第28話 雨
今日は午後から雨が降るでしょう。以上、天気予報でした。
こんにちは 天法院美空です。
前か───さ、先程コウヤ君が圧倒的な力で魔物を倒してくれました。私のため…だけって事は流石に無いと思いますが正義のために悪と戦うコウヤ君が格好良かったので不満はありません。でも今日は最後に私を初めて助けてくれた時に使っていたえっと…トライアングルフォース、でしたっけ?そのスキャナーを使ってからのコウヤ君はやっぱり印象が全然違いますね。普段のコウヤ君も接しやすい面白い感じですがトライアングルフォースを使っているコウヤ君は冷静と言うか、引き締まっていると言うか、何かが違う気がします。まあ、その内分かりますよね?置いておきましょう。
『波乱尽くしの男子個人戦もなんとか終わり、毎年花がある女子個人戦に入ります!!』
そう、これからは私の見せ場です!!張り切ってコウヤ君に良いところ見せないと!!という理由でマサミさんと同じぐらいテンションが上がっています。私が数ヶ月でどのくらい強くなったか分かりますしね。
『それでは、選手入場です』
それでは天法院美空、いっきまーす。赤い彗星と戦うが如く出撃の定番台詞を言える辺り私も緊張してませんね。
◆
『武演祭女子個人戦、最初の対戦カードは男子個人戦で優勝を果たしたコウヤ選手の彼女!!と噂されているミソラ選手です。実力も真実も一切分かりませんが杖とローブを装備しているところから後衛職の魔法使いでしょうか?』
美空は顔を赤らめながら登場した。着ているローブが白と青が基調になっているので赤くなった顔が余計に目立つ。
『そんなリア充に向かい打つのは「まだリア充じゃないけど」はい、口を挟まない。えー、気を取り直して…そんなリア充に向かい打つのは!!』
1回目より大きな声で言ってる辺りマサミは美空の事を確実にリア充だと思っているようだ。
『《冷酷な薔薇の棘》のアカネ選手だぁ!!』
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
美空の反対側にいるのは強気そうな見た目の緑に赤が混ざった髪の少女がいた。手には茨の蔓が巻き付き先に赤い宝石が付いた杖を持っていた。
「あんな男のどこが良いのか…はぁ」
ブチッと何かが切れた音がした。
「絶対に殺します!!」
美空はあえてニコニコ笑いながら死刑宣言をする。
「それよりも…おまえ、ソウタさんとも仲良くしてるらしいじゃないか?」
「ソウタ君?まあ、コウヤ君の幼なじみですし良い人なので…でも恋愛感情は抱いて無いですよ」
するとアカネは目を見開いて驚いた。
「そ、ソウタ君…だと。もうソウタさんとそんな関係に!!許さん!!」
アカネのクールだった顔が美空への憎悪に染まった。
「ちょっと、ソウタ君からも勘違いだって言ってください!!」
アカネの憎悪に染まった顔に恐怖を覚えた美空は当事者であるソウタに助けを求める。
『う、うん。美空さんの言ってる事は大体あってるよ』
「大体?じゃああって無いところもあるって事だ。やはり、おまえが!!」
「だから違うって言ってますよね!?」
いい加減うんざりしてきた美空も声を張り上げる。誰も得しない変な漫才に闘技場全体のムードも落ちている。そんな仮にもお祭りには最悪のムードを打ち破ったのはマサミだった。
『あーもー面倒くさい!!そんな言い合い裏でやれー!!こちとらバトルの実況に来てんだよ!!』
今までに無い程の大声で言い合う3人───正確にはアカネ1人だが───をマサミがそれを上回る音量で止めた。
『収まったところで始めましょう!!3、2、1、バトルスタート!!』
「一分で殺す!!」
「それはこちらの台詞です!!コウヤ君を侮辱するなんて…」
負のオーラに満ち溢れて始まった試合、この時はまだ誰もあんな事が起こるなんて思いもしていなかった。
一分後、闘技場のフィールドはクレーターだらけになり、杖を持った少女もズタボロになって倒れていた。
その光景に一同唖然。普段オーバーリアクションのマサミやレイコは勿論、《格好良い射撃者》(笑)のソウタも、そして普段戦闘関連では殆ど驚かない鋼也でさえも開いた口が塞がらなかった。現況の美空は満面の笑みで地上に降り立つ。本人は鋼也を侮辱した者を倒せた事と強い自分に鋼也が褒めてくれるだろうという高揚感で笑顔になっているが周りから見ると悪魔の笑みにしか見えなくなっていた。
美空は試合が始まると〈風〉魔法で空を飛び、ゆっくり上に上がりアカネを程よく見下ろせる位置に来ると光の魔法の玉を無数に生成し一気に落とした。重力によって加速した魔法の玉がフィールド全体を覆いアカネを呆気なく倒した。とんだトラウマ物だろう。
勿論、味方がいれば味方にも当たっているので個人戦ならではの戦い方であった。
その後はリタイアが続出で残った勇者(勇敢にも美空の魔法の雨に挑んだ者)も歯が立たずあっさりと優勝してしまった。
個人戦の優勝は主人公とヒロインが取るというレイコの策略は見事成功した。これで少しは二人の仲が深まれば、というレイコの粋な心遣いだった。この作戦を成功するためにレイコは個人戦には出なかった。決してレイコが美空を怖がった訳ではない。
と言い訳をしたが信じてもられはしなかったと言う。
こうして、武演祭一日目、個人戦の幕は閉じた。
天気予報的中でしたね(笑)これからも引き続きお楽しみください。