表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/25

マタアシタ

甘い匂いが、少しずつ薄れていく。


 包み紙が、机の上で音を立てた。


 カイさんは、立ち上がる。


「じゃあ、そろそろ」


 ナナは、思ったより早く言われた気がした。


「もう?」


「日が高くなる前に戻らないと」


 ナナは、うなずく。


 理由は、分からない。

 でも、そういうものだと思った。


 ルルが、扉の前に行く。


 先に立って、待っている。


 カイさんは、少しだけ困った顔をした。


「賢いな」


 ナナは、ルルの背中を見る。


「また、来る?」


 声は、小さかった。


 カイさんは、すぐに答えた。


「来るよ」


「いつ?」


「明日」


 迷いはなかった。


 ナナは、ほっと息を吐く。


「……ほんとに?」


「約束だから」


 同じ言葉。

 でも、昨日より、少し重い。


 カイさんは、扉の外に出る。


 振り返って、言った。


「外の話、

 また持ってくる」


 ナナは、うなずいた。


 扉が閉まる。


 足音が、森の中に溶けていく。


 しばらくして、

 何も聞こえなくなった。


 おばあちゃんが言う。


「にぎやかな人ね」


「うん」


 それ以上、話さなかった。


 ナナは、机の上の包み紙をたたむ。


 甘さは、もう指に残っていない。


 でも、匂いだけが、

 少し遅れて消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ