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蛍と鷹  作者: 駿河留守
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目が合う

入学式から1週間がたとうとしている。私は相変わらずのおひとり様なのである。

今は授業がすべて終わり昇降口まで降りてきて上履きから外履きに履き替えようとしているところである。そんな一人さびしい私の横を楽しそうにワイワイしながらある集団が横切る。その中心には一二三さんがいた。例のカラオケに行った集団でも特に仲のいい者たちが集まった集団だ。男女合わせて5人。とても楽しそうで羨ましい。でも、私には到底たどり着くことのできない関係だ。半分以上諦めてあがくのもやめてただ、今の自分の現状を受け入れて生きていく以外に私に道はなかった。

昇降口を出るとそこには校門に向かってずらっと生徒が並んでいる。それぞれ、看板や目立つ色紙を使ったり、ビラを配ったりと必死になっている。その人たち全員が2,3年の先輩方たちだ。と言っても2年生の人は私と同じ年なわけだ。

これは俗に言う部活の勧誘というものだ。この学校は部活強制参加なのだ。と言っても強制なのは最初の半年だけで半年たてば退部することが出来る。私も適当な部に名前だけ籍を入れて半年後に適当に止めてしまうつもりだった。

あの人の姿を再び見るまでは・・・・・・。

一二三さんを率いる集団はいちいち部活の勧誘を聞いて回っている。あの調子だといつ学校から出れるか分からない。それに比べて私は勧誘の嵐を回避しつつ校門に進んでいると私の目の前にビラを持った女子生徒が立ちはだかった。無視して横切ろうと思って顔をあげると今度は本人も公認してくれるであろう。目が合った。向こうはたぶんこれが初めて、私にとってはこれが2回目だ。急に体中の至る所からじんわりと汗がにじみ出て緊張が走って足が震えて、痺れるように全身に熱が広まって鼓動が早くなる。頬が赤くなっているのが自分でも分かるくらい熱い。自分の身に何が起きているのか今でもはっきりしない。彼女を目の前にすると自分が自分でないような感じすらした。

そんな私を私で失くしてくれる人は目の前にビラ持って立ちふさがる。

その人の名前は矢々島鷹音。

こんな間近当たり前だが初めてだ。近くで見ると身長は私よりも頭半分くらい高い。入学式の祝辞の時は下してあった髪も今はまとめてポニーテールにしている。服装も制服ではなく白を基調とした肩を完全に出したキャミソールにパンツが見えてしまうのではないかと思うくらい短いスカート姿で目のやり場がない。

だから、顔をしっかりとみてしまった。すると矢々島先輩は私に笑顔を見せて私にビラを渡してくる。


「テニス部をよろしくお願いします!」


その笑顔に私は全身が溶けてしまいそうだった。ビラを受け取ると再び私に笑みを見せてビラの塊を抱えて次のターゲットに向かってビラを配りに小走りで行ってしまった。

私はしばらく困惑してしまってその場から動けなかった。

なんであの人を前にした時だけこんなに私の中の何かがぐるぐると困惑するのだろう。この気持ちはなんなの?分からない。知らない。こんな気持ちに私は一度もなったことがない。

速くなる鼓動を必死に抑えるために両手を胸に当てる。そのせいでせっかくもらったビラがぐちゃぐちゃになってしまった。そのビラに目を通す。


「・・・・・・テニス部か」


この瞬間、私は何部に入るか決まった。

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