第9話 隣には…
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少女は何も出来なかった。少女の大切な人達が彼女を庇うように目の前で倒れていくなか、泣くことしか出来なかった。迫って来る化け物が目に入り、少女は幼いながらも自分の死を悟った、大切な人達を抱きしめて。化け物が少女を殺そうと手を振り下ろす。と、その時その化け物の動きが止まった。と思うと化け物が光りの粒子になって消えていった。
少女がその後ろを見ると輝く槍を持った男がいた。男が少女を見ると笑って見せた。ほっとしたのもつかの間、男の後ろから3体の化け物が1度に襲ってきた。しかし、男は気付いていたが微動だにせず、ぎりぎりまで待っていた。男に攻撃が当たるその瞬間、横から化け物を吹き飛ばす大量の水が放たれ、男は助けられた。水が放たれた方を見ると男と同年代のローブを来た女が立っていた。
その後、男女は目を見張るような強さで化け物を蹴散らした。しかし、男女が前に出過ぎたため、少女と離れてしまった。そして、1体の化け物が少女を襲った、次の瞬間、視界に赤い血の雨が降った。
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ここはMTポリスのとあるマンションの一室、天文字綱也の部屋、その部屋に2回、小さなもの音が聞こえた。その音だけで目覚めた綱也は警戒し、辺りを見渡した…これも魔物ハンターたる綱也の癖であった。綱也が異常の有無を確認して、安全を確認すると、次はドアを見た。今日から同居人がいることを思い出したからだ。綱也がドアを開けるとそこにはその同居人──天法院美空が立っていた。
「みっ美空さん、どうしたんですか?」
「…1人で部屋で寝るのが、怖くて…出来れば一緒に寝てくれませんか?」
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眠れねぇぇー!!
…初めまして。天文時綱也です。
何故眠れないかというと、少し時を遡ること、数十分前───
「出来れば一緒に寝てくれませんか?」
何て言われたので俺はついつい許してしまった。まあ、横に人が寝てるだけだし大丈夫だろう、ベッドも広いし、何て余裕かましていたら───
少し経って眠りに着いた美空さんが寝ぼけてなのか、わざとなのか、俺の腕に抱き着いて来た。その上、頬を腕に擦り付けて笑顔になっているので振り払う訳にもいかず、冒頭のシーンに戻る。
はあ、どうしてこんなことになったのか…まあ、俺の所為なんだけとね!!美空さんの抱きしめる力がどんどん強くなっていくし、美空さんの胸が俺の腕に当たっているどころか美空さんの豊満な胸に俺の腕が埋もれていくし、今の美空さんは薄いパジャマを着ているだけでその体温が俺にどんどん伝わって来て、それに比例するように俺の体温も上がっていって、とても幸せだけどとてもじゃ無いけど眠れない。まあ、寝るのは諦めて、美空さんの寝顔を楽しむことにしよう。俺の隣には…美しい長い黒髪が窓から入る月灯りによって光っている女性───美空さんが至近距離にいる。天使のような寝顔の美空さんを見つめていると、不思議と眠気が襲ってきたので意識を手放した。
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次の日の朝、美空は朝早くに目覚めると大声を出して驚いた。目の前に彼女の想い人の寝顔があったので…幸い綱也は目を覚まさなかったので美空は深呼吸をして落ち着いた。そして、未だ目を覚まさない綱也を見て、せっかく落ち着かせた心臓をばくばくさせて再度綱也に抱き着いて、綱也が目を覚ますまで顔を真っ赤にしたのが美空にとってのMTポリスでの始めての朝だった。
綱也の口調は相手が女性(美空)だったから丁寧でもともと、俺口調です。間違った訳ではありません。