Bray Strahl
とある世界。
ある王家に双子の兄妹が生まれた。
王国は、双子の誕生を心から祝福した。
──けれど…数年後、不幸は突然訪れた。
たまたま城内の図書室で調べ物(武道の心得・魔道書…等)をしていた王子は、突然の侵入者達に驚いていた。
侵入者達は、それぞれ異なった姿をしている。
彼はたまたは読んでいた魔道書に、彼らによく似た姿を見ていた。
「なっ…『黄泉の者』…!?」
本を読む限り、本来はいない彼等に驚いていた。
しかし、ある条件を除いてしまえば、実現可能だった。
──ある対象物を、黄泉の者に変換させる。
そんな彼の前に、親友のクラウトがダイレクトに窓を突き破って入ってくる。
(ていうか此処、三階)
「大丈夫か!?」
「俺は君が心配だよ!!」
冗談みたいにクラウトの頭から血が流れているが、特に何の問題もなさそうだ。
そんな二人の間に、ある女性の声が聞こえる。
「おやおや…騒がしいですね…」
二人が声のした方を見ると、ローブを羽織った女性がいる。
女性の顔はフードのせいで口元しか見えないが、多少の表情は伺える。
二人は女性に警戒して、臨時戦闘態勢に入る。
「お前…何者だ…!!」
女性は何も答えない。薄く微笑んでいるだけだ。
その様子に多少苛立った二人が聞く。
「…この物騒な人達は、君が連れてきたのかい?」
「ええ、そうです」
「へぇ、お前はこいつ等を使って、一体何がしたいんだ?」
女性は考えたかのような素振りを見せ、先程よりも更ににっこりと微笑む。
そして、その表情とは釣り合わないような発言をした。
「……そうですわね…──
──世界征服。といったところでしょうか…」
まるで幼い子供のように無邪気に。しかし、微かにフードから見える目は、狂気を滲ませていた。
「…さて、あなた方には、此処で消えていただきますわ」
女性が何か怪しげな術を唱え始める。
二人は危険を察知し、その場から離れようとした。
…が、間に合わなかった。
二人の目の前に、女性の引き連れた者が跳躍した。
「残念でした…『BAD END』…というわけです」
そこで、二人の意識は途切れた。
そのとき、一瞬だけ薄らと誰かの声が聞こえた気がした──
──次に目が覚めたときは、どこかの部屋だった。
「……ここは…」
廊下に出てみると、見たことないような場所だ。
「うわあ!!!!」
正面のドアからクラウトの声が聞こえた。
他に声が数人。
彼は、何となくその部屋のドアを開けてみた。
しかしその数秒先にドアが開く。
「…あら?」
そこから、眼鏡をかけた同い年ぐらいの少女が出てくる。
「よかった。気が気がついたのですね」
「あ…いや…その…」
「…あ、お友達のほうですか?それならこの部屋に…」
少女の後ろを見ると、そこには…
幼い少女二人の面倒をみているクラウトがいた。
ちなみにその近くにもう二人ぐらい同年代ぐらいの少女がいるが、
辞書の倍の厚さはありそうな本を二人で読んでいる。
「…ちょっと、私の手伝いをしてくださっているのですが…」
「…さっきの声はあれか…」
現在のクラウトの様子は、ちびっこ二人に遊ばれてる。
「…あ!」
一人の少女が、少年の存在に気づいて声を上げた。
たどたどしい足取りで少年に近付く。
「ねーね、あそぼー!」
「えっ…いやあの…うわっ!」
思ったよりも少女の力が強く、引っ張られる。
「ああっ!?その人は!!…えっと…」
「──ブレイ・シュトラール」
「…え?」
「ブレイ・シュトラール。それが俺の名前だよ。
ついでにいうと、怪我はもう平気だよ」
少年…ブレイは、軽く微笑んだ。
※ただし彼は引っ張られている。