第21話 その頃、綱也は…
時系列的には美空達が講義を受けている時です。
都会のど真ん中で大量の魔物と綱也は戦っていた。実際は一方的に魔物を倒している、と言った方が正しいのだが。流石に数が数だけに綱也も息をきらしている。一人の人間に残り100体の敵。しかし、その人間は人間を越えた力を持っている。対して魔物は強さで言えば底辺レベル、数だけがあるという感じである。
「…」
綱也が走り出した瞬間、魔物の大群に閃光が走った。閃光が通った後には魔物の10体程が光になって消えた。
残り90体───
魔物の大群に囲まれている状況になってしまった綱也。しかし、綱也は顔色1つ変えない。
全方位から襲いかかる魔物。綱也は冷静に回りながら一閃。またも同時に10体の魔物が死んだ。
残り80体───
魔物が襲って来なくなったので綱也は自ら攻撃する。魔物に反撃の隙を与える事なく綱也は淡々と魔物を倒している。
残り70体───
綱也の背後からの魔物の攻撃。しかし、その不意討ちも気付かれ体を切り裂かれる魔物。その断末魔さえ今の綱也には届かない。
その後も淡々と魔物を倒し続ける綱也に魔物はなすすべなく全滅した。
◆
「いや~、ひさしぶりに戦って疲れたな~」
只今疲れた自慢をしている俺はチート主人公こと天文字綱也だ。皆覚えてた?俺がチーターだって事。俺のチート戦闘見ただろ?俺強すぎね?え、そうでもない?いやいや、まだ実力の10%しか出して無いから。安心して下さい、まだまだチート無双しますよ。お楽しみに。
「にしてもあの数か…おっちゃんの言ってた通りになりそうだな…」
ちなみに俺が倒した魔物の数は1000体ぐらいだった。でも実力で言うと学園の全生徒の方が1000体より強いと思う。え、そこじゃ無い?俺の自慢話なんか聞きたく無い?ひどいな、俺泣いちゃうよ?…まあ、泣かないけどね!!ごめん、ごめん。謝るから怒んないで。説明するからさ。てな訳で説明用の回想どうぞ。
◆
美空さんと別れた俺は行き付けのギルド───『竜と女神』に向かった。ギルドリーダーのおっちゃんと俺の父親が親しくて、俺の両親が消えてからは俺の面倒を見てくれたよしみでこのギルドを贔屓にしている。
古い西部劇なんかに出てきそうな建物に大剣と細剣が交差している看板が付いている。これはおっちゃんとおっちゃんの奥さんの武器をイメージして作った物らしい。扉もウエスタンドアっぽくなっている。
ギルドに入ると何人かの客とおっちゃんがいた。ちなみにギルドの内装は酒場みたいな感じで実際奥さんがやってる食堂と合併している。
「お、綱也じゃねーか!!最近来なかったじゃねーか!!あれか?体でも壊したか?それとも彼女でも出来たか?ガハハハ、それは流石に無いか!!」
やっぱりおっちゃん声がデカイ。とにかくうるさい。これがなければ良い人なんだけどなぁ…おっちゃんは声だけでなく体もでかくて筋肉ムキムキだ。
「いや~俺にもモテ期来たけど?」
「ああ、2次元だろ?それかエロ本の中か?おまえさんがリアルでモテるのは難しいだろうからな!!」
「大声でんな事言うな。それにリアルだし」
おっちゃんは口をあんぐり開けて驚いてる。そんなに俺って顔悪い?自分では悪くはないと思うけど。
「う、嘘だろ…綱也が…あのムッツリスケベなコミュ症が…リア充だと!?」
「まあな。つーかひどい言い様だな、おい!!どれだけ皆、俺がモテないと思ってんの?」
おっちゃんも本当の事しか言ってないけど。あれ目から汗が。
「あ、相手は誰だ!?今すぐ連れて来い!!俺が見極めてやる!!」
「何でおっちゃんの娘みたいに扱われないといけないんだ!!」
一応、おっちゃんは親代わりだけどこれは過保護過ぎね?
「すまん、取り乱した。それでもいつかは顔見せてくれ」
「その内ここも利用させてもらうから心配すんな。それより今は稼ぎ所あるか?なるべく報酬デカイ奴で頼む」
「おう!!それならとっておきのがあるぞ!!」
そう言っておっちゃんは依頼カードを取り出した。ちなみに依頼カードとは依頼の内容が書いてあり目的地までワープできる優れものである。
なになに…魔物が1000体発生!!初めて見た。でもこれだけあればしばらくは大丈夫だな。実力的にも平気だし。
「何でこんなにいんの?」
「…それがな、もしかしたらまた起こるかもしれねんだ…」
「…っ!!」
「まだ推測の段階だから詳しい事は分からんがこの数…10年前の二の舞にならないと良いが…」
「…そうだな。んじゃその依頼受けるわ。いっちょ行ってくる」
そう言って俺がギルドを出ようとすると
「綱也!!」
「なんだよ」
「来ると決まった訳じゃねーけどよ、本当に大切なら守れよ…全力でな」
「分かってるよ、そんな事」
もう二度と大切なものを失いたくない。例え自分の命をかけてでもそれを守り抜く。俺はそう誓ったんだ。10年前のあの時から。
◆
まあ、そんな事があって1000対1の戦いをしてたんだ。まあ余裕だったけど。しばらく働かなくて済む。これで美空さんも不機嫌にならないな。
「帰ろ~っと、んでエロ本でも買おう」
やっぱり戦った後ってムラムラするからね。健全な男子だからね、仕方ないよね?まだ美空さんに性欲をぶつけない辺りましだと思う。何気に美空さんは胸が大きいからね。耐えるのはきつい、でも鋼の理性で何とか性欲を抑えている。
「ゲフン、ゲフン。んなこと考えちゃいけね」
横縞な事を振り払いながら俺はコンビニに寄るのだった。
綱也の過去についてはしばらくしてから出す予定です。最後良い感じで締めようと思ってたけど綱也の変態度が上がってしまいました。
次回、もう一回講義をしてから武演祭の予定です。




