01 システムがよく分からない!
さあさあ始まりました、わたしの異世界生活。
え? 異世界違う?
でもVRの世界なんて異世界みたいなもんじゃん。
というかVRが何の略なのかも知らないわたしにとったら、なんだって異世界になっちゃうんだけど。
とりあえず、どうしよう。
さっきからずっとSNSがパンクして、あちこちで暴動みたいのが起こってるっぽい。
ただでさえ人間なんて怖い生き物なのに、こんなパニック状態じゃ何されるか分かったもんじゃないよね。
でもお腹も空いてきたし、ずっとこの洞窟に隠れているわけにもいかないし。
うーん。
というか、ゲームの中でも餓死とかしちゃうのかな。
なんかその辺のこととか説明書に書いてあった気がするけど、まったく読まずに始めちゃったからな。
どうしよう。
SNSを空間に表示するボタンは適当にいじってたら発見したけど、それ以外はまったく分かんない。
ええと……。
『棒』
うおっ!?
なんか押したらいきなり出てきた!
『棒』……?
ああ、この足元に落ちている木の枝みたいなやつか。
この洞窟ってそんなに広くないんだけど、なんかゴミみたいなのがいっぱい落ちてるんだよね。
ゴミというか、燃える素材?
枝とか落ち葉とかそんな感じのがいっぱい。
ええと、どれ押したっけ……。
『鋭い棒』
あ、これか。
さっきのSNSを表示させる空間のちょっと右上辺り?
そこをダブルクリックの要領でちょちょんと人差し指で叩くと、目の前に落ちている物の名称が分かるみたい。
ていうか、めっちゃ足元に枝が落ちているから、これはまた別の『棒』ってことかな……。
もうちょっと押してみようか。
『いい感じの棒』『短い棒』『ただの棒』『えっちな形の棒』『落ち葉』『落ち葉』『落ち葉』『落ち葉』
うお! いっぱい表示キター!
うん、うんうん。
……なに『えっちな形の棒』って。
そんな卑猥な表現とか別に求めてないから。
ていうか棒と落ち葉しかねぇな! この洞窟!
そんな突起物と枯れ葉ばっかりに囲まれたって、どうコメントしたらいいのか分かんないよ!
まあ、とりあえずこの『いい感じの棒』っていうのを拾ってみます。
うん。いいね。
この掌にジャストフィットな感じ。
嫌いじゃないよ、嫌いじゃない。
あ、なんかメッセージが出た。
《いい感じの棒を装備しました》
ほうほう、なるほど。
確かに装備したね、わたし。
こうやって物を拾って、装備をするわけか。
よくあるゲームの設定と同じだね。
ちなみに、この棒はどれくらいの強さなんだろう。
そういうのもどこかを押せば見れるんだろうけど、なんせ説明書を読んでないからな。
ええと、これかな……。
《ミルクはリンボーダンスを踊った!》
……。
うん。
あ、ごめん。
わたしのプレイヤーネームが『ミルク』っていうんだ。
まあ、それはいいとして……。
ええと、今のは一体何だろう……。
わたしの身体が勝手に動いて、今しがた装備した棒をなんか水平に構えて。
それで……リンボーダンスの真似?
なんか意味があんの? このボタン……。
まあいいや。気にしない。
だって誰もいないし。
良かった。洞窟で試せて。
金輪際、二度とこのボタンは押さないと誓おう。
で、装備品を確認するのはどれやねん!
これか!
《ミルクはいい感じの棒を投げ捨てた!》
おい!!
勝手に捨てんじゃねぇ!!
……あーあ。
なんか知らないけど消滅しちゃった……。
もしかしたらレア装備だったかもしれないのに……。
どうしよう。
SNSの表示ボタンとアイテム表示ボタンしか分からない。
というか、わたし自身のステータスも分からない。
お腹も空いたし、頭が回らない。
そうか、お腹空いているからいけないんだ。
なんか食べれば、このわたしの素敵頭脳でこの窮地を脱せられるかもしれない!
なので、とりあえず洞窟を出て食料を探すことにしました。