第19話 友情の戦い
「…真の 恋敵は貴女だったとわね。良いでしょう、コウヤ 様をかけて、決闘ですわ、ミソラさん!!」
「「「「へ?」」」」
こんにちは 天法院美空です。
スミレさんがいきなりの宣言に私達は唖然としています。 どういう事でしょう?スミレさん、ドヤ顔に仁王立ち、さらに人差し指で私を指さしていますが私はさっぱり理解出来ません。
「あら、まさか負けるのを恐れて戦う事も出来ませんの?」
「いやいや、あんた何言うとんねん?」
レイコが全員の疑問を聞いてくれました。
「え?ミソラさんはコウヤ様のフィアンセでは無いのですか?私はそのフィアンセの座をかけて戦おうと…何ですか、その顔は!!」
スミレさんの言葉を聞いた私達はスミレさんを哀れみの目で見ていました。
「とりあえず、美空さんは彼女じゃないけど」
…はぁ、ですよね。『美空さんは俺の彼女だ。』なんて言ってくれませんよね。でもとりあえずなんですよね!!ということは可能性があるってことですよね!!これでも良い感じです。確実に進展してます。嬉しくなってついついコウヤ君の腕に抱きつくと、
「だったらその姿はなんですの!?…そうですか、コウヤ様に言い寄って貢がせようとしているのですね!!なんてはしたない女!!速く立ち去り2度とコウヤ様に近付かなければ私が成敗してやりますわ。さあ、どちらを選びますか?」
…失敗しました。最近の癖でついついしてしまいました。それにしてもひどい言い様ですね。私としてはコウヤ君が私に媚びて欲しいんですけどね。まあ、そんな事誰にも言いませんが。
「ちょっと待った。そんな言い方ないやろ!!そこまで言うんやったらその勝負、友達としてウチが変わりに受けるわ!!」
「フフ、良いでしょう。貴女も目障りなので先に倒して差し上げましょう、レイコさん」
「レイコ…」
「大丈夫や。ミソラは戦った事もないんやろ、ここは任せとき」
こうして、戦いの火蓋が切られました。
「ここは『私のために争わないでぇ~!!』って言う所?」
「少しは空気を読みやがれ、馬鹿野郎!!」
漫才をしてる男子2人はおいといて。
◆
「さあ、さっさと終わらせようや」
「レイコさん、私にそんな口をきいて良いとお思いですの?」
闘技場に立っている2人の会話は大きな声ではないため闘技場の観客席にいる綱也達には聞こえていない。
「は、今さら何を言うてんねん」
「私は貴女のお友達───天法院美空さんをいつでも殺せるのですよ?」
「っ!!スミレ…あんたどこでそれを!!」
「私の力を使えばその程度の調査等、容易い事ですわ。負けてくれますよね?」
「くっ…」
「では始めましょう。1本勝負で良いですね」
「…」
レイコは応えない。それでもスミレは勝手にバトルの設定を進めていく。そして、カウントダウンが始まった。
───3・2・1・START───
合図と同時にスミレはカードスキャナーに2枚のカードをかざし、水晶の細剣を取り出し、
「『我に干渉しない光』」
魔法を使う。その瞬間、レイコにだけ光が襲う。レイコの目がくらむ内に接近し、水晶の細剣での乱れ突きを繰り出す。細剣単発の威力は低いがその分手数で攻める事ができる。そんな細剣のメリットを最大限引き出すような戦い方をスミレはしていた。
「……っ!!」
それに対してレイコは何もしない。いや、できないのである。
「ふふふ、この私にかかれば貴女程度の魔物ハンター等、敵ではありませんわ。さあ、もう一度行きますわよ。『我に干渉しない光』」
『我に干渉しない光』は収まってもなおしばらく相手の目を眩ます光である。しかし、魔法を使った者と見方と認識した者には影響しない特殊効果がある。これによってスミレは光を放ったすぐ後に行動できる。
再度細剣の連続攻撃の脅威がレイコに迫る。
◆
闘技場の客席にて
「レイコ…どうしたんだろう」
「…明らかに何かあるだろ、あれ」
美空とソウタがレイコの心配をしている中、綱也だけが無言で考えていた。
(いつものレイコなら速攻で攻め立てるのに…レイコがスミレに敵わないってことはないし…後、考えられる理由は…スミレが何かしたのか!?)
綱也がそこまで理解した時、美空の周りに紫の魔法の輪───呪いの魔法が迫っていた。綱也達が気付いた時にはもう遅く、呪いが美空に達した───
と思われたが呪いの魔法の輪が弾かれた。『呪いがかけられた時点でその者は確実に死に、逃れる術はない』と 教わり、真実だと思っていた綱也とソウタは唖然としている。そんな2人を見て何が起きたのかわからない美空は首傾げている。
そして、我に帰った綱也はレイコの方を見た。先程と同じように攻撃される所だった。ここで全てが繋がった。
「レイコ!!美空は大丈夫だ!!戦え!!」
◆
レイコにとって美空は友達だった。この戦いに割り込んだのも美空を守るためだった。しかし、それ以上の理由があった。それは美空が綱也にとって大切な存在だと思ったからだった。美空と会ってからの綱也は以前のように笑っていた。そんな状況が好きになっていた。だから、その状況を守るために、それが好きな自分のために戦おうと思った。
しかし、無駄だったのだ。相手の方が周到だった。自分にはどうする事も出来ない。勝っても負けても美空は死ぬ、自分の好きな状況が壊れる。
絶望に打ちひしがれていると一瞬夢かと疑う声が聞こえた。
『レイコ!!美空は大丈夫だ!!戦え!!』
目の前には敵が攻撃を加えようとしている。普通なら間に合わない。しかし、レイコには自信があった。この攻撃を防ぎ、この勝負に勝利する事に。
「これで終わりですわ」
水晶の細剣のあたる音が響き渡る。
しかし、それは細剣と大剣の交わる音だった。レイコは大剣を振り抜く。咄嗟にそれをかわすスミレ。しかし、斬撃を放った主は視界にはいない。あるのは地面が隆起しているだけだった。それに気付いた時、自らの敗北を悟った。
「ウォォォォォォォォォ!!」
凄まじい気迫を、底知れぬ怒りを。本能が理解した。レイコは地面の隆起を利用して空高く飛び上がっていた。
そして、レイコの大剣───地斬剣 がスミレを切り裂いた。
◆
「ミソラ…ミソラ!!良かった…生きてて良かったぁ!!」
「え?ど、どうしたの?レイコ」
レイコが私に抱きついて泣きじゃくっています。何だか分かりませんがレイコが大変だったのは私にも分かってるので今はさせたいようにさせてあげましょうね。
「…でも『生きてて良かったぁ!!』ってどういう事ですか?」
「あぁー、そっ、それはふっ、深い訳があって…」
話が見えて来ないのですが…スミレさんが動揺しているので何かしたんでしょうけど。
「スミレがミソラを呪い殺そうとしたんだよ。ミソラのフルネームをわざわざ調べだしてまでな」
「へ?」
全く実感がないんですけど。ソウタ君、何を言ってるんでしょう。でも真実みたいですね。スミレさんが泣きじゃくってます。
「じゃあ何で私は生きているんですか?」
「それは分からないんだ。でも何故か呪いを弾いたんだ」
「うぅ…誠に申し訳ございませんでした。2度と、2度とコウヤ様に近付かないので…いえ、もう私の命をもって謝りますゆえどうか、お許し下さい」orz
スミレさんが泣きながら見事な土下座をしてきました。お嬢様ですよね!?
「って命!?死ぬってことですか!?早まらないで下さい。そこまで反省しているのであれば別に構いませんよ。私だって逆の立場だったら同じ事をしていたでしょうしね。これからは正々堂々、仲良くしませんか?」
「よろしいのですか?私…生きていて…」
「あなたは私の好敵手で恋敵です。一緒に頑張りませんか?」
「!!はっ、はい!!ありがとうございます」
これで万事解決ですね。私は何もしてませんが。
「…しかし、恋敵の座は諦める事にします。お二人はとてもお似合いですからね。私は全く世界が見えていなかったようですね」
…お似合いですか。嬉しいですね。コウヤ君とお似合い…///
「ミソラとコウヤは本当にお似合いなんやから頑張れや、ミソラ!!」ニヤニヤ
「もうレイコったら。スミレさんもやめて下さいよ」
「私とも砕けた口調で構いませんよ、ミソラ様」
「じゃあ改めてよろしく。スミレ」
良いライバルになりそうですね。楽しみです。
◆
「コウヤ、おまえひどくね」
いつの間にか仲良くなっている女性陣を遠巻きに見ていたソウタは軽蔑した顔で同じように隣にいた鋼也に言った。
「ん、何が?」
「あそこまであからさまなのに気付いて無いって事無いだろ?」
美空を指差してソウタは尋ねるがなに食わぬ顔で、
「ん、まあな」
「それがひどいって言ってんだよ。応えてやれよ。必ずYESにしろ、とは言わないけどさ。あんな良い女の子なのに何で何も言ってやらないんだよ」
「…俺の真実を知っても美空さんが今のままでいるか分からないだろ?だから、せめて美空さんが一人で戦えるまでは…って思ってんだよ」
「…そうか、悪かったな。コウヤ。お詫びになんか奢ろうか?」
「別に良いよ。幼なじみだしな。ひどい事をしてるって事は分かってる。でも美空さんのためなんだよ」
「まあ、一人で全部抱えこむなよ。俺達は仲間なんだからな」
「仲間か…俺は仲間を持って良いのかな…」
綱也は遠い目に今にも消えそうな声で言った。
「だめな訳ねーだろ?」
「…ありがとう、ソウタ」
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