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スコシズツ

カイさんがうなずいたあと、ナナは少し考えた。


「約束って……」


 口にしかけて、やめる。

 内容までは、まだ分からない。


「……ねえ」


「うん」


「ナナ、本当に聞いていいの?」


 カイさんは、視線を少し外して、小さく息をつく。


「うん。少しだけ」


 ナナはおばあちゃんを見る。

 でも、湯飲みを持ったまま、何も知らない顔で微笑んでいる。


「外で会ったときの約束だよね?」


「そう」


「何をする約束なの?」


「……それは、今は内緒」


 ナナは肩をすくめ、少し笑う。


 でも、少し安心した。

 ちゃんと伝わった気がしたから。



 ナナは湯飲みを手に、火の光を見つめる。


「……外のこと、分からないことばっかり」


「そうだね。でも、少しずつでいい」


 カイさんが答える。


 ナナは、うなずいた。

 約束の中身は、まだ秘密。

 でも、少しだけ先に進めた気がした。



囲炉裏の火が、少しはぜた。


「少しずつ、って」


 ナナは火から目を離さずに言う。


「今日は、どこまで?」


 カイさんは、少し驚いた顔をした。

 でも、すぐに否定はしない。


「……今日は、顔を見に来ただけ」


「それだけ?」


「それだけ」


 ナナは、少し考える。


「約束なのに?」


「約束だから、だよ」


 ナナは首を傾げた。

 意味は、まだ分からない。


 でも、嘘じゃないことは分かる。


 おばあちゃんが、ゆっくりと口を開く。


「ナナ」


「なあに、おばあちゃん」


「その方は、

 もう少し、こちらにいらっしゃるの?」


 ナナは、カイさんを見る。


「今日は、帰る?」


 カイさんは、少しだけ迷ってから答える。


「……日が落ちるまで」


「そっか」


 ナナは、おばあちゃんに向き直る。


「日が落ちるまで、いるって」


「まあ」


 おばあちゃんは、うれしそうに笑った。


「それなら、お茶を足しましょうね」


 立ち上がるおばあちゃんの背中を見ながら、

 ナナは思う。


 約束は、

 来ることじゃなくて、

 帰ることに近い。


 でも、その先は、

 まだ考えない。

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