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迅雷のセルヴァー  作者: 木成和也
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プロローグ

 何なんだ? いきなり転校してきた二人は容姿も良いし、その上頭も良い。

「はぁ~~」

 今朝、朝っぱらからいきなり小宮成基(こみやせいき)は机に突っ伏して溜め息を付いた。

 彼は今通っている学校、田上(たなかみ)市にある白銀(しらがね)学園中等部三年二組の教室の自分の席にいる。

 あと一分でチャイムがなり、受験生にとって大事な二学期が始まる。

 この夏休みは中学生活最後の夏休みで勉強をしながらもとことん遊んでいた。本当にあっという間の夏休みで何か物足りない。

 とことん現実を突きつけられる。現実逃避の余地さえ与えてもらえない。

 ――キーンコーンカーンコーン。

 現実の残酷さを痛感しているとついに二学期開始の合図を込めたチャイムが鳴り響いた。それと同時に担任である男性教員の菅原慶吾(すがわらけいご)が教室の扉を開けて入ってきた。それを確認して立っていた生徒たちが急いで自分の席に戻る。これからまたいつもの日常が始まる……はずだった。

「今からホームルームを始めるが、その前に転校生を二人紹介する。入ってくれ」

「転校生だって?」

「こんな時期にか?」

「それも二人だって」

 転校生という言葉に教室の中が一斉にざわつき始めた。それは成基も同じようなものだった。正直この日常に飽きてきたいた成基もいつもと違う出来事に興奮していた。

 入ってきた二人の転校生の一人は結構イケメンな銀髪の男子、もう一人はものすごい黒髪の美少女の二人だった。

「キャー!カッコいい!」

「凄い!あの人イケてる」

「うわ、かわいい!」

「やべっ、俺惚れたわ」

 女子からは銀髪の少年の顔立ちに、男子からは黒髪の少女の美貌に正直な感想が恥じらうこともなく飛んでいる。それに対してその張本人たちは何事もないかのように平然と立っている。

「かわいい……」

 教卓の横に立つ少女に釘付けになっていたのは成基も例外ではなかった。精霊のようなきれいな顔。黒く真珠のように澄んだ瞳。腰まで流れる宝石のような輝きを放つ漆黒の髪。簡単に潰れてしまいそうな華奢な体。すらりと伸びる雪のように白い手足。そして何よりも美しい黒髪に制服の黒が似合っている。

神前翔治(かんざきしょうじ)だ」

北条美紗(ほうじょうみさ)。よろしく」

 美紗の声は見た目にあったきれいな声で凛と澄んでいた。

「二人の席だが……北条は小宮の隣な。神前は……黒瀬の前だな」

「えっ」

 美紗が成基の隣という菅原の言葉を聞いて思わず声を漏らしてしまった。あんな美少女が隣と考えるだけで顔から湯気が出そうなくらいだ。

 いきなりのことに何から話せばいいのか分からない。だがこれは仲良くなるチャンスだ。この機を逃すわけにはいかない。

 成基が勝手に一人であたふたしている間に二人は菅原から指定された席に付いた。成基の席は一番後ろの窓側から二番目だから美紗の席は一番後ろの窓側という人気ナンバーワンの席となった。

「あ、あの、俺は小宮成基。そ、その、よ、よろしく」

 少し頬を赤らめて言葉に詰まりながらもなんとかそれだけをいい終えてほっとしていたが、美紗の反応は成基の期待するようなものではなかった。美紗は小さな鞄を机の横に掛けると、成基を一瞥して、

「…………よろしく」

 というだけの素っ気ないものだった。

 見た目はいいのにそんな返事のギャップにしばし唖然とした成基だが、まだ転校してきたばかりだから慣れてないのだろうと勝手に思い込んだ。そう思いたかった。

 しかし彼女には凄く驚かされることがあった。

 一時間目の数学の時間、転校してきたばかりで教科書がない彼女に教科書を見せようとした所、「いい。必要ない」と返され、それなのに先生に当てられたとき、難しい二次方程式の利用の文章題を意図も簡単に解いてしまう。それは他の教科でも同じだった。教科書を見せてもらうのを拒み、先生に当てられたときにはちゃんと正解を答える。特に凄かったのは理科の科学の授業だった。

「じゃあどんな物質が必ず陽イオンになってどんな物質が必ず陰イオンになるか……北条言えるか?」

 と訊かれたときにスッと立ち上がり、

「はい、金属は必ず陽イオンになってハロゲンは必ず陰イオンになります。ただハロゲンの中でもアスタチンに関してはやや陽性が高いです」

 とても中学生とは思えない発言をして教室のなかを呆然とさせ、その張本人はクールな表情のままで着席した。

「お、おぉ、よく知ってるな」

 と、教師すらも驚いていた。

 時間を重ねるごとに成基は北条美紗という人物が解らなくなってきた。いきなり美少女が転校してきて、無口で無愛想だと思えば教科書なしで恐るべき学力を披露する。休み時間はいつも一人で自分の席から外をボーッと見ている。翔治は翔治で一人で読書をしている。

 だがこの少女たちがこれから成基たちの運命を左右することをまだ彼は知らない。





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