第3話 恩返しとお礼
今回も美空さん視点です。
「あっ、あの…僕は天文字綱也って言います。コウヤと呼んでください。こちらこそ宜しくお願いします」
コウヤ君はしどろもどろで自己紹介をして、
「それで…さっきの事についてなんですが…人には話さないでください!!お願いします!!」
土下座をして来ました。これにはさすがの私も驚いてしまいました…最初のクールなイメージから一転、ぎこちなく話し始めたかと思えば盛大な土下座を繰り出したコウヤ君がおかしくて私は少し笑ってしまいました。それでもコウヤ君は気付いていないようです。
「もし、美空さんが他の人に言いふらすようなことになったら…僕は…美空さんの記憶を書き換えなければなりません。でも…僕はそんな事はしたくありません。なので黙っていて貰えますか?」
最初に下の名前で呼ばれて少しドキッとして後半がよく理解出来なかったのですが…記憶を書き換える!?ふざけて言っているようには見えませんが…
「分かりました。コウヤ君がそこまで言うのであれば私は言いふらしたりしません。それにコウヤ君は私の命の恩人ですからね。頼みの1つぐらい聞かないと。行けませんよね?」
私がそう言うとコウヤ君は唖然としていました。信じられない物を見たような顔をしていました。…私、そんなに変な事、言いましたか?
「…ありがとうございます…お礼と言っては何ですがお守りです。受け取ってください」
私が貰ったのはコウヤ君が今首に提げているネックレスのアクセサリーと、そして先ほど戦っていた時の翼や剣、そして左腕にあった四芒星と同じ形のお守りでした。中心には緑色に光る丸い宝石が埋め込まれていました。
少し傾けて観察していると説明を加えてくれました。
「これがあれば魔物から…先ほどのような奴から美空さんを守ってくれるでしょう」
「そうですか…それならありがたく頂きます」
それを聞くとコウヤ君は自分のネックレスを外して腕に付ける、とネックレスは大きくなりました。そして腰に着けていたポーチからカードを数枚取り出すと腕に付けたネックレスの上に置きました、すると…先ほどと同じように鎧と翼が現れ、そして目で追えない程のスピードで飛びたっていきました。
…1人残された私はしばらく呆然として、もう誰もいない空を眺めます。
今日のことは大切な思い出として、名前しか知らない彼の事を胸の奥に仕舞い、お守りをぎゅっと握りしめて。いつの間にか暮れた日を背に帰路へつきました。