第33話 表彰式
大変遅くなりました。勉強とかゲームとか忙しくできませんでした。(言い訳)これからは一年に5回ぐらいこのようなことがあるかと思いますがよろしくお願いします。
『これより、武演祭閉会式を執り行う』
闘技場のステージには善治と武演祭の優勝者、綱也、美空、ソウタ、レイコの四人が向かい合って立っていた。闘技場にいる全員が注目している。己の学園の最高峰である者の勇姿を一目見るために。
『個人戦優勝者、コウヤ、ミソラ。前に出よ』
綱也はいつも通りの落ち着いた様子で、美空は少し緊張した面持ちで善治の前に足を運ぶ。
『優勝トロフィー『孤高の王者』だ。受け取るが良いぞ』
善治が二人の前に手のひらを向けると一つずつ片手で持てるぐらいの金のトロフィーが現れた。二人は驚きつつもトロフィーをキャッチする。良く見るとトロフィーの中央には四角の星が型どられていた。 それを見て綱也は顔をしかめる。
「おい、いつの間にこんなんにした?つーか嫌みか?」
「英雄の活躍を歴史に刻むのは当然であろう?」
善治はしてやったりと言いたげなドヤ顔で笑う。ちなみに、今の台詞はマイクを通していないのでステージにいる五人にしか聞こえていない。
「いい加減くたばれ、老いぼれが」
「ほぉ、ほぉ、ほぉ、年取りは労る物じゃよ」
「あんな魔法ぶっぱしておいて良く言うぜ」
「まあまあ、格好良いから良いじゃないですか?」
喧嘩腰になっている綱也を美空は肩を叩いて宥める。美空の顔を見た綱也はため息をつき、善治に向き直る。
『そして、優勝賞品はこれじゃ!!』
善治は腕を掲げる。その手には青く光り輝く指輪が握られていた。
『『共鳴する指輪』と言う名を持つ神秘の指輪で作られたのは魔物ハンターの歴史の始まり。初めてMPで作られた装備であり、能力のほとんどは未だ解明されていない。現時点で分かっているのは己に身に付けMPを入れていき、貯まった時に他の者に使わせる事で力を発揮してくれる物であると言うことだけである』
善治は上げていた手を降ろし綱也にカードを投げる。
「ほい、渡したからな。煮るなり焼くなり好きにすると良い」
「結構大事な物だろ?扱い雑すぎるだろ」
「今のは小僧への相応な態度じゃ」
「それはそれでひどい」
「さて…グフフ」
善治は美空の方を向くとニヤニヤと気味悪い笑みを浮かべながら美空の手を取り、指輪をはめようとした。その顔はもはや学園長の威厳は無く、見るもおぞましい顔をしていた。
「花嫁よ、結婚しよ「結局それか、このロリコンジジイ!!」
善治の顔を見て展開を予想した綱也は速攻で突っ込んだ。手刀による鉄拳制裁が善治の頭に直撃する。
「何をするか!?毛が抜けてしまうではないか!?」
「もうじっちゃんは末期だろうが」
善治の頭は辛うじて禿げていないが髪はかなり薄い。
「はぁ、仕方ない。これが優勝賞品である。受け取るが良い」
善治はしぶしぶ指輪をカードに戻し、美空に手渡した。
「あ、ありがとうございます」
美空は未だに緊張していて少しぎこちなく受け取る。 綱也がやけに親しく学園長と話しているのに戸惑っているのもあるが。
「…コウヤ君とお揃い…」
緊張していながらも小声で呟く美空。その顔はほのかに赤く染まり笑っていた。
『続いて、タッグマッチの勝者の表彰を行う。ソウタ、レイコ。前に出よ』
綱也と美空の隣にソウタとレイコが立つ。
『優勝トロフィー『交差する戦略』を受け取るが良い』
さっきと同じようにトロフィーをいきなり出現させる。トロフィーには二匹の竜が絡み付いているデザインだ。
「なかなか格好ええやん。一度欲しかったんよ、優勝トロフィーって奴」
トロフィーを貰い、レイコはご満悦なようだ。
「俺も産まれてこのかたトロフィーなんて貰ったことなかったからな。なんか目から汗が込み上げて来た」
ソウタはそのままおいおい泣き始めた。ソウタの肩を優しく叩いてあげたのは綱也だった。綱也は優しく笑いながら、
「何で泣いてる?優勝したのは100%俺のおかげだろうが。お前はなんとか付いてきただけだ」
「ひどい!!しかも顔と台詞が一致してない」
「うるさいわい。さっさと次行くぞい」
ゴホンと咳払いしてから善治はマイクで閉会式の続ける。
『そしてタッグマッチ優勝者に贈られるアイテムはこれじゃ』
灰色の何も描いていないカードを指輪の時と同じように掲げる。
「あれって、もしかしてグレーカードか?」
何の説明もなく誰もが良く分かっていない中、ソウタだけが反応した。
『そう、このカードはグレーカードと呼ばれる全てのカードの中で最強にもなると言われるカードじゃ』
最強のカードというフレーズに観客がどよめく。
『グレーカードとは、持ち主の力、戦闘経験、そして強い志を武器にすることができるカードである。ゆえに、使用者次第で最強にも最弱にもなりうるカードである。まさに勝者が持つにふさわしいカードであるのだ』
「そんなカードあったのか。そいつは便利だ」
「何でそんなに冷静なんや。伝説級のブツやん!!」
冷静に感想を述べる綱也とは対称的にレイコは慌てていた。
「そう言えば、ソウタは何か知ってる風だったけど情報あるの?解説さん」
「え、ああ。最近、グレーカードが裏ルートで取引されてるって噂があって気になってたんだ。まさかこんなところで手に入るとはってな。棚ぼたにも程がある」
「どこでそんな事噂になってんだよ!?」
「まあまあ、まだ何もしてないから良いだろ?」
「何かする気満々じゃねーか!!」
ソウタの黒い部分が垣間見えて一同ドン引きした。ソウタはソウタで「クックックッ」と悪役のように笑って見せる。
「もう中ボスにしか見えないから止めろ。パワー5%チョップ」
綱也の渾身(の5%)のチョップがソウタの頭を直撃しそこから真紅の液体が噴き出す。
「やったか!?」
からの渾身のフラグ。頭が赤くなっているのに立てる訳がないと誰もが思った。しかし、
「その程度の攻撃で我を倒せると思っていたのか?」
ソウタはふらふらと立ち上がり頭からそれを取り出した。
「そ、それはまさか!?」
「そうだ!!お約束のケチャップだ!!」
「な、なんだってー!!」
ドヤ顔で潰れたケチャップを見せるソウタとわざとらしく驚く綱也の芝居を皆はジト目で見ていた。
「その程度の攻撃、我には効かグハッ…」
お決まりの台詞の途中、ソウタは口から血を吐きそのまま倒れてしまった。
「まあ、パワー5%チョップを頭にもろに受けたらそうなるわな。逆に良くここまで耐えたな」
綱也は伸びているソウタの近くにしゃがみ頭をつつきながら感心する。美空はその光景を見て大急ぎでソウタに回復魔法を使う。
「茶番はそれぐらいにせい。話が進まぬではないか」
「ちゃ、茶番?俺死にかけたんだけど!?」
ソウタは傷は治ったものの半泣きで同情を求めるが全員ガン無視である。
『ついに武演祭のクライマックス、優勝者同士の最終決戦を行う予定だったんじゃが…』
「ん?何か問題あるのか?」
善治は申し訳なさそうに髭を弄り綱也達の方を見る。
「実はのう、個人戦の優勝者にタッグを組ませタッグマッチの優勝者と戦ってもらう予定だったんじゃが」
「ああ、今回は俺達がダブル優勝したからできないと」
「そういう事じゃ。一体どうしたものか…」
善治は遠い目で空を見る。綱也と美空も打開策が浮かばず唸る。しかし、ソウタとレイコは顔を見合わせてニヤリと笑う。
「やはり中止にするしか「「ちょっと待った!!」」
三人───綱也、美空、善治───は 声のした方に振り向くとソウタとレイコが腕を組み意味ありげな笑みで背中を合わせて立っていた。
「ウチらに良い考えがあるで!!」
「いえ、結構です」
「そうだろう、知りたいよなって、何でそうなるんだ!?」
キメていたソウタとレイコは拍子抜けして体制を崩す。
「速く終わらせて帰りたいからこのまま何事も無い方が俺的にはハッピーなんだけど」
綱也はさも当然の如く言い放つ。
「コウヤ君、もっとやる気を出して下さい」
全くもってやる気を感じられない綱也をジト目で見る美空。美空としてももっと活躍の場が欲しいのである。
「しょうがない、その考えとやらを申してみよ。場合によっては検討してやらなくもない」
「何でいきなりの上から発言なんや!!」
「まあ、良いや。聞いてくれる気になってくれたんなら。俺らのアイデアは個人戦の|優勝者同士〈コウヤとミソラ〉でタッグを組み、俺らでタッグ組んでバトればって事だ」
「「「なっ、なんだってー!!」」」
ソウタが真面目のプレゼンに三人が棒読みで返した。
「はいはい、ありがとうございました。乗っかってくれて」
結局、ソウタの提案を採用する事になった。
次回:ソウタ達の下克上なるか!?




