第15話 初登校と幼なじみ2
お待たせしました。新章突入です。
早朝、ほとんどの者が起きていないような時間に張り切って料理をしている者がいた。作る料理は朝食にはもったいない程の料理ばかりが並び、テーブルの傍らには弁当箱にも料理が詰められていた。それらは自分の為では無く、自分の想い人の為に気持ちを込めて作った彼女の力作だった。
その者の名は天法院美空。
彼女は自分の作った料理を眺めてから彼女の想い人───天文字綱也の部屋へと向かった。
一方、綱也はと言うと───
「ZZZ…」
まだ眠っていた。そんな綱也の顔を見て微笑む美空。綱也は決して顔が良い方では無いが
「…余計なお世話だ…ZZZ…」
…それでも美空には世界で1番格好良く、大切で愛おしい顔だった。美空は昨日の事を思い出した。
不良4人組に囲まれた美空を言葉だけで助け出した綱也。美空はその時の綱也から殺気の様なものを感じたが今はこんなにも気が抜けている。美空はそんな綱也に萌えて、少しニヤけて
「コウヤ君、起きてください」
そう言いながら、綱也の頬に自分の唇をそっと合わせてバレないようにすぐ離した。幸い綱也は起きたものの寝惚けてそれには気付かなかった。
「…ん、美空さん?お、おはよう…」
「おはよう、コウヤ君。朝ごはん作ったから一緒に食べて早く学園に行かないとですよ。」
「…ああ!!学園に行く日だった。忘れてた…ちくしょう、これじゃレイコと変わんねぇじゃねーか」
鋼也は苛立ち、自分の両頬をおもいっきり叩く。後が赤くなっていて美空は心配そうに見る。
「コウヤ君、大丈夫ですか?」
「はい、目が覚めました。美空さんが朝食作ってくれたんですか?ありがとうございます、何から何まで」
「良いんですよ、それぐらい。私は恩返しをしなきゃいけないので。昨日も助けてもらいましたしね。」
「いや、あんな事大したことな───」
謙遜する綱也の手を握って美空は綱也の言葉を止めた。
「どんな事でもコウヤ君が私を助けてくれたっていう事が嬉しいんです。だから…コウヤ君にそのお礼をしたいんです」
「ありがとう、美空さん。美空さんが料理をしてくれるならとてもありがたいです。これからもお願いして良いですか?」
「はい、喜んで!!さっ、朝ごはん食べましょう」
こうして、2人の1日が始まったのだった。
おはようございます。天法院美空です。
今朝はコウヤ君のほっぺにキスをしてしまいました。
少しはしたなかったですかね?この際相手がコウヤ君だから関係ありません。でも思い出す度に体温が上がってきます。やっぱり恥ずかしいですけど…私が積極的に行かないといけませんよね?こんなにいろいろそれっぽい事言っているのに気付かないって…コウヤ君、鈍感みたいですからね。それにレイコさんっていう強敵もいるので頑張らないと。
そんな訳で登校中はいつものようにコウヤ君の腕に抱きついています。いつも抱きつかれても平然としているコウヤ君ですが、今日は顔を真っ赤にしています。
もしかして、今朝の事とかが少し効いてドキドキしてる…訳ではありませんね。他の生徒の目が気になってあるからですね。でも、それでも吊り橋効果みたいになりますかね?恥ずかしいっていうドキドキを恋のドキドキと間違えて好きになってくれたりっていう…コウヤ君の事は好きですけど、出来ればコウヤ君から告白されたいですね。その時はコウヤ君、私に何て言ってくれるのかなぁ~まだコウヤ君が付き合ってくれると決まった訳では無いですからね、今のところは。
その話はともかく、私達は『基礎知識』の講義が行われる教室に来ました。この学園の全ての教室が魔法によって拡張された空間を使っているそうで教室というか講堂レベルの大きさの部屋でした。
「おっ!コウヤじゃん!最近来てなかったのに珍しいな」
突然そんな声が聞こえたと思うとスマートグラスのような眼鏡をかけた茶髪の男の子がコウヤ君に寄って来ました。
「ソウタか、久しぶり。おまえも相変わらずイケメンでチャラいな」
「そんな言い方したら皆が『コイツ、イケメンでチャラいんだ…』って思っちまうじゃねーか!!」
「何が違うってんだ?つーか今更だろ」
「俺は根っからのイケメンで自らイケメンになりたかった訳じゃねーし、チャラさは俺のイケメンにくっ付いて来たもので───」
「1回死んどけ、このナルシなチャラ男め」
「だが、断る!!」
最後にソウタさんがそんなこと言うと2人は笑いました。こういう意味では普通の学校ですね。
「ってかその女の子は?」
「ああ、紹介して無かったな。この人は美空さん。訳あってこっちに住む事になったから助けてんだ」
「へぇ~、俺はコウヤの幼なじみのソウタって言います、17歳です、よろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
ソウタさんもといソウタ君は第一印象がとても良いですね。親しみやすい感じです。
「そう言えば昨日、レイコが『あの腐れ外道がっ、コウヤがっ、リア充になってたっ!!』って騒いでたけどそういう事か」
ソウタ君はニヤニヤしながら一人納得していました。
「ちっ違うから、たまたまあっただけだから」
「ふーん」
「レイコの奴、この調子だといろんなところでしゃべってやがるな。面倒なことしやがって、あのおしゃべり野郎め」
コウヤ君は悪態をつきながらソウタ君の座っていた席の隣に座ったので私はすかさずコウヤ君の隣の席に座りました。私がそんな事、いえ、重要な事に幸せを感じていると
「ああーっ!!腐れげ」
「誰が腐れ外道だ!!つーかうるせぇ!!」
教室に入って来ていきなり大声をあげたレイコさんにコウヤ君は最後まで言わせない速いツッコミを入れました。声だけで誰だか判別するとは流石、幼なじみですね。これぐらい仲良くなりたいものですね。
「あっ、昨日の…あんた、このバカに何かされたん?それやったらウチがコイツのことぶっ殺して殺るかんな。いつでもいいや、助けたるから」
「俺よりおまえの方がバカだろうがよ」
「先にバカって言った方がバカなんや」
「最初に言ったのはおまえだろうが、この大バカ野郎め」
「美しい女性のウチを野郎呼ばわりとは、絶対に許さへんで!!」
「怒るとこそっちじゃねーだろ。いい加減そのバカ直せよ」
「なんやと!!講義が終わったら覚悟しとき、決闘や!!」
「望むところだ。受けてたつぜ」
「まあまあ、コウヤもレイコも落ち着い「「おまえは引っ込んでろ!!」…はい」
昨日のようなコウヤ君とレイコさんの口喧嘩。ソウタ君が止めようとしたものの勢いに負けてしまいました。でも、この3人幼なじみですよね?毎日こうなんでしょうか?まあ、これはこれで賑やかで良いですね。でもそろそろ止めないと。
「コウヤ君、落ち着いて」
「…すみません、美空さん。ご迷惑おかけしました」
「まっ、今日のところはその子に免じて引いたるわ」
「釈然としないが…この際まあ良いや、講義もそろそろ始まるだろうし」
そう言ってコウヤ君はソウタ君と話始めてしまいました。私もコウヤ君と話したかったんですけど。ソウタ君は男の子だから大丈夫だと思っていたけど気を付けた方が良いですかね?私がそんなふうに少しもどかしくしていると
「あんたの名前、そういえば聞いて無かったな。ウチはレイコ、よろしく」
レイコさんがいきなり聞いて来ました。
「天法院美空です。こちらこそよろしくお願いします」
「…あんまり名字、人に言わん方が良いで。フルネームあると魔法で呪い殺されたりするからな」
「…そうだったんですか!?」
中々怖い世界ですね。
「安心せいな。少なくともウチはそんな事するような奴やないで」
「あっ、ありがとうございます。レイコさん」
「レイコで構わんし、敬語もいらんよ。同い年やろ?ウチもあんたのことミソラって呼ぶから」
「…それじゃあ、よろしくレイコ」
「おう、ウチからもよろしく、ミソラ」
レイコさん、いえレイコは悪い人ではなさそうですね。友達になれたようですし。
恋敵かどうかは別にして、ですが。
関西弁難しい。誰か教えてください。




