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ぼっちだけど寂しくない!  作者: 木原ゆう
003 最後も孤島篇
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side02 解説士ブックル

 やあやあ、みなさんこんにちは。

 え? お前は誰だって?

 ふふーん、いいだろう説明しよう。

 僕は『解説士ブックル』というしがない熟練プレイヤーさ。

 今回はこのゲーム、『HEO Quest』について説明してあげようと思ってね。


 みんなも知ってる通り、このゲームはVRMMOゲーム――つまり大人数でやるオンラインゲームってわけだ。

 この仮想空間で仲間と協力プレイを楽しんで、各所に散りばめてあるクエストをクリアするってのが大体の目的かな。

 

 え? 仲間と協力せずにぼっちでプレイしている奴もいるって?

 はは、そんなわけがないだろう。

 だってこのゲームのタイトルにもある『HEO』とは『help each other』。

 つまり『仲間とともに助け合う』っていう意味だよ?

 どこの世界にそんなタイトルのゲームを買って、ぼっちプレイを楽しむプレイヤーがいるって言うんだい。

 君もおかしなことを聞くね。


 話を戻そう。

 この『HEO』には様々な『ジョブ』と呼ばれる職業が存在するんだ。

 なんとその数は1000もあるのだよ!

 すごいだろう?

 それら膨大の数のジョブから、プレイヤーはたったひとつを選択してプレイしていくことになる。


 君もログイン画面は見たことがあるだろう?

 そうだ。

 様々な種族やら容姿などを選択する画面だ。

 その項目の最後にジョブ選択画面があって、それでどのジョブでプレイするかを決定するというわけだね。


 一度選択したジョブは二度と変更できない。

 だから慎重に慎重を重ねて、どのジョブにするのかをじっくりと考えて…………え?


 ジョブチェンジはできないのか?

 はは、君ってさっきから面白いことばかりを質問するね。

 いいだろう、僕も解説士としてプレイしてかれこれ3年だからね。

 そんな素っ頓狂な質問にも真摯に答えよう。


 さっきも答えたけれど、このVRMMOゲームは『仲間と共に協力するオンラインゲーム』だ。

 しかし選択できるジョブはたったの一つだけ。

 ……もう分かるだろう?

 絶対に一人ではクリアできない仕様になっているんだよ、このゲームは。

 クリアはおろか、序盤のストーリーでさえも進めていくことは困難だろうね。

 つまり、『ジョブチェンジなど絶対にできない仕様』になっているんだ。

 だから初期設定画面で慎重に選ばないといけない。


 でも、自分とは違うジョブの人間とパーティを組んで、互いに足りない部分を補っていく。

 そうすることでお互いに絆が深まり、交流を重ねていくことで、また新たな絆が創出される――。


 いいね、気持ちが高ぶってくるよ。

 仲間の大切さを心底理解させてくれるゲームだよ、この『HEO』は。

 これで理解したかな?

 ぼっちプレイなんて絶対にありえないんだってことが。


 さあ、解説を続けようか。


 無事に種族や容姿、ジョブが決まったらゲーム開始だ。

 開始地点は『ゲルニド連邦国』という国にある『アズラ』という街のギルドだね。

 この巨大ギルドで最初からパーティを組むことができるし、戦闘操作なんかを指南してくれる訓練施設もあるから、まずは操作に慣れておくといい。


 戦闘操作には2種類あるけど、ほぼ全てのプレイヤーが『フリー』を選択するかな。

 ゲームの初心者なんかは『ターン制』を選択するかもしれないけれど、それだとVRMMOの醍醐味を完全に無くしてしまうだろう?

 リアルを追及するゲームなんだから、僕もターン制はお勧めしないな。


 このゲームの戦闘ではとにかく、敵からのダメージをどれだけ『避ける』かが重要になってくるんだ。

 ターン制の場合は相手の攻撃に合わせてタイミングよく空間をタップすれば『防御』ができるんだけど、フリーの場合は自由に動いて敵の攻撃を『避ける』ことができるからね。


 慣れてくればノーダメージで戦闘を掻い潜れるようになるんだから、そういう意味でも圧倒的に『フリー』のほうが使い勝手がいいよね。


 ……え?

 ターン制でプレイしているプレイヤーを知っている?

 しかもゲーム開始地点が無人の孤島……?


 はは、君はさっきから僕をからかっているな?

 そんなプレイヤーがいるわけないだろう。

 僕は解説士だぞ?

 そんな情報は僕の耳にも入ってきていないし、当然説明書にも載っていない。


 ……可能性があるとしたら『バグ』かな。

 君も知っている通り、今現在『HEO』はログアウト不能状態にある。

 各所でバグが見つかってるとの報告もSNS上で溢れているし、実際に僕もいくつか発見しているけれど……。


 ……なあ、君。

 そのプレイヤーの名前とか知っているかな。

 そんな不幸の塊みたいな人間が、本当にこの世にいるのか気になってきたよ。

 実に興味深い。

 解説士の血が騒ぐとでも言うのかな。


 ……え?

 それは教えられない?

 なぜ?

 ……そのプレイヤーは、絶対に人に会いたがらない、から?


 うーん。

 そうか……。

 ならば僕が持っている情報力を駆使して、こちらから打って出るしか……。


 あ、ごめんごめん、こっちの話。

 でもありがとう。参考になったよ。


 僕もログアウト不能状態になってから、色々と情報を集めてはSNS上にアップしてるから、君も時間があったら見てみるといいよ。

 噂では『シグルド』という熟練プレイヤーが裏切り行為を働いたらしいし。

 このゲームで相手を裏切るという行為は御法度なんだけどね。

 しかし今は非常事態。

 どこで何が起こるか分からないし、僕らの現実世界の身体もどうなっているのか分からないしね。


 お互いに、色々と気を付けよう。


 ――じゃあ、またいつか君に会えることを願って。




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