023 タバコとは毒です
どうも、スクールカースト? というものが関係しているようだ。それにしたって、面白いものは面白い。ルーシはニタニタ笑いながら、メリットがうろたえる姿を眺める。
「あ、はい。ルーシさんに変わります……はい、ルーシとは友だちでしゅ、はい……」
もはや爆笑を抑えきれていないルーシだが、電話を渡された瞬間には、おしとやかな幼女になっているのだから不思議だ。
「変わりました。キャメルお姉ちゃん」
『ルーシちゃん。貴方、自分の評定金額は確認したの?』
「評定金額? なんのことですか?」
『知らないことはないでしょ。アンゲルスの市民全員につけられてる、いわば値札よ。一応確認しておくけど、ルーシちゃんの評定金額は10億4000万メニーってことで良いのよね?』
「お姉ちゃん、それは政府か自治体に確認したほうが早いんじゃないんですか? 私からすれば、そんなこと寝耳に水ですよ」
そもそも、評定金額とはなんぞや。また、10億4000万メニーというふざけた値段は、どこからつけられたのやら。
アンゲルスで暮らし始めてから数日、メニーの価値は1メニー=1ドルなのは分かるが、だとしたら余計に馬鹿げている。なにかしらの国家予算と匹敵しそうな値段だからだ。
『そうだけど……、私が言いたいのはそこじゃないのよ』
「なんですか?」
『私の派閥に入らないか、ってことよ』
「あぁ。そういうこと」ルーシは2本目のタバコをくわえる。「でしたら、今のところはお断りします。なにせ、入学してから1日しか経っていないので、自分の目で色々確かめたいんですよ」
『そ、そう……。でも、入りたかったらいつでも言ってね。この学園の闇は、貴方ほどの実力者でも覆せないかもしれないから』
「えぇ。よろしくお願いします」
ルーシは電話を切り、タバコに火をつける。
「なぁ、メリット。派閥ってなに?」
「そんなことも知らないの? エイジレスで16歳なんじゃないの?」
「エイジレスだろうと、入ったばかりのところのルールなんて知らないよ。ほら、一本やるから」
「どうも。んで、かいつまんで説明すると、生徒同士の共同体みたいなモンね。互いに互いを助け合うための組織。ただ、その存在意義は派閥の長によって変わる」
「ふーん。なら、キャメルお姉ちゃんは正しいことしているんだろうな」
「そうね。キャメルは、学園にまん延する暴力をなんとかしたいと思ってるらしい。他で有力なのは、シエスタってランクBが立ち上げた派閥とかね。こっちは誰でも受け入れるし、誰かがいじめられたりしたら相互で助け合う関係。ま、アンタには関係ないと思うけど」
メリットはルーシからもらったタバコに火をつけ、即座に咳き込んだ。
「ゲホォッ!? 毒入ってるの、これ!?」
「そりゃタバコは毒だろ」ルーシは呆れ気味に呟く。
「そ、そうじゃない。おえぇええ……」
「だいたい、オマエ何ミリ吸っているの?」
「ゲホッ……。タール1ミリのメンソールだけど」
「喉やられたおっさん以外で、タール1ミリ吸うヤツなんているんだな」
「だいたい私は喘息で……おえぇええ」
「喘息持ちがタバコなんて吸うなよ。粋がりってヤツか?」
「あ、アンタに言われたくない……はーあ。少し楽になってきた」
「12ミリのレギュラーで吐きそうになる若い喫煙者なんて、なかなか見られんぜ」
ルーシは皮肉まじりにメリットを笑う。
「さて、サッカーでもしようぜ。運動不足だと良いことないからよ」
「良いけど……」
「なんだ?」
「アンタ、魔力の探知できないの?」
「魔力の探知? 格好良いねェ」
「今、結構な量の魔力がこっちに向かってきてる。悪意や敵意剥き出しで」
「面倒臭せェなぁ。これも派閥ってヤツが関係しているの?」
「知らないけど、多分そう」
「しゃーない。サッカーボールみてェに蹴り飛ばしてやるか」
ルーシは首をゴキゴキと鳴らす。




