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「えっと……。話してもいいでしょうか?」
「えぇ。構わないわ」
天野さんはモジモジと体を動かした。こんなに恥ずかしそうにしている彼女は、女の子らしく同じ男として守りたくなる。が、一方の高梨さんは、天野さんの依頼を賜ったにも関わらず、足を組みどことなく聞く態度が悪いように感じた。俺の時よりも雑なのは気のせいだろうか?
もしかして、高梨さん。期待の眼差しを送ってみたところで、彼女は気づく様子などない。やっぱり、『気のせいか』と思うと体は重力を惑い、だるさが訪れた。
「ってなわけなんですけど……」
「それって本当に恋なのかしら?」
「えっ……?」
「なんでそんな酷い事。彼女は本気なのに……」
俺はろくに話を聞いていないにも関わらず、つい口を挟んでしまった。すると、彼女はギロリと睨みこちらを牽制してくる。その予想外の迫力に思わず怯んでしまった。
「あら? 何かしら? 青木君」
「いえ。何でもありません」
「あの……。ケンカはやめてください」
天野さんはオロオロと俺達を交互に見つめていた。それにしても、高梨さんの勢いに負けてしまう俺。そのままの高梨さん。ケンカと勘違いし宥めてくれる天野さん。もしこれが、ゲームならばバランスの良いパーティーなのではないかと思ってしまう。高梨さんは扱い難いキャラだが、必殺技が半端なく強い隠れキャラ。防御の俺。回復の天野さん。ラスボス(天野さんが片想いしている相手)は目の前だ。三人で作戦を考えれば、絶対に良いアイディアが浮かび、高梨さんだって賛成してくれるはず。
「そうかしら? あたしにはただの憧れのように感じるけど」
俺の思考を完全無視し、高梨さんは言葉をズバズバとはいていく。高梨さんの高台から人を見下す態度には腹が立った。もう一度反論し、天野さんの助太刀をと思考を巡らしたところで、また一言。
「相手の好きなところ十こ言えるかしら?」
(天野さん。高梨さんに負けちゃダメだ! ほら。高梨さんに好きな気持ちを見せつけてやれ!)
「……えっと。言えません」
「そう。ならば、相手に貴女の気持ちは……」
完全にしょぼくれた天野さん。完全に俯き、目じりにはうっすらと涙を浮かべている。恋愛相談をしにきて、アドバイスや勇気をもらえると期待していたのかもしれない。しかし、高梨さんの言葉は真逆で。第三者の俺が聞いても胸糞悪い。
ギュッと握りしめた天野さんの両の拳はブルブルと震えていた。
「試合には何故か出場しないんですけど、部の皆に慕われていて、ファンの女子生徒も沢山いて、それから、それから。イケメンだし、練習中に流れ落ちる汗とか、かっこよくて」
(おぉ。よく言ったぞ天野さん)
いい調子。これならば天野さんは高梨さんを説得できる。勝気で高梨さんをみると、何故だか彼女は余裕の笑みを浮かべていた。
「なら、告白してみなさい」
高梨さんは天野さん。そして俺をちらりとみて、うっすら笑みを含んでいた。