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蛍と鷹  作者: 駿河留守
17/21

デート

「あれ?榎宮さんこんな時間からお出かけ?」

「うん、ちょっとね」


玄関で靴を履いていたら半目で寝癖で髪の毛がぼさぼさのひよこさんが部屋から出てきた。今日は日曜日。普段のひよこさんならもう仕事に言っている時間だが今日は休みでのんびり寝ていて今さっき起きてきたようだ。


「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃ~い」


大きな欠伸をしながら私を見送る。今日のシェアハウスには珍しくみんないる。日曜日なだけあって仕事をしている社会人メンバーが充実した休日を送っている。私が起きた時にはすでに三根さんと芳美さんが起きていた。他の人たちはまだ寝ているようだ。

日曜日の今日。私は鷹音先輩と隣町までお出かけだ。早く起きてしまったのはふたりっきりのデートのようなシチュエーションを想像するだけで鼓動が早まって体が火照り眠れる状況ではなかった。実際に寝たのは2、3時間くらいで若干寝不足だがこれから始まるデートに心はウキウキで寝不足なんてなかったことになっている状態だ。

お昼ちょっと手前のこの時間。約束では私の住むシェアハウスの前に鷹音先輩が自転車で迎えに来るという予定だ。私の過去の事件によって電車に乗ることが出来ないことを察して隣町まで鷹音先輩の自転車で向かうことになった。もちろん、シェアハウスには共同の自転車が完備されている。三根さん曰くホワイトフレームとジャイアントスパークというどちらも普通のママチャリだ。三根さんがそう呼んでいるので私たちも自然とそう呼んでいる。そのホワイトフレームかジャイアントスパークを使って鷹音先輩と共に隣町に行ってもいいのだが後ろに乗りたいという私の欲求がそれを拒んだ。先輩の暖かくて大きな背中に身を任せていっしょに風になりたいなと思ったからだ。

天気も快晴で雨は降らないという予報だ。絶好のデート日和だ。玄関前の窓の反射を利用して身だしなみの最終チェックを行う。服装は空色のロングスカートに白のノースリーブシャツで腕を大胆に出した。ハットをかぶってワンポイントつけている。普段暗いイメージが強いから明るい感じで行った方がいいと芳美さんに言われてこうなった。芳美さんに手伝って助かっている。こんな風にお出かけするのはほぼ初ともいえるのでどうしたらいいか分からないからだ。


「よし」


と窓越しに気合を入れていると


「気合入ってるね」


その唐突に背後から話しかけられて肩をびくつかせる。ゆっくり振り返るとそこには普段はなかなかお目にかかれない私服姿の鷹音先輩の姿があった。紺色のショートパンツに明るい水色のデニムの7分丈のシャツの前を開けて中に幾何学模様の入ったTシャツを着ている。夏っぽいイメージがありとても魅力的だ。思わず見とれてしまってその場から動くことが出来なかった。


「さぁ、行くよ」


軽く2回ほど見慣れた自転車の荷台を叩いて早く乗って催促される。慌てて玄関前の階段を駆け下りて手荷物を前の籠に入れてもらってさっそく出発する。

初夏の陽気が漂い体を火照らせる熱は自転車から吹き抜ける風が心地よく覚ましてくれるが、鷹音先輩にぴったりとくっついている私の鼓動と熱は一向に引く気配はなかった。これから何をするのか。どれも私にとってはかけがえのない楽しいことであることは間違いない。今日は何もかも忘れて楽しもう。鷹音先輩を取り巻く噂とか私の過去とか人間不信なこととか全部。

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