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ぼっちだけど寂しくない!  作者: 木原ゆう
000 孤島篇
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09 今更だけど自己紹介します!

 明日田場胡桃あすたばくるみ、20歳。

 地元の高校を卒業したのが2年前。

 それから今に至るまで、ずっと親のすねをかじって生きてます。


 お父さんは銀行員。

 お母さんはスーパーのパートさん。

 だから日中はわたし以外に家に誰もいない。

 わたしが宅配便の荷物を受け取ったり、たまにみんなの夕飯を作ったり。


 就職をしようしようと思うけど、お父さんもお母さんも私に甘いから強制しない。

 それに甘えて早2年も経過しちゃいました。


 昔からコミュ障で、男の子と話したこともほとんどなく。

 当然彼氏いない歴=年齢という可哀想な女の子……と世間は見るだろうけれど。

 わたしは別に自分を可哀想だとか思ったことなど一度もないんです。


 むしろニートをしていても誰にも責められないし。

 地元にいた同級生はひーこらひーこら言いながら、半うつ状態になりながら仕事を頑張っているとか聞くと、そっちのほうが可哀想になってきちゃうし。


 たまに道端で会うと、みんな下向いているんだよね。

 学生時代はわたしが下を向いて歩くほうだったのに、社会人になったらみんな一斉に下を向いちゃっている始末。


 それで余計に社会に出るのが怖くなっちゃって、みんなが無理ならわたしならもっと無理だと確信して。

 まあ、そんなこんなで今に至るわけなのです。



 ある日、お父さんにずっと欲しかったゲームをおねだりして。

 年末で忙しいのに、仕事帰りにゲームショップに寄って本体とセットで買ってきてくれて。

 それが今やっているゲーム。

 『自由度の高い最新型VRMMOゲーム』って謳い文句のやつ。


 今までのゲームのようにコントローラーは存在せず。

 ヘルメットみたいなのを被って、ベッドで横になるだけで起動する最新型のゲーム機。

 脳内に電波が送られて、映像は直接脳に流されて……とか、なんかそんな宣伝だったように思う。


 細かいことはよく分からないんだけど、寝たままゲームができるっていう部分がわたしのハートをがっちりと掴んだわけです。


 だってゲームって疲れるじゃん?

 手が痺れちゃうし、肩も凝るし、目も疲れるし。

 寝たまま身体を動かさずにできるって、理想的だと思うんです。

 なんか介護系の終身医療でもこのシステムを使ってどうたらこうたら……とかも聞いた気がします。


 とにかく、わたくし明日田場胡桃、20歳。

 満を持してこのゲームにログインして、最初の設定画面でプレイヤーネームを『ミルク』にして。

 あ、『ミルク』っていうのは、わたしの学生時代からの仇名なんです。

 別におっぱいが大きいとかそういうのじゃなくて、名前が『胡桃』だからっていうだけなんですけど。


 まあそれは置いておいて。

 設定画面で『容姿変更』っていう項目があって、現実世界のわたしとは違った細かい設定ができるらしいんだけど、わたしはそれをすっ飛ばしてゲームを始めてしまいました。


 え? どうしてって?

 だってわたしぼっちだし。

 ゲームの中でも誰とも触れ合う気なんてさらさらないから、容姿は現実世界のわたしのままで『OK』ボタンを速攻で押しちゃった。


 ちなみに設定できるのは『顔』『体型』『身長』『体重』の4項目と、それぞれの細かな詳細変更。

 それと『人間族』『エルフ族』『ハーフエルフ族』『魔族』『ハーフ魔族』『竜族』『ハーフ竜族』『獣族』『ハーフ獣族』『妖族』『ハーフ妖族』『巨人族』『ハーフ巨人族』の13項目だったかな。


 発売して1年以上経ってるから、アップデートで結構増えて、まだこれからもどんどん増えるとか聞きました。

 この辺もよく分からないから、速攻で『人間族』を選択したし。

 みんな、この初期設定に2時間くらいはかけるらしいけど、わたしは5秒だったな。

 説明書も読まず、とにかく始めてしまうのが昔からの癖なんです。


 で、世界観の説明シーンとかに移ったんだけど、それも強制スクロールでほとんど読んでなくて。

 いちおうゲームだからストーリーとかがあるみたいなんだけど、たぶんどれも他のプレイヤーと協力しないとクリアできないとか、そんな感じの予感がしたのでスルーしちゃったっていう。


 もうね、ぼっちの極みだよね。

 こんなんで社会に出てうまくやれるのかっていう。

 ゲームの中ですら、他人に話しかけられないなんて。

 就職活動の面接なんて、考えただけで吐いちゃいそう……。


 とまあ、これがゲームを始めた経緯です。


 あ、そろそろ目が覚めそう。

 うん。これ、夢の中だって分かってた。


 さあ、再びわたしの冒険が始まります。



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