第2話 出会い
はじめまして。
私は天法院美空です。私は今、家に帰っている途中で…
「…」
「グルルル…」
恐ろしいそれを目撃してしまいました。全身緑色で顔は巨大な口があるだけ、しっぽと鋭い爪を持ち二足歩行のそれ。そして、それは私を見て唸っている…何故自分でもこんなに冷静に分析できているかはわかりませんが、まだ恐怖の実感が湧いて来ないのだと思います。
私は両親を10年前に交通事故で亡くして今は横浜の高層マンションの豪邸に住んでいる叔母と暮らしている17歳の女子高生──自慢ではありませんが、家が元々裕福なのでお嬢様と呼ばれるものらしいです。そんなファンタジーの主人公でもない私がどうしてこんなものに突然遭遇しているのか未だに理解できません。
あれ、これは逃げた方が良いのかな?とようやく思った時にはそれは私に襲いかかって来ました。ああ、ここで死ぬんだな…と不思議と長く感じる時間で呑気な事を考えながら立ち尽くして居ました。
後々考えると、この時既に分かってたのかも知れません。誰かが──あの人が助けに来てくれると。
◆
光を反射し合う横浜のビルが立ち並ぶ空で白銀の光が常人では認識出来ないほどの速さで飛んでいた。ただ1つ、緑色の化け物のみを睨みながら…その光はもう一瞬で化け物にたどり着くという時、冷静に呟く。
「トライアングルフォース──ブレード──」
光から伸びた手に更に眩い光が満ちる。次の瞬間にはその光は化け物の胴に突き付けられていた。
◆
…その時、とてつもなく速い何かがそれに突撃し、吹き飛ばされたそれは倒れた後に光の粒子のようになって消えていきました。そして驚いたまま突撃した方を見ると…なんと人間でした。鎧と剣を身に付け、4角の星型(四芒星と言うのでしょうか)の物を1角だけ鋭くしたような大きなパーツが上下に交互に合わさり翼のようにその人間の背中に付いていました。因みにその人は私と同い年位の男の子でした。
そしてその人の装備が一瞬にして光の粒子として消えて、深呼吸をしています。一部始終黙っ見ているとその人は私に気付き、とても慌ててこっちに来ました。
「あっ、あの…もしかして今の見えました?」
とさっきのクールな感じとは別人のようにしどろもどろに聞いて来ました。見てはいけない物だったのでしょうか?
「はい…何かまずかったですか?」
「えっ、えーと…本来普通の人間には見えないはずの物なんですが…さっきの奴も、僕も…あっ、それより…えぇっと、なんて言うか…」
普通の人に見えないって幽霊みたいですね。足はありますけど。と考えているとその人は黙ってしまいました。少し気まずいので自己紹介でもしましょうか。
「助けて貰ったのに自己紹介していませんでしたね。私の名前は天法院美空です。宜しくお願いします」
「あっ、あの…僕の名前は天文字綱也って言います。どうぞコウヤと呼んでください。こちらこそ宜しくお願いします」
これが全ての始まりだったなんてこの時の私には初めて会った人なのにも関わらず、その人───コウヤ君に見とれて微かに頬を染めていることにも気付きませんでした。