第39話 男の性
「で、結局コウヤはここで待ってんのか?」
美空とリオが出て行き店内がむさ苦しく思ったのかリュウジが行き詰まりそうに鋼也に尋ねる。
「んや、とりま美空さんの胸凝視してた男を片っ端からしばいていつものとこ行くから」
「おう、いつになく良い彼氏さんだな」
「んじゃまずはっと」
そう言って鋼也は自分より少し背の高いリュウジに届くように軽く跳ねて上から拳を降り下ろす。リュウジは痛みでしばらく震えてから鋼也を睨み付ける。
「いきなり何すんだ!!」
「奥さんいる癖にJKの胸ガン見してんじゃねぇ、後でリオさんにシバかれるぞ!!」
「お、男の性なんだからしゃあねぇだろ!!つーか、シバかれるって…お前、まさか…」
「勿論チクっといたぞ。帰って来たら折檻確定だな、ザマァねぇぜ」
鋼也がリュウジを嘲笑うと「な、てめぇなんてことしてくれてんだ!!」と叫ぶも虚しく、
「んなことよりいつもの出してくれ、帰って来る前に戻らないといけないからな」
ただ淡々と言った。何か考え事をしているのがリュウジには伝わっていたが言われたように花束を渡し「ったく、どうしてこんな奴に育てちまったかな」と冗談めかして呟くと、
「…おっちゃんに───いや、誰にだって育てられた覚えはねぇよ」
いつものふざけた雰囲気ではなく真剣で、それでいて怨みを含んだそれを発していた。そのまま鋼也は背を向けて歩く。リュウジがしばらく黙り混んでしまったのに気付き流石にはっとして「ごめん、散々お世話になったのにんなこと言ったら罰あたるよな」と雰囲気を和ませて詫びを入れるも振り返らない。その背中にかける言葉もなくリュウジは黙って見送ることしか出来なかった。
◆
花束を持った少年は人気の無い場所───異次元ではなく地球の何処か───に現れる。少年の顔にはその年に似合わない深く哀しみを帯びていた。その視線はある2体の石像に向けられていた。石像にしては相応しくない姿のそれに向かって真っ直ぐ進む。
すぐ傍まで寄ると少年は膝をつき腰を低くする。石像の顔を拝むために見上げた顔からは一筋の雫が滑り落ちる。
「…どうせいなくなっちまうんだったら、もっと丈夫なもん創れよ…10年なんて、早すぎるってんだよ…」
勿論、素直な言葉ではなく自分を保つためのものだった。震える手で花を置き顔を拭うと立ち上がり今度は力強い目で石像を、その奥を見る。そこには何もない空間に黒く大きな穴が開いているような物体があった。と次の瞬間、その穴の表面にひびが入る。
「…っ!!」
全体から見れば小さなひびだが少年は狼狽える。本能的に感じ取ってしまったからだ。ゆくゆくは全てが割れてしまうだろう、と。そして少年は知っている。その時にどうなってしまうのかを。それを考え少年が苦虫を噛んだような表情をすると先程割れたひびから複数の小さな動物のようなものが飛び出して少年の周りを飛翔する。
「…お前らの、アイツのせいで…絶対に殺してやる!!トライアングルフォース発動!!」
そう言って首飾りを取り腕に付けて武装を身に付ける。四方八方から襲ってくるものが全て己のリーチに入るまで待ち、その条件が揃うと同時に剣を横に振るい全てを光の粒子に帰る。武装を解くと少年がそこに来た時のようにカードを2本指で持ち、少し力を入れると少年の姿は一瞬にして消える。別れに残した雫を除いては。
ミニコーナー モブキャラ紹介③
鎮崎信正
二つ名《誇りの武士》
得意技《鎮崎流剣技─斬─》
武演祭の鋼也の一戦目の相手です。鎮崎家は代々剣術で魔物と戦ってきた名門家。そこの長男に生まれた信正は家督を継ぐために真面目に日々精進してきた優等生タイプ。かなりふざけて戦っている鋼也と対称的なキャラをぶつけてみようと思いました。その結果、鋼也にのせられて敗北。裏設定としては決勝にいけるレベルでレイトにも勝てる。五分五分(笑)ぐらいで




