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シラナイ

ナナは、もう一度お菓子を見る。


 色も、形も、

 森で見たことのないもの。


「街って、どんなとこ?」


 そう聞いたのは、

 自分でも少し意外だった。


 カイさんは、少し考えてから答えた。


「人が多い」


「森より?」


「うん。ずっと」


 ナナは、机の上に肘をつく。


「じゃあ、うるさい?」


「場所による」


「静かなとこもある?」


「あるよ」


「どんな?」


 カイさんは、袋の口を軽く折る。


「朝のパン屋とか」


「パン屋?」


「甘い匂いがする」


 ナナは、今食べているお菓子を見る。


「これと、似てる?」


「少し」


 そう言って、続けた。


「もっと、あったかい」


 おばあちゃんが、後ろからふふっと笑う。


「昔はね、

 朝になると匂いがしたのよ」


 ナナは、すぐに振り返る。


「どんな匂い?」


 おばあちゃんは、少し考えてから言った。


「甘くて、

 やさしい匂い」


 それは、前にも聞いた答えだった。


 ナナは、何も言わずにうなずく。


 カイさんの話は、

 もう少し先がある気がした。


「外は、毎日変わる?」


「変わる」


 即答だった。


「同じ日は?」


「ほとんどない」


 ナナは、指についた甘さを舐める。


 舌に残る味は、

 昨日の森にはなかったもの。


「……じゃあ」


 言いかけて、やめる。


 カイさんは、待った。


「なに?」


「外にいたら、

 知らないこと、増える?」


「増える」


 少し笑って、付け足す。


「勝手に」


 ルルが、机の下で体を起こす。

 外の方を見て、鼻を鳴らす。


 ナナは、ルルの背中を見る。


 外は、

 まだ行ったことのない場所。


 でも、

 知らないままじゃなくなってきている。


 それだけで、

 朝は、昨日より少し長く感じられた。


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