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友人がコンクール用に描いた絵が明らかにテーマの『サバイバル』にそぐわない件

「……何だこれ?」


 眼前にある友人の描いた絵を前に、名状しがたいという表情になった俺が問うと、友人は妙に楽しそうな様子で答える。


「『サバイバル』の絵だな!」


「これの、どこが……?」


 下校時刻も過ぎた美術部の部室に他に人はなく、目の前には友人が『サバイバル』をテーマとしたコンクールへの応募用に描いたという絵があった。


 それなりの大きさのキャンバスの上には、木目の分かるテーブルの上に置かれた一枚の皿が描かれている。


 そして、その皿の上には、やけに緻密に描かれた堂々たる姿の魚が、こちらを向いて仁王立ちしているのである。


 いや、魚に『仁王立ち』も何もないのはわかっているのだが、どう見ても『そう』としか言いようのない姿なのだ。


「見ての通り、さば威張いばっている。つまり『サバ、イバル』ってわけだ!」


「いや、無理があるだろ」


 呆れてそう言葉を返すと、ハッとした顔をした友人が真剣な顔で悩み始める。


「やっぱり、マサバよりもゴマサバの方がよかったか」


「違う。そうじゃない」


「えー。マサバとゴマサバ、どっちが伝わりやすいか悩んだんだけどなー。ほら、この色合いとかさ」


 指さして見せたそこに目を向ければ、濡れた表面が光を反射しているかのように描かれており、それは本物と見紛うくらいに、質感さえ感じられるようなものだった。


「まあ、リアルなのは認める」


 皿の上で仁王立ちしているのは、いまだに意味が分からないが。


「いやあ、銀色の絵の具使うのは邪道じゃん? こう、うまいこと光を反射する感じとか、濡れている感じとか、表現するの大変だったんだよな」


 確かに、銀色の絵の具を使ったなら、もっとギラギラした印象になって、こんな濡れたような質感には見えなかったかもしれない。


 とはいえ、である。


「『サバイバル』がテーマだって言うんなら、もうちょっとこう『生存競争を勝ち抜いてきた魚がついに皿の上にいる姿を描くことでサバイバルの厳しさを表現している』とか、何かうまい理由付け考えた方がいいんじゃないか……?」


「え、法の抜け穴探すの得意な人?」


「人聞きが悪い!」


 思わず言い返したが、友人はケラケラと笑っている。


 この様子だと、このままこの絵をコンクールに出しそうだ。そう思いながら、俺は、絵の中の魚を眺めた。




 * * *




 ちなみに、後日、聞いたところによると、あの絵は入選しなかったらしい。妥当な判断で何よりだ。




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