第31話 四輪の花
こんにちは 天法院美空です
武演祭も佳境。女子タッグマッチ───私とレイコの出番です。私はどこかの誰かさんに恋心を逆手に取られてレイコに主役を譲る羽目になりました。まあ、それでも勝ちましたけど。前衛が相手を倒しもう一人が魔法で援護するという聞くだけだとすごいとは思えない戦術ですが、前衛がレイコで援護が私の魔法(←ここ重要)なので圧勝で簡単に決勝への切符を手に入れました。
ちなみに、決勝戦の対戦相手は私の好敵手にして元恋敵のスミレとコトミさんです。コトミさんは戦闘経験も豊富で男の人が相手でも引けを取らない程の実力を持っているそうです。コトミさんは10年前に家族を失い、スミレの家に拾われて訓練を受けて、スミレ専属のメイド兼ボディガードになったそうです。
それからというもの自分の実力に敵う者しかスミレに近寄らせず、スミレはあまり友達がいなかったそうです。コトミさんが唯一許したのはコウヤ君だったそうです。それ以来スミレはコウヤ君に恋心を持っていた、と言う事でした。良い迷惑です。
話が長くなってしまいましたが、これから決勝戦に挑みます。応援よろしくお願いします。
◆
『波乱万丈の武演祭もいよいよ大詰め!!女子タッグマッチ決勝戦!!まず現れたのは個人戦優勝者の実力を見せる事なく、パートナーの力で勝ち上がって来た実力者チーム、ミソラ、レイコペア!!』
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
闘技場でいくつものスポットライトを浴びながら美空とレイコは観客の声援に応えて手を振る。
『そんな強豪ペアに挑むのは有名ご令嬢とその豪腕メイドのペア、主従とは思えない息の合った戦術で幾度も観客を魅了してきた、スミレ、コトミペア!!』
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
スミレは手を振ったがコトミは戦闘に集中しているようで対戦相手を見ている。
『観客の熱気も頂点に達しています!!私のテンションも最高に高くなっています!!これはもう始めなければ体が持ちません!!それでは皆さんご一緒に!!』
「「「「『3、2、1、バトルスタート!!』」」」」
「いっくでー!!ミソラ!!」
「勝つよ!!絶対に!!」
「勝負ですわ!!」
「行きます!!」
四人が同時に動きだす。
「先手必勝!!」
最初に仕掛けたのはレイコ。地面を隆起させジャンプし、スミレ目掛けて急降下。その手には美空との絆の証が付いている大剣を持っている。
しかし、以前自分を一刀両断にした技を前にしながらスミレは笑っていた。
「スミレ様には指一本触れさせません!!『爆裂拳』」
レイコの側面からコトミが走り出しジャンプしてナックルを装備した右腕を構える。さらに、ナックルには派生属性〈爆〉の魔法がかけられている。
急降下しているレイコは空中にいるため避ける事はできずスミレへの攻撃は諦め大剣でコトミの攻撃を防ぐ。しかし、大剣とナックルの接触面が爆発する。その衝撃でレイコは吹き飛ばされる。そしてその先にはスミレが細剣を構えていた。
「一騎討ちですわ!!」
「くっ!!やったるわ!!」
二人の距離が縮み大剣と細剣が交わろうとした時、
「『激流の意志』」
美空の杖から放たれた水がスミレにぶつかり、呑み込み突き飛ばす。
「なーんてな!!簡単に挑発にはのらへんで!!」
そして再度コトミが走り出しレイコに拳を向ける。それに気付いたレイコは素早く着地してコトミに向き合う。コトミはジャンプして上から殴ろうとする。
「スミレ様の仇!!」
レイコは魔法でコトミの下の地面を隆起させぶつけようとする。しかし、コトミはその攻撃に気付き自分に迫る地面を殴り爆発させ回避する。レイコの攻撃はそれだけでは終わらず横から大剣を振るう。リーチのある大剣を避けるのは不可能と判断し、一矢報いるべくレイコを殴る。大剣と爆発の衝撃で二人は吹き飛ばされる。美空とスミレは吹き飛ばされた仲間の所に向かう。
「レイコ、大丈夫!?」
「平気、平気、こんな傷屁でもないわ!!でも…今のままだと勝てるか分からんな」
美空に心配させないようにいつものようにへらへらして応えたが先程の一撃でかなりダメージがあった。
「え!?じゃあもしかして!!」
美空は期待に目を輝かせる。レイコの体調には気付いていない。
「ああ、あの約束は無しや。本気出してきいや!!」
レイコは美空の背中をぽんと叩く。美空はレイコを見ながら頷いた。
「スミレ様!!お体は大丈夫ですか?」
「私より自分の心配をした方が良いですわよ?」
「そんな!!私はどうなろうともスミレ様をお守りしなくてはならないのです!!」
コトミの必至の形相にスミレは思わず笑ってしまう。
「ありがとう…ではそろそろ仕掛けますよ!!」
「かしこまりました!!」
二人は美空達の方を見る。美空達もスミレ達を見ていた。
『最終決戦、本当の戦いはこれからだぁ!!』
闘技場の全員がこの試合を楽しんでいた。
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