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転生したら43歳独身でした

 最後に覚えているのは、我が子の産声と「立派な男の子ですよ!」という声。

 ああよかった。

 これでやっとあの人に跡継ぎを作ることができた。


 そのまま私の意識は闇へ落ちていき、二度と浮上しなかった。



 と、いうようなことを、すさまじい頭痛と共に思い出したのは真夜中のことだ。

 なんっか頭が痛くて目が覚めて、ストレッチをしたりお白湯を飲んだりしてもどんどんひどくなり、やけくそでスマホを開き

「やばwなんかなろう小説だったら転生しちゃいそうな頭痛www」

 とふざけたポストをしたら目への刺激で吐き気までし始め、本格的にもうダメだ! と薬を取りに行こうとしてあまりの頭痛に転倒。床でごちんとおでこをぶつけた結果、マジで、別の記憶がよみがえってきたのだった。

 愛憎渦巻く宮殿での暮らし、王の寵愛をめぐっての争い、貴族間での権威をかけた政戦。


 ここは日本だから知識でチートは無理だとしても、のんびり過ごしたりイケメンとハーレム!? と思うなかれ。


 今のわたし、既に43歳なんですけど。


 なんかの物語の主人公するにはしょっぱい年齢すぎる。

 前世で私が死んだのは、来月20歳の誕生日を迎えるというタイミングだった。

 43歳って。なんなら前世ならそろそろ平均寿命だ。

 ぶるぶる震えながら鏡を持つ。

 見慣れているのに新鮮、という不思議な感覚に陥りつつ自分の顔をじっと観察する。


 シミやシワはある……けど妊娠悪阻で全然食べられなくてカッサカサだったから前世も大概だったな……。なんなら今の方がいい化粧品使ってることもあって、ぷりぷりしている。

 髪も真っ黒で、定期的に白髪染めとサロントリートメントのお陰でつやつやだ。

 出産していない身体は健啖家故、今世ではすこし太りぎみだが前世の貴族はこれくらいの豊満さが美しいとされている肉付きのよさ。


 待って。


 結構いけてるのでは????

 肩凝りと首凝りがひどいのには閉口するが、明日の仕事終わりにアロママッサージを予約しているのでケアできるだろう。


 ぐるっと部屋を見渡す。6畳の部屋が2部屋ある2LDKはちょっと散らかっているが、好きなものがコンパクトにまとめられていて過ごしやすい。

 趣味で集めているジュエリーは、そりゃあ当時の私からしてみれば小ぶりな物が多いけど、軽くてカジュアルにも使えるものだ。

 体調が悪くても容赦なく重たいペンダントをつけられていたことを思えば、好きな物を好きなタイミングでつけられるのは素直に嬉しい。


 見るもの全て、わたしが好きでわたしが選んだものだ。


 その日は、ドキドキしてしまって、なかなか寝付けなかった。

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