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トライアングルフォース~都会と魔物とラブコメと~  作者: INONN
第2章 学園生活~幼なじみと好敵手と恋敵と~
37/83

第35話 エクスカリバーって言ってもアレじゃないですよ?

そろそろ第2章完結です。

 「さあ、まだやるか?」

 「当たり前や!!」


 本来聞こえるはずのない場所からの声に綱也でさえも驚く。その声は下から、()しかない地面から聞こえていたからだ。

 レイコが落下した辺りに目をやると土煙が晴れ、案の定、レイコの姿はなかった。それどころかレイコが激突した跡すら地面に残っていなかった。

 レイコの行方を探していると綱也の足元が微かに揺れる。と思ったのもつかの間、レイコがいきなり綱也の目の前に飛び出し、大剣で貫く。


 「うおりゃぁぁぁぁぁ!!」

 「危な…そういうことか」


 何とか奇襲を察知できた綱也に後ろに跳んで逃げ、レイコがやってのけたトリックを見破った。


 「んなら、もう使う余裕ないな」

 「余裕がないのはそっちなんだよ、喋ってないで構えろ!!」


 綱也の後ろから武器を長いジャックナイフに切り換えたソウタが斬りかかる。綱也は紙一重で避けるが髪の先が少し切れる。


 「何っ!!」

 「俺に肉弾戦が出来ないとでも?」


 ソウタの一撃を避けたまでは良かったものの綱也は二人に挟まれる形になってしまった。


 「これでもうミソラは援護できないやろ」

 「2対1なら勝算があるとでも?」


 ソウタとレイコの連続攻撃をかわしながら言うが、綱也の顔にも汗が生じてきた。


 「防戦一方の奴が良く言うぜ、強がりが!!」


 綱也の左右に別れた二人が同時に剣が振るう。綱也は盾と槍を使い防ぐ。がその衝撃で綱也の足元の地面がバキバキとへこむ。


 「確かにちょっと強がりだったかもな…だが!!」


 綱也は盾と槍を一瞬引き、ソウタ達を突き飛ばす。ソウタ達が弾かれてすぐに反撃に転じられない間に美空に目配せし、高速で移動しながら二人を弾き、一ヶ所に集める。美空は魔法の詠唱を始めた。その目から一滴の涙が落ち、頬微かに濡らす。


 「一体…何がしたいんや…」


 自分たちを倒すつもりのない綱也の攻撃に戸惑うレイコの声に応える者はいなかった。それでも、綱也のスピードに目が慣れて防御ができて、遂には反撃することができた。ソウタとレイコは同時に剣を振り下ろした。綱也は槍を両手で横に持って二人の剣を防ぐ。

 しかし、またもレイコは違和感を覚える。今の綱也の防御は攻撃を防ぐ、というよりも相手を留まらせる(・・・・・・・・)というもののような気がしたのだ。そこまで考えて漸く気がついた。綱也の狙いを。

 咄嗟に上を見上げると善治が使ったものより一回り小さいがそれでも十分大きい魔法陣が完成されていた。


 『おおっと、これは凄い魔法陣だ!!一体どんな魔法が発動するんだ!?しかし、この大きさとなると…』

 「ウチらだけやない!!コウヤにも当たるっつーことや!!こいつ、自爆する気か!?」

 「そんな事…ミソラさんがコウヤを巻き込んで攻撃するなんてするわけ───」

 「『聖宝剣(エクスカリバー)』発動!!」


 美空の叫びと共に頭上の魔法陣がより一層強く光を放ち、宝石でできた巨大な剣が出現する。

 

 『『聖宝剣(エクスカリバー)』!?そんな魔法、聞いた事も見た事もないぞー!!』


 マサミは知らない魔法が発動した興奮で声を荒らげる。


 「…『聖宝剣(エクスカリバー)』か、〈風〉、〈水〉、〈光〉の3つの属性を合わせた〈晶〉属性の上級魔法だな」


 戦闘中にも関わらず呑気に解説してしまうソウタにタッグを組んで一緒に戦っているレイコと今まさに剣と槍を交えている綱也でさえも呆れてしまう。

 しかし、それで守りが疎かになる綱也ではない。二人の攻撃を完全に止めて『聖宝剣(エクスカリバー)』が我が身もろとも二人を貫くまで足止めをする。


 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 美空の気迫の籠った叫びに剣が応じるかのように『聖宝剣(エクスカリバー)』が大地に向けて解き放たれる。その風圧は客席にも及び人さえも吹き飛ばしそうな勢いである。

 そして三人のいる場所―――いや、闘技場のほぼ全てを貫く。


 『神々しく輝く『聖宝剣(エクスカリバー)』が接近戦をしていた三人に直撃!!これは勝負あったか?…ん?』


 かなり濃く広範囲に舞い上がっている土煙の中に立っている人影を見つけ、マサミの言葉は止む。会場にいる全員がその人影をじっと見つめる。


 「始めて2、3ヶ月の新人(ルーキー)に殺られる程俺は柔じゃないっての」


 まず、立っていたのは身なりが崩れ擦り傷を負っていた綱也。

 そして、


 「ウチかて負けるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 レイコは大声を振り絞り何とか立ち上がった。


 『なんと!!『聖宝剣(エクスカリバー)』正面から受けたにも関わらずコウヤ選手とレイコ選手は立ち上がったぁー!!なんと言う防御力だ!!いや、レイコ選手の場合は不屈の精神、根性と言うべきか!?それならソウタ選手は…見なかった事にしましょう』


 マサミの視線の先にはソウタが大の字で綺麗にぶっ倒れていた。これには流石のマサミも物が言えないようだ。


 『だが、レイコ選手。体力がほとんど残ってない状況で更には相手は二人、圧倒的に不利な戦局だぁ!!』

 「くっそー。せめて、コウヤだけでも。うおぉぉぉぉぉぉ!!」


 レイコも勝てるとは思っていないがこのまま大人しく降参するのは彼女の性に合わず、最後の力を振り絞り綱也に走る。

 もう、移動する為の魔法を使うMPも残っていない。それでも雄叫びをあげながら正面から突っ込むレイコの気迫───と言うか少しの哀れみ───に綱也はレイコの一撃を甘んじて受けた。綱也の右肩から鮮血が吹き出し腕はぐったりとした。レイコも剣を振り下ろしたまま肩で息をしている。

 その時、何かがブチッと切れたような音がした。

 正確にはそんな音はしていないが当事者のレイコと綱也にはその独特の黒いオーラを感じ取って聞こえてしまった。ソウタはと言うと…お察し下さい。


 「あーあ、この展開は考えてなかった」


 綱也は苦笑いを浮かべレイコはすでにかいていた汗が増量する。その間にもそれの準備(詠唱)は整った。


 「…『神秘の翼(ミスティックウィング)』」


 綱也の背後から幾千もの光の羽が放たれ無慈悲にも傷付いているレイコの体中に突き刺さる。そこでレイコは力尽き膝から前に倒れた。


 『しょ、勝負あったぁ!!意外な形ではありましたが武演祭の最終戦を制したのは、圧倒的な実力差を見せつけたコウヤ、ミソラペアだぁ!!』

 「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」


 熱戦を見ることができた観客の歓声はしばらく続いたのだった。



 「コウヤくーーん!!」

 「ぐはっ…」


 何だか最後だけ呆気なく試合が終わり、後ろから名前を呼ばれたから振り返ると何か柔らかいもので視界を塞がれた。

 これって…考えるのは止めとこ。


 「コウヤ君、コウヤ君。お怪我はありませんか?私の魔法痛くなかったですか?レイコの酷な攻撃は痛かったですよね?じゃあもう一発殺っておきます」

 「ストップ!!ウチを勝手に悪人扱いするんやない!!第一、闘技場のシステムで怪我は治るんやから構わんやろ!?」

 「それでも痛みは感じるんだよ。と言う訳でコウヤ君が受けた苦しみを身をもって感じて下さい」

 「ウチもそれ以上にダメージ受けたわー!!」


 戦いの最後の方、俺がレイコの事を可哀想に思いあえて攻撃を受けた時、美空さんの怒りスイッチが付いてあんな無慈悲な攻撃をしたって訳だって。想ってくれてるのはありがたいけどマジで怖い。


 「ま、とりあえず終わったから帰ろう!!」

 「そうですね。でも本当に痛くなかったですか?」


 素早く俺の腕に抱きついてきた美空さんが上目遣いで言う。ヤバイね、完全に今の俺、リア充にしか見えない。


 「全然、僕もちゃんと日々鍛練してますから。それより美空さんに傷付かなくて良かった」


 これについては良く分からないが何故だか美空さんを守らなきゃいけないって頭が言っているんだ。それで2回目に会った時、家に住もうと誘った。これからも助けようとは思うけどやっぱり理由が知りたい。彼女には何かあるのだろうか?

 そんな俺の気持ちを美空さんは知る由もなく俺の言葉に赤面していた。ま、今は良いか。緊張した一戦の後だったので気持ちが緩み、そう思うことにして歩みを進めるのだった。


 「…おーい。俺の事忘れてない?」


 魔法に潰された馬鹿?知らないなぁ、そんな奴。


 「無視すんなぁー!!」


 ソウタは猛ダッシュで追いかけて来て後ろから飛び蹴りをうってきた。無論、防御力最高値の俺にはノーダメージ。そして、


 「『神秘の翼(ミスティックウィング)』」

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」


 怒った美空さんの魔法制裁。美空さんの目がマジで赤く光ってる気がする。

 こんな場面でも日常として楽しめるのはとても良いな。せめてこの日常は絶対に壊したくない。決意も新たにこれから怒るであろう事態を想像してしまった。悪寒が走り頭を軽く左右に振りすぐに想像を止める。絶対に救って見せる、あの人達が命懸けで守ったこの世界を。

 俺が怖い顔をしていたのに気付いたのか美空さんが心配そうに見てくるので軽く笑って見せて皆の少し先を歩いた。



 「まったく、ぬりぃなぁ~、んな戦い。お前の居場所はんなとこじゃねぇ。はやく、はやくこっちに来い」

 闘技場の上空。本来であれば、人間もソレもいることができない場所でソレは欲しい玩具が手に入らない子供のように苛立ち、興奮した表情を浮かべていた。

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