入学式
いいタイトルが思いつかず「蛍と鷹」なんて誰も興味ないようなものになってしまった・・・・・・。
どうせ、誰も見ないんだし、思い切ったことを書いてみよう( ´∀`)
というわけで中盤はかなり危ない感じになってます。最後まで読んでくれるとうれしいです。
「え~、諸君。入学おめでとう。これから新しい高校生活が始まるわけだが・・・・・」
白髪の覆われた校長がとってつけたような話を私たち新入生に聞かせる。この場に誰一人校長の話を聞いている者なんていないだろう。誰もがあくびをこらえて寝ないようにだけ心がけているのが目に取るように分かる。私としては早くこの場から、この学校の敷地から出たい。この式が終わった後は教室に行ってまだ顔を見たことのない担任の話をまた同じ心境で聞かなければならない。そんな憂鬱なこの場から早く出たい。別に入学式とか高校とか自体が嫌いなわけじゃない。
この周りにいる私と同じ年と言われるこの生徒たちといっしょにいるのが嫌なのだ。
私の誕生日は4月2日。早生まれにぎりぎり入ることなく、私は誰よりも早く年を取る。高校の入学式に出席している時には私はすでにこの学校の2年生の人と同じ年になっているのだ。周りに座っている人たち全員が私とよりも年下で後輩にすら見える。学校が始まる始業式や入学式の時はそんな妙な気分になる。みんな年下、みんな後輩、私と同年代になってくれるのはしばらく後になってから。4月になるといつもこんな感じの私が嫌いで仕方がない。
みんなと同じでいたけど、同じになれない疎外感、孤独感にいつも浸っている。そのせいかみんな同調することも苦手でいつも違うことをしてしまう。いろんなことがみんなと違うことがすごく嫌だった。
そんな私にも気軽に話しかけてくる子は何人かいるのだ。でも、どうしても毎回不機嫌な態度で対応してしまい相手には悪い印象しか残らない。なんとなく年下の子にため口で話されていることに腹が立つというかいい気分に離れない。自分の意思では気にしないようにしていても悪い悪魔が私を操っているように相手を自分よりも年下で下級の存在なんだ。ため口なんてありえないだろ。そんな偉そうな態度を自然と取ってしまっているのだ。さらに中学はとある事件もあってかさらに人との関わりというものがなくなって行った。
唯一の私が持っている人との関係は今の現住居であるシャアハウスの人たちだ。あのシェアハウスにおいては私がどれだけ誕生日が早く訪れようとも誰も私と同じ年にはならない。一番年が近いのは、今は3つ年上で本来は4つ年上の八坂豊香さんだ。現役の大学生で剣道部に所属している。次に近いのはシェアハウスでニートをしている三根さんか風呂工事の仕事をしているひよこさんのどっちかだ。正確な年は知らないけど、ふたりとも22、3くらいだと思う。そして、喜海嶋芳美さん。彼女は24歳でシェアハウスに住む女性陣では最年長だ。ひよこさんと年は変わらないのにいつも冷静で大人びた風格のある憧れる存在だ。そして、新人刑事の山下さん。年は26だったと思う。最後に藤見さんだ。年は28だったと思う。下の名前は知らない。私がシェアハウスに入った当時からいたけど、未だに謎の多い人だ。仕事は引っ越し業者だというけど、たまに仕事の都合で帰ってこない時がある。引っ越し業者に残業もあるものなのかと疑問が残る。
私がまともに会話をする人たちはこの6人くらいだ。
シェアハウスに住んでいるのはみんな他人だけど、私にとっては父さんと母さんとは別の第2の家族だ。ただの家族間を赤の他人とよく話しているとは言わない。少しでも社会に溶け込めるように私も努力しなければならない。でも、なぜかそれは踏み込む一歩手前で足踏みをしてしまう。理由は分からない。長らく親友と呼べる同年代がいなかったせいで感覚がおかしくなってしまっているのだ。何かこの私の目の前にある人との壁を完全に粉々に壊してくれる他人が現れてくれないだろうか。そう、待ち望んでいた。この学校にそんな人がいるといいなと淡い期待をしながら退屈な入学式を見守る。
みんなと同じでいたいけど、それを自然と拒む自分を壊してくれる人と私はこの春出会うのだ。
でも、その出会いがさらに私をみんなと違った方向に進んでしまう。誰も知らない私、榎宮蛍子になってしまったのだ。その出会いは私がいつも疎外感と孤独感に襲われる入学式で始まったのだ。