表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

カイ

――カイ


 敷居をまたいだ。

 それだけで、少し息を詰めた。


 初めて入る家だ。

 それなのに、ここに来ること自体は、

 ずっと前から決まっていたみたいな気がした。


 囲炉裏のそばに、エナさんがいる。


 それだけで、胸の奥が緩む。


「お久しぶりです」


 声が震えなかったことに、ほっとした。


 エナさんは、少し首を傾げた。

 その仕草は、覚えている通りだった。


「……そうですか」


 返事はやわらかい。

 けれど、どこか遠い。


 ――あれ?


 思ったより、距離がある。


 視線が、すぐにナナへ向かう。

 それも、自然すぎるほどに。


 カイは言葉を探したが、

 何を続ければいいのか分からなかった。


 約束の話をすればいい。

 それは分かっている。


 でも、その前に、

 もう少しだけ、こっちを見てほしかった。


 犬が伏せる音がする。

 湯を注ぐ、かすかな音。


 家の中は静かだった。


 静かすぎる。


 ――なんでだ。


 外で会ったとき、

 エナさんは、もっとちゃんと、

 話を聞いてくれていた。


 忘れるはずがない。

 そんな約束じゃない。


 それなのに、

 今は、名前を呼ばれることもない。


 カイは、膝の上で指を組む。


 自分が、何か間違えたのか。

 約束の時期を、勘違いしていたのか。


 それとも――


 考えがそこで止まった。


 理由を探すのは、怖かった。


 エナさんは、ここにいる。

 ちゃんと、生きている。


 だったら、

 まだ、話はできるはずだ。


 カイは、そう思うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ