヤ君の事でした。一回しか会ったこともないのに彼の事ばかり考えてしまう私もおかしいですね。でも何故だかコウヤ君の言う事は信用できるんですよね…もしかして私、コウヤ君を───と産い恋心を自覚し初め、
「…///」
そんな顔を真っ赤にした私にもお構い無しにそれは襲いかかって来ました。お守りを握る強さを増して、叫びました。
「コウヤ君…助けて!!」
その時、再び現れたのです。誰かは言うまでもありませんよね?白銀の鎧を纏った男の子。そう、コウヤ君です!!
「コウヤ君!!来てくれた…んですか」
コウヤ君はそれを弾いてから一瞬こちらを見ましたがそのまま無表情で敵に振り返ってしまいました。何故でしょう?昨日はあんなに親しく話してくれていたのに…今はものすごく冷たい眼差しで言葉が途切れてしまいました。戦っているコウヤ君はやっぱり印象が違います。集中力と言うか殺気と言うか、平和な日本で生まれ育った私には到底形容できないコウヤ君の気迫に、戸惑うことしかできません。
コウヤ君はそれと向き合うとそれは立ち上がっていました。また睨んでいました。戦いはまだ続きそうです。
◆
鋼也が向かい合うと魔物の角が青白く光り始めた。鋼也にはそれだけで何をしようとしているか理解できた。次の瞬間、角から雷撃が放たれる。それに抵抗することもなく鋼也はその身で受ける。
すると鋼也の姿は雷撃に書き消されるように跡形もなくなった。魔物が鋼也の姿を探すように見回すが何処にも見当たらない。自分の雷撃で人間が跡形も無く消し飛んだ、と思った魔物は再び最初の獲物…本人だけが気付いていない力を秘めた人間、天法院美空へと向かう。魔物が一歩踏み出した瞬間、縦に切り裂かれ、捕食するどころか次の足を踏み出す間もないまま、光となった。
とどめをさした鋼也は魔物の真上に音もたてずに留まっていた。鋼也の目は冷たく、どこまでも瞳に色を感じさせない不気味さを持っていた。
◆
コウヤ君は一瞬にしてそれの真上に移動して真っ二つにしてしまいました…どうやったのかは全く見当がつきません。それでも、私を助けてくれた…それが何より嬉しくて。
その感情をもって、私はやっと理解しました。
私は彼の事が、好き、なのだと。